第81話 ブロディさんからの依頼
翌朝、俺とアレグリアとウオッカはファレノプシスと合流し、ブロディさんの工房に向かった。
「私も属性を付与された槍が欲しいんだけど、肝心の属性が分からないからねぇ~」
「火属性だよ」
「えっ!?」
俺とファレノプシスが顔を見合わせた。
「そ、そうだ!!ハヤト様に鑑定をしてもらえれば分かるんだった!!」
「ごめんね。一応、信頼できる人かどうか、もう鑑定済みなんだよ」
「あっ!?いえ…問題は無いんだけど…私、火属性なんだね」
「そうだよ。でも、今まで分からなかったの?アレグリアは氷属性の付与された槍を持った瞬間に、手に馴染んだと言っていたけど…」
「ハヤト様、属性が付与された武器なんて、滅多にお目にかかれないんだよ」
「へぇ~、そうなんだね」
そんな話をしているうちに、俺達はブロディさんの工房に到着した。
「こんにちは!!」
アレグリアが元気よく、大きな声を出し挨拶をする。
「うるさいんじゃ!!」
ブロディさんが不機嫌そうに工房の奥から出てきた。
「なんじゃい。もう金ができたのか?」
「まだに決まってます」
「がはははっ!!でも、聞いたぞ!!王家筆頭魔術師のシーザリオとやり合って、いい勝負だったらしいな」
「まあ、やり合ったのは本当ですけど…。実際には、だいぶ手加減をされていましたけどね」
「がはははっ、気にする事はねぇよ。お前は槍を握って、ほとんど時間が経ってねぇじゃねぇか。自信を持て!!」
ブロディさんは『バシンッ』と、アレグリアの背中を叩いた。
「痛っ!?今日はこのウオッカさんが使う盾と、ファレノプシスさんが使う火属性の付与した槍が無いかを見に来たんです」
アレグリアがウオッカさんの後ろに隠れながら言った。
ブロディさんがウオッカを見上げて、俺に質問をしてきた。
「ハヤト、鑑定済みなんじゃろ?」
「はい。できたら氷属性が付与された盾が欲しいですね」
「氷属性が付与された盾と、火属性が付与された槍?残念ながら無いな。アレグリアが使う氷魔法が付与された槍があったのも偶然だ。そもそも、ワシは属性付与などできんからな。鍛冶と属性付与は別の能力なんじゃよ」
「う~ん…残念だな」
「今は…この国には、属性付与ができる職人がいねぇんじゃないか?そもそもが珍しい能力だしな。そうじゃ!!ハヤト、お前が鑑定して探し出せばいいんじゃ!!」
「えっ!?なんか面倒くさいよ」
「まあ、捜そうとして探し出せるものじゃない。じゃが、一応、気に留めておいてくれ。あと、工房で使えそうな奴がいたら、何人でも連れてきて構わんぞ。今までも何人かを弟子として育てようとしたが、なかなかうまくいかん。じゃが、ハヤトが鑑定済みの者なら可能性はあるじゃろう」
「分かりました。近々、王都まで行く事になりそうなので、覚えておきますよ」
「王都へ?じゃあ、ミスリル鉱石があったら買ってきてくれ」
「ミスリル鉱石?」
「なんじゃ、ミスリルも知らんのかい。鉄よりも強く、美しい鉱石じゃ。アレグリアのその槍も表面にミスリルを加工すれば、もう一段上の強さと切れ味が生まれるんじゃ!!盾の表面に加工してみろ。その強度は恐ろしいほどに『カチカチ』になるぞ」
アレグリアが、自分の槍がさらに強化できると聞いて、目の色を変えた。
「分かりました。必ず買ってきます。買ってきたら、私の槍を強化してください!!」
アレグリアの言葉を聞いて、ブロディさんが『ニヤリッ』と笑って奥の部屋へと入っていき、大きな麻袋を持ってきた。
「ガシャン!!!」
袋をテーブルの上に置いた。重量感がある音がし、中には100万エン金貨が大量に入っていた。
「アレグリア、強化してやってもいいが、今の投資金額に+500万だぞ。合計でワシに支払う金額は7500万エンになるぞい。前のようにハヤトと折半しても、ワシへの支払いは5000万になるんじゃ。お前、分かって言ってるのか?」
「支払いが7500万エン!?ハヤトにも2500万エン払わないといけないから…へっ!?」
アレグリアは将来、自分の支払いが1億エンになるという現実に、頭が付いていかずフリーズしてしまった。
「まっ、Sランクに昇格できれば、払えない金額じゃねぇが…どうする?」
ブロディさんの問いかけにアレグリアは『1億エンはさすがに…一旦、様子見でお願いします』と、力無く答えたのだった。
一応『俺が出そうか?』と聞いてはみたが、アレグリアは『あとは自分の力で稼いで何とかするから!!』と言って、拳に力を入れていた。一気に気合が入ったみたいだった。
あと『メサイアに無期限無利子で借りるという手もあるかも…』と、提案をしてみた。
しかしアレグリアは『宿の改修費用も、メサイア様に無期限無利子の融資を受けるって聞いたし…さすがに無理よ。メサイア様は『いいよ!!』ってお気楽に言うかもしれないけど、人として、これ以上は頼めないわ』と、否定した。
「なんじゃい、宿を改修するのか?」
「はい。レストラン部分と宿の食堂を分けようと思ってます」
「よし。その仕事、ワシに任せろ!!お前達が王都へ行っている間に、ワシが改修をしてやるぞ」
「本当ですか!?」
「あぁ、建物の改修なんぞ、お手のもんじゃわい!!」
ブロディさんは分厚い胸を『ドンッ』と叩き『ニカッ』と笑ったのだった。
【アレグリア視点】
「こんにちは!!」
いつもの様に大きな声で挨拶をする。
当然の様に『うるさいんじゃ!!』と、不機嫌そうな顔をしたブロディさんが、工房の奥から顔を出す。
なぜだかパターン化されてしまいました…。
ブロディさんにも、私とシーザリオ様の戦いの話が伝わっていて、一定の評価はしてくれている様だったが、岩の様な手で背中を叩かれる。
(痛っ!!!!!この親父、何も考えず気安く叩いて…。あなたのパワーは半端ないんだから!!勘弁してください)
すかさずウオッカさんの後ろに隠れ『本当にデリカシーの欠片も無いわ!!』と、憤慨する。
ハヤトとブロディさんとのやり取りの途中、私達が王都へ行くという話題になる。そして、その話を聞いたブロディさんがハヤトにミスリル鉱石の購入の依頼をした。
(ミスリルかぁ…。話では聞いた事があるけど、超高級品なのよね。それに売買も制限されているという話だし、難しいんじゃないかしら…)
私がこんな事を思っていると『アレグリア、お前の槍の表面にミスリルを加工すると、もう一段上の強度になって、切れ味も半端なく上がるぞ!!』と、ブロディさんが言った。
私はその言葉を聞いて『分かりました。必ず買ってきます。買ってきたら、私の槍を強化してください!!』と、何も考えず、とっさに言ってしまった。
だが、ブロディさんの話では、ミスリルを使って槍の強化をすると借金がさらに倍の金額に…。
(借金が1億エン…1億エン!?)
私は思わず何も考えられなくなり、フリーズしてしまう。
(現実的に、今は様子見をするしかないですか…。これ以上、ハヤトやメサイア様に甘えたくはない。私にもプライドがあるのです!!ですが…ですが、残念ですが、私は貧乏なのですよ…。現実は厳しいですね)
自分の愛槍をミスリルを使って強化したいと思う気持ちは強いが、これ以上の借金は、精神的に耐えられない。私は普通の庶民なんです…。
(でも…いつかきっと、この愛槍をミスリルで…)
そう思い、私は右手で握りしめている愛槍を見つめて誓ったのでした。




