第93話 三色美女…揃う
「で、では、そちらの女性とパーティーの登録でよろしいですね」
「あぁ…手短に頼むよ」
ファレノプシスが登録を済まそうとするが、ギルドの職員は終始ビビり気味の様子。
アレグリアとファレノプシスのギルドカードにパーティー名が書き加えられ、ウオッカに新しいギルドカードが発行された。
ウオッカが真新しいギルドカードを『ニッコニコ』で見つめる姿が初々しい。
その姿を見て俺たち三人は、顔を見合して微笑む。
ウオッカが説明が書いてある冊子を受け取ると、俺たちは足早に冒険者ギルドを後にした。
数日後…
「ほれ、どうじゃ!!」
ブロディさんの工房で、ファレノプシスとウオッカが頼んでいた防具を受け取る。
「装着して見せてくれ」
俺の言葉を聞いて、二人は淡い桃色と深い青色の防具を身に着けていく。
二人は少し照れながら『どう?少し派手じゃないかな?』と、心配そうに聞いてきた。
「大丈夫。二人とも、とても似合ってるよ。強そうに見えるし、それに…」
『それに?』
「とても綺麗だよ。惚れ直した!!」
俺は二人の目を見つめながら、自然とこんな言葉を言う。
思わず『よく恥ずかしげも無く、こんな言葉を言えるようになったものだな』と、自分自身に感心をした。
俺の言葉を聞いたファレノプシスとウオッカも、お互いに顔を見合わせ『ニッコリ』と微笑んだ。
アレグリアがウオッカの横に立つ。
赤、桃、青の美女冒険者パーティー、TCLが完成した瞬間だった。
「おおおぉぉ~!!強そうだな!!」
「うむっ、確かにのう…見た目だけは強そうじゃわい!!」
俺とブロディさんの言葉を聞いてアレグリアが満足そうに『「でしょう!!見た目だけじゃなく、ここから三人でランクを駆け上がっていくから!!』と、宣言する。
「私は冒険者登録をして間もないから、二人に迷惑をかけないように…」
ウオッカが言うと…
「大丈夫だよウオッカさん。もう、そこらへんの冒険者よりは十分に強いよ」
ファレノプシスが太鼓判を押す。
すると…
「がはははっ!!わしへの借金返済のためにガンガン働くんじゃぞ!!」
ブロディさんが豪快に言い放つ。
これには三人とも苦笑いを浮かべたが、覚悟を決め『頑張ります!!』と答え、気合の入った表情になったのだった。
ここで俺は懐から瓶を取り出す。
「遅くなってごめん。パーティーの結成祝いだよ。何にしようか考えていたんだけど…冒険者といったら危険がつきものなので、今朝作ってきたんだ。受け取ってほしい」
そう言いながら、三人にそれぞれ渡していく。
「がはははっ。やるじゃねぇか、ハヤト!!冒険者にとってポーションは命綱だ。何の役にも立たない飾り物より、全然役に立つわい!!」
「ハヤト…ありがとう!!ふふふっ、ハヤトの事だから、中級、いえ…もしかして高級ポーションとか?」
「んっ!?ポーションじゃないよ?」
俺は首を傾げ、ブロディさんとアレグリアに向かって言う。
「なんじゃい!?ただの水って事はないじゃろう?」
ブロディさんがアレグリアの持っている瓶を見つめながら言った。
「エリクサーだよ」
俺の言葉を聞き、ブロディさんが固まった。
『本当に!?本当にエリクサーなの?』
アレグリアとウオッカが手に持っている瓶を落とさない様、大事そうに握り直して言う。
「私…二本目なんだけど…」
ファレノプシスはそう言って戸惑っている。
「ハヤト、ありがとう。でも…エリクサーはちょっと…自分で言うのも何なんだけれど…過保護すぎない?」
アレグリアが苦笑いを浮かべながら言う。
「心配なんだ…三人がこれから依頼を受け、護衛や冒険に出かけるだろ?三人の事が心配で心配でたまらないんだよ!!だから、せめてエリクサーを持っていてほしいんだ!!」
俺はそう言った後、思わず三人を抱きしめた。
苦笑する三人だったが『ちょっと待て!!何でそう簡単に受け入れるんじゃ!?エリクサーといったら伝説の秘薬じゃぞ!!いくらハヤトとゆうても…簡単には信じられんぞい!!』と、ブロディさんが慌てて言う。
「私はもう一度、飲みましたから…。数年間、意識不明で眠っていたのですが、ハヤト様が作ったエリクサーを飲み、意識が回復しました。ついでと言っては何ですが、失っていた左足も元に戻りました。間違いなくエリクサーだと断言できます!!」
左足を擦りながら、ファレノプシスが言った。
唖然とするブロディさんだったが、しばらくすると『が、がはははっ!!こりゃあ…おもしろい!!』 と、大笑いをする。
続けて…
「この歳になって、こんなおもしろい奴に出会えるなんて思いもしなかったぞい!!ハヤト、これからもわしを、このジジイを驚かしてくれ!!」
上機嫌で俺の背中を叩いた。
「痛い…痛いですよ!!まあ、そういう事で今日はありがとうございました」
俺たち四人はそう言ってブロディさんに頭を下げる。
「あと、これが大まかな改修の図面です。本当に大まかなものですから、ブロディさんが修正を加えても構いません」
ジュリアから預かってきた図面を渡す。
図面を見つめるブロディさんに『あと十日後ぐらいに出発をすると思うんですが、出発の二、三日前にまた連絡に来ます』と、伝えて簡単な打ち合わせをする。
「工期はどのくらいの期間を予定してるんじゃ」
「王都から帰って来た時には、ある程度めどが付いていると助かります。…ですから、3か月くらいでしょうかね」
「まあ、そんだけあれば何とかなるじゃろう。任せておけ!!」
「それと…改修費の見積もりなんですが…」
「わからん!!わしの気分次第じゃ!!」
「気分次第!?」
「そうじゃ!!ハヤト、お前がミスリル鉱石を仕入れてこれば安くなるぞい!!」
「本当に!?」
「あぁ、本当じゃ!!格安にしてやってもいいぞ!!」
ここで俺とブロディさんの会話を聞いていたアレグリアが『絶対仕入れてきますから!!格安でお願いします!!』と、言い出した。
やはり宿の主の娘という自覚があるのだろう。ブロディさんに対する顔は真剣な表情をしていた。
アレグリアの言葉を聞いたブロディさんは『ニカッ』と笑い『おうっ!!期待しておるぞ!!宿の改修はわしに任せて、王都へ行ってこい!!』と、アレグリアの背中を『バシッ!!』と叩いた。
「痛たたたぁっ!!ありがとうございます!!」
「ありがとう!!」
俺とアレグリアがお礼を言うが、当のブロディさんはすでに『ブツブツ』言いながら、図面に修正を書き加えていて見向きもしない。
俺たちは顔を見合わせ苦笑いをして、工房を後にしたのだった。
【アレグリア視点】
ファレノプシスさんとウオッカさんが新しい防具を付けていく。淡いピンク色と深い青色。
そして私が燃えるような赤色。
盾を構えたウオッカさんを真ん中にして、左右に槍を握り締めたファレノプシスさんと私が立つ。
私たちのパーティー、スリーカラーレディース(TCL)が完成した真の瞬間だった。
ハヤトとブロディさんも…
「おおおぉぉ~!!強そうだな!!」
「うむっ、確かにのう…見た目だけは強そうじゃわい!!」
なかなか上々の評価。
私たちはお互いに顔を見合わせ微笑み、そして気合を入れる。
私はこれから始まる三人での冒険に心を躍らせる。
言わなくても、聞かなくても分かる。三人が同じ気持ちだという事を…。
だが、冒険者は死と隣り合わせ…
(もしかして…命を落とす事になるかもしれない)
そう思うと、心が締め付けられる思いがする。
ハヤトからパーティー結成のプレゼントとして瓶を渡される。
(ポーション…ありがとう、ハヤト。私は絶対に死なないわ!!いつまでもハヤトのそばにいるからね)
私は瓶を見つめながら思う…が、しかし『エリクサーだよ』と、お気楽なハヤトの声。
そして…
「心配で心配でたまらないんだ!!」
そう言って、抱きしめられた。
私は抱きしめられながらも、ハヤトの過保護っぷりに、苦笑いを浮かべてしまうのでした。




