第12話 黒ゴマあんこの饅頭
屋上を後にして少し業務をこなすと仕事終わりの23時を回っていた。
後1時間、日付が変われば愛音の誕生日、
日付け変わると同時に誕生日プレゼントを渡したい大栄は、愛音の家へ急ぎ足で向かった。
そして日付がかわり10月8日、愛音の誕生日。
プレゼントを受け取り嬉しそうにしてる愛音に、
おじさんから聞いた出来事を全て話した。
10月8日早朝。
大栄はこの日、仕事は18時からだったので、
朝から18時までは愛音と過ごすと決めていた。
そして早くも17時半を回り、大栄は仕事に向かう。
21時半を回った頃、愛音が勤務先のホテルへやってきた。
「仕事終わるまで待ってるね!亅
そんな愛音を横に
「あの日の修学旅行、初めて出会ったのも愛音の誕生日だったよね亅
"えっ!覚えててくれたの?!"と驚きの表情を見せる愛音の頭を撫で仕事に戻る大栄。
"仕事終わりまで残り1時間半!愛音も待ってる!"
大栄はご機嫌で口笛を吹きながら仕事をしてると、
「ロビーにいる子、たしか2年前に修学旅行で来てた子だがお前さんの彼女かい?亅
おじさんが聞いてきた。
「あ、、いや、彼女と言うか、、亅
大栄が言葉を詰まらせてると、
「あの時沖縄から来てる生徒さん方もいてなぁ、あの子が沖縄の生徒さんと仲良く話してたのを見て、年甲斐もなく俺も昔を思い出して胸がドキドキしたんだ亅
笑いながら話すおじさんに、
「そうなんですね、でも、よく2年前の事なんて覚えてますね亅
そう問いかけると、
「40年ほど前、俺がお前さんくらいの歳の頃、俺の人生で1番と言っても過言では無い程の大恋愛をしたんだ、2年ほどお付き合いをさせてもらっていたが、相手さんとは遠距離と言う事もあり、しかもその時代まだ手紙でしかやり取りできなくてなぁ、、。自然と終わったよ。その女性の顔がお前さんの彼女さんと似てて彼女さんの顔を覚えてたんだ亅
続けておじさんは
「そして結婚したと風の噂で聞き、向こうが幸せならそれで良いと思った。ただ、今も生きてて幸せでいてほしい、それだけが願いだ、、亅
そう呟くおじさんの表情には、違和感があった。
大栄はその違和感がどうしても気になり、
「何か、気がかりな事があるんですか?亅
そう問いかけるとおじさんは少し黙った後、
「その女性住んでるのが東北の方でな、、
お前さんがここに勤める2ヶ月前の8月、
ボランティアで東北を訪れたんだ。
俺みたいな老ぼれにもできる手伝いはあると思うのと、その女性の家も知っていたからどうしても気になってな。だが家は跡形も無く、昔東北を訪れた際に女性と過ごした近所の公園のベンチは原型もとどめてなかったんだよ、、。その女性、今も元気に過ごしてるといいんだが、、亅
それを聞いた大栄が下を俯いてると、
「その女性、昔から商店を営んでおり、そこの手作りまんじゅうが絶品でなぁ、、亅
"東北、商店、そして公園のベンチ"
まさかと思い大栄は、
「、、、黒ごまあんこのまんじゅう、、、亅
そう呟くと
おじさんは目を見開き、
「お前さん!なぜ、、??亅
「無事だよ!!元気だよ!!亅
おじさんの肩を両手で掴みながら言った。
おじさんは状況が読めず大栄に、
「分からん分からん、ちゃんと説明しろ!亅
おじさんは怒った口調、だけど表情は嬉しそう。
それから大栄はおじさんの目を見て、
"2010年10月、大栄は東北に住んでた事"
"あの商店でお世話になってた事"
そして、
"その人は年の初めに神戸の方へ引っ越しをしてある事"
そう伝えると、
「、、、良かった、、。亅
壁にもたれかかり窓の外の夜空を見上げ、
一言だけ呟くおじさんだった。
小声で
震えた声
だけどその声はとても力強く芯のある声だった。




