第97話 純白のメサイア
「金備えのシーザリオか金色のシーザリオなんて似合うんじゃないか?」
「こ、金色…のシーザリオ!!」
金備えの自分の姿を想像しているのだろうか?シーザリオの口元が緩んでいる。
しかし…
「もう!!だらしない顔をして…シーザリオ、どいてください!!ハヤト様!!私に、私に似合う色は何色なのでしょう?」
メサイアがシーザリオの体を突き飛ばし、俺に迫って来た。
普段なら怒るはずのシーザリオだが…
「金色…金備え…金備え…金色のシーザリオ。うふふふっ!!」
ニヤケ顔でうわ言のように繰り返している。
もう少しで唇が触れ合うくらいに、メサイアの美しい顔が近づいて来る。美肌ポーションの影響か、メサイアの肌は透明感があり、真っ白に輝いて見えた。
俺は指で優しく頬を撫でる。
「綺麗な肌だね。吸い込まれそうな白い肌だ」
「そんな…美肌ポーションのおかげです」
「関係ないよ。メサイアを一目見た時から思っていたよ」
「ありがとう…ございます」
メサイアは白い肌を桜色に染めて恥じらう。
「白、いや…純白と言ったほうが良いだろう。メサイア、君に似合う色は純白だよ」
「じゅ、純白!!」
「そう、純白。公爵家のお嬢様として、汚れなく清らかで、志を高く持って生きてきたメサイアにピッタリだと思う」
「……………」
メサイアは俺の言葉を聞き、その桜色に染まった美しい顔をさらに紅潮させてうつ向いた。
「純白のメサイア。どう?気に入ってくれた?」
「………はい。ありがとう…ございます」
メサイアは顔を紅潮させたまま、目頭を押さえ言った。
「金備え…金色のシーザリオに純白のメサイア。なんかカッコいい!!」
二人を見つめアレグリアが呟くと、それを聞いていたファレノプシスとウオッカも頷く。
俺はすかさず…
「赤備えや桃備え、それに青備えも同じくらいカッコ良く、素敵だと思うよ!!」
笑顔を作り三人に向けて言う。
『あ、ありがとう!!』
三人が嬉しそうな顔をして言う。
俺は三人の笑顔を見て『ホッ』とする。
当初、ずっと『ボッチ』で生きてきた俺にはあまり理解できなかった。
しかし最近になって…
(女性は基本、褒めなくてはいけない!!)
女性に囲まれて生活をしているうちに気が付いたのだった。
そして…
(ポイントは大袈裟にとか、仰々しくとかでは無く、さり気なく褒めるのがコツなのだ)
強く思うのであった。
そして思い出した事がある。
前世で女性が多い職場で働いていた時の事。
女性同士、みんな和気あいあいと仲が良い職場だったのだが、新しく赴任してきた男性上司が特定のお気に入りを作り、贔屓をしだした事があったのだ。
俺は仕事だけで余りかかわりを持たなかったのだが、遠くから見ていると、ものの見事にその職場の人間関係が崩壊していくのが分かった。
俺はその時…
(女性の嫉妬は何て恐ろしいものなんだ!!もし俺が上司の立場になった時は、全員を平等に扱い贔屓をしない!!)
そう誓ったのだった。
まあ、前世では全く役に立つ場面が無かったのだが、いま改めて思う。『女性の扱いは平等に!!』と…。
そして思う…『嫉妬ほど恐ろしいものはない!!』という事を…。
俺がそんな事を考えていると…
「私とメサイアも、その…何ていう人でしたか?ハンセンでしたっけ?鍛冶屋に行って、金備えと白備えの防具類を作ってもらいに行きましょう」
シーザリオが三人の色付き防具を羨ましそうに見つめながら言う。
メサイアが不満げに…
「シーザリオ!!白備えでは無く、純白備えです!!純白!!」
少しムキになって訂正をする。
当のシーザリオは…
「はいはい。純白、純白」
面倒くさそうに適当に返答をする。
「全く、もう…。私は心清らかですから怒りはしませんが、気を付けてくださいね!!」
メサイアはシーザリオに対して、再度念押しをする。
シーザリオは苦々しい顔をして…
「何が心清らかですか…、心の中は真っ黒、純黒のメサイアという名がお似合いよ」
メサイアに聞こえない様、小さな声で毒を吐いたのだった。
俺は苦笑いを浮かべる。
「シーザリオ、ブロディさんな。ブロディ!!どこからハンセンなんて名前が出てくるんだ?」
「う~ん…何と無くですかね。ブロディでしたか。では明日にでも、そのブロディさんの鍛冶工房まで出向き、防具類を注文しに行きましょう!!」
シーザリオは名前の事は適当に受け流しスルーをする。頭の中には、すでに金色の防具の事しかないようだった。
「では、ファイブカラーレディース。全員でブロディさんの工房まで行きましょうか」
メサイアが三人に向かって言う。
「いやいやいや!!まだメンバーに加入していませんから!!勝手に改名をしないでくださいよ!!」
リーダーのファレノプシスが慌ててメサイアに苦言を呈した。
『……………』
一瞬、不満げな表情をするシーザリオとメサイアだが、次の瞬間、一転して笑顔を浮かべて無言で三人を見つめる。
はっきり言おう。この笑顔が恐いのだ。
三人は無言のプレッシャーに押しつぶされそうになる。顔面が蒼白になっていた。
TCLの三人が『何とかして!!』という顔で俺を見つめる。さすがに今の立場では、二人に言いたい事も言えないらしい。
俺は仕方なく…
「最初にリスグラシューが言ったように、二人の加入は将来的に…という事だ。当面はTCL、三人で冒険者パーティーとして活動をする」
そう断言する。
続けて…
「じゃあ明日、みんなでブロディさんの工房まで行こう」
俺は『ヤレヤレ』と思いながら提案する。
『は~い、分かりました~!!』
五人は嬉しそうに返事をした。
(はあぁぁぁ~…疲れた!!)
俺は深いため息を付いて『グッタリ』と椅子に座り直したのであった。
【アレグリア視点】
(金色のシーザリオに純白のメサイア、なんかカッコいい!!この二人がパーティーに加入すれば、戦力が大幅に上がる事は間違いないわ!!いきなりアーキュリー王国、最強パーティーになってしまうかも!!うふふふっ、これで私のランクも自然に上がって…)
私はハヤトと話をしている二人を見つめながら思う。
しかし…『ふっ』と考える。
(確かに大幅な戦闘力アップは間違いがない。だけど…私の存在感が全く無くなってしまうのでは…)
私の顔から血の気が引く。
背中に冷や汗が流れる。
(ヤ、ヤバイ!!今の実力のままではシーザリオ様とメサイア様、それにファレノプシスさんにおんぶにだっこ。私がいてもいなくてもいいメンバーになってしまうわ!!ど、ど、ど、どうしよう!?)
勝手に盛り上がっている二人を見つめながら、私は大いに焦る。
そして…
(ぎゃあああああ~~~、ファ、ファ、ファイブカラーレディース!?待って、待って、待って。ちょっと待って!!早すぎるわよ!!)
メサイア様のファイブカラーレディース発言を聞き、心の中で悲鳴を上げる。
「いやいやいや!!まだメンバーに加入してないですから!!勝手に改名をしないでくださいよ!!」
ファレノプシスさんが慌てて否定をする。
(さすがリーダー、頼りになる!!)
私は少し『ほっ』としたのだが、シーザリオ様とメサイア様が笑顔を浮かべ、無言で私たちを見つめる。
恐ろしいほどのプレッシャーに戦慄が走る。
顔から血の気が引き、背中に一筋の冷汗が流れた。
(何とかして!!)
顔を引きつらせながらハヤトに圧をかける。
早期のパーティーへの加入はハヤトが否定をした。二人は少し不満そうだったけど、ハヤトに逆らう意思などない。渋々ながらも納得してくれた。
(…良かった。これで時間の猶予ができた。二人が加入する前に、出来得る限りの努力をして、実力を上げていかないと…)
私はピンチをチャンスに変えるべく、今まで以上の稽古に励もうと誓うのでした。




