第21話 これからはどこへでも
エイさんのもう一つの記憶では、
"愛音は高校卒業後こちらの出してる求人のから採用された"
"あの日修学旅行で訪れた生徒さんと知っててすぐに採用した"
"大栄が飛ばされる前の2020年10月8日、愛音は夜まで受付にいた"
そして
"その日宿泊予定の大栄が販売機でブラックコーヒーを買いロビーの椅子でぐったり疲れた表情をしてた"
これがエイさんのもう一つの記憶らしい。
そしてエイさんは続けた。
「疲れた顔をしたお前さんの目を見て分かった、あの時の修学旅行生だ、とな。俺、人の顔覚えるのは得意なんだよ。
"学生時代に販売機のそばで楽しそうに話してた2人が、10余年ぶりにこうしてまた同じ場所にいるのに、2人とも互いに気付かない、、こんな切ない光景があって良いものか、、"
とてもむしゃくしゃしてなぁ、、
でも仕方ない、今のご時世マスクで顔半分隠れる、ソーシャルディスタンスで一定の距離を保つ、そんな距離感で修学旅行以来の2人が気づくはずもない"そう思うと悲しくなったよ俺は亅
エイさんの言葉聞き、大栄と愛音は顔を見合わせた。
続けてエイさんは愛音に、
「愛音、あそこで予約表見て名前で気づけてたら、また何か変わった世界になっていたのかもなぁ亅と呟いた。
愛音が"何のことやら"と不思議そうにしてると、
「だが無理もない、大栄が飛ばされる前の2020年、愛音の中にその世界は存在しない、存在しないと言う事は記憶にもない。なんせ大栄に未来を変えられ、大栄との出会いでこのホテルに勤める事になってるからなぁ。俺の憶測だが、あの時代、2010年で未来を変えられた者、愛音とオトさんの中に、大栄が飛ばされる前の記憶と世界は存在しない、俺はこのホテルのオーナーでもあり、特にお前に未来を変えられたわけでもない。だから俺にも2つの記憶があるのかもなぁ。亅
「そして元いた世界、大栄、お前が飛ばされる前の世界でな、お前達2人の事を呟きながら屋上を掃除してたんだよ。
"あの2人どうか気付いてまた仲良くしてほしいなぁ、お嬢様よ、そう思わないかい?"とな、
多分それをどこかで聞いてた"とあお嬢様"が、大栄に試練として、大好きなイタズラで2010年に飛ばせたんじゃないのか?まぁそこはお嬢様しか分からないがな。亅
エイさんは窓の外を見ながらそう語っていた。
「いや、、とあ様の試練、、厳しくね、、?
でも、、本気で守りたい人って、自分が極限状態に置かれないとどう行動するか自分でも予想できないし、、俺、自分があそこまで本気になったの初めてだったし、周りの人達の大切さが身に沁みて分かった2年間だった。亅
そう話す大栄に、
「大栄お前さんよ、今の職場、仕事は好きか?亅
そう問いかけてくるエイさんに、
「好きだよ、みんないい人だし、俺今の仕事と、商店と、おじさんのとこで清掃した事しかないし、俺の職歴ってそんなもんよ。亅
そう笑う大栄に、
「来年2021年1月から沖縄にも小さな民宿を営もうと思う、お前さんがよければ、沖縄の民宿の方で働いてくれんか?亅
大栄の目を見て真剣に話すエイさん。
「いや待って!俺接客業なんてやった事ないし、何しろホテルのノウハウ皆無だし、、亅
驚きを隠せない大栄の言葉を遮るように、
「接客業のプロでお前さんの愛しい女が、1人おるだろ亅
と言い愛音の方を見るエイさん。
大栄も愛音に目をやると愛音は、
"任せろ"と言わんばかりの顔で大栄を見ていた。
「いやでもこっちのホテルの事もあるし、愛音を沖縄連れてくなんて、、、亅
と言い切る前に次は愛音に言葉を遮られる。
「私、、8年も待ったんだよ、これからはどこへでも着いて行かせてよ、もう離れたくないよ、亅
と微笑んで言ってくれた。
あれから2日経ち仕事の現地調査も終わり大栄沖縄への帰省日。
伊丹空港に向かう大栄と、見送りのエイさん。
、、、愛音の姿はそこにはない、、。




