第73話 感動するウオッカと失神するリスグラシュー
「ジュリアさん、しばらくウオッカさんはベガにお世話になりますけど…」
「うふふふ、問題無いわ!!でも…」
ジュリアさんがウオッカさんに近づき、顔をまじまじと覗き込む。
少しビビるウオッカさん。
「あまり顔を見ないでください。私は日に焼けて肌が汚いですし、殴られた時の、あざや傷がたくさんあって、恥ずかしいです。皆さんみたいに綺麗では無いので…」
やはりウオッカさんも女性。自分の肌の状態が気になっていた様だ。そして美しい同性に囲まれ、その気持ちが一層強く感じられている様だった。
しかし、ジュリアさんは微笑み…
「これ、飲んでみて!!」
俺が作って渡しておいた、貴重なポーションをウオッカさんに渡す。
渡した時に狂喜乱舞し、アレグリアやリスグラシューに『絶対、あげないからね』と喜んでいたジュリアさんが、そのポーションを惜しげも無くウオッカさんに渡したのだった。
そんなジュリアさんを見て、俺も笑顔になり、ウオッカさんに言う。
「俺が作ったポーションなんだけど、飲むと肌が綺麗になるから、一度飲んでみるといいよ」
「えっ!?本当ですか?」
ウオッカさんがポーションの瓶を『ジッ』と見つめる。
「あっ!?それ…私が作った!?」
「そう!!ブエナが作ったポーションに、俺が効能を付けたんだよ」
「へぇ~、そうなんだ!!ウオッカさん、飲んでみてください!!」
ブエナも、元は自分が作ったポーションが気になるらしい。興味津々という顔をして、ウオッカさんに言った。
ウオッカさんがポーションを一気に飲み干した。
アパパネがいつの間にか、鏡を持ってきていた。本当に気が利く娘である。『スッ』とウオッカさんの顔の前に鏡を置いた。
「あっ!?あぁぁぁ…嘘っ!?信じられない!!」
ウオッカさんの顔からあざや傷が消え、日焼けで痛んでいた肌の状態も劇的に改善していた。
男の俺の目から見ても一目でうるおいが戻り、キメが細かくなっているのが分かる程、改善されたのだ。ウオッカさんが驚くのも無理はなかった。
「おぉ~!!ウオッカさん、男前じゃない!!」
「お、男前!?」
「あはははっ、誉め言葉ですよ!!」
アレグリアの言葉に戸惑い、少し照れるウオッカさん。
さらに…
「うむっ、浅黒い肌に精悍な顔立ち。正に男前と呼ぶに相応しい。盾役としても、心強い」
「女性から好かれそうね!!」
王家筆頭魔術師と公爵家のお嬢様からも高評価を頂いた。
普通の人は絶対に関わることの無い、雲の上の人物からの高評価に、ウオッカさんはテンパっている…が、その姿がとても愛らしく感じられるのだった。
「ふふふっ、ウオッカさん。合格です!!初めは『どうかな?』と思っていましたが、なかなかの逸材ですね。ハヤト様に仕えるに相応しい女性です」
リスグラシューがヤバい顔をして言った。
「…また始まってしまった」
俺は『またか…』と、諦めモード。
しかし…
「あ、あなたが料理を作った人ですね。私はあなたに一生付いていきます!!」
そう言って、ウオッカさんはリスグラシューを抱きしめる。
「な、な、なに!?」
ウオッカさんに抱きしめられたリスグラシューは『ジタバタ』と暴れているが、俺からはウオッカさんの体に埋もれ、もはや腕しか見えなくなってしまった。
「私はあなたの料理を食べて感動しました!!この世の中に、こんな美味しい料理を作れる人がいるなんて…。リスグラシューさん、もう離しません!!」
「い、痛いっ!?し、死んじゃう!!」
リスグラシューの叫びもむなしく、さらに強く抱きしめるウオッカさん。
俺はここぞ!!とばかりに『あはははっ、リスグラシュー。良かったじゃないか!!ウオッカさんの事は任せるから!!』と、半笑いで言ったのだが…『ハ、ハヤト様、ハヤト様!!せ、背骨が…折れる』と、リスグラシューの声のトーンが明らかに変わり、苦しそう。
これはヤバい!!と、みんながウオッカさんを止めに入るが、なかなか二人を引き離せない。俺とアレグリア、それにシーザリオとメサイアとファレノプシスさんで何とか引き離す事に成功した…が、リスグラシューは完全に伸びてしまっていた。
「あっ!?」
ウオッカさんが舌を出し『やっちゃいました!!』という顔をする。ちょっと可愛い。
しかし、そんなリスグラシューを気にも留めずに『さあ、修練に行きましょう!!』と、ウオッカさんに向かって言った。なかなか酷い。
アレグリアはファレノプシスさんと稽古ができるという事で、体がうずいて仕方が無いという感じだ。
「ウオッカさん、安物だけど最初はこの盾を使ってちょうだい。私が剣を使っている時に買ったんだけど、今は使ってないからあげるわ」
「いいの?」
「あははは、稼げるようになったら、倍にして返してもらうから!!」
アレグリアはご機嫌な笑顔で言った。
ウオッカさんは盾を手にし『ジッ』と見つめている。
そして『ありがとう、アレグリアさん。私、頑張るから!!』と、気合を入れる。
「それじゃあ、行こうか!!ブエナは先に帰っていてくれ」
「うん!!わかった。でも、病み上がりなんだから、無理しちゃダメだからね」
「わかってる。ありがとな!!」
ファレノプシスさんがそう言って、ブエナの頭を撫でた。
そして三人は、伸びているリスグラシューの事など気にも留めず、修練に向かうのであった。
【ジュリア視点】
(本当に大きな女性ね…。それに殴られてできたと思われるアザや傷が、顔中にあるわ。おまけに日焼けのせいで、肌の状態も凄く悪いわ)
私はウオッカさんの顔を見て、同じ女性として心を痛める。
(アザや傷だけならポーションを飲めば治ると思うけど、あそこまでボロボロになった肌は、普通のポーションでは…治らないわ…普通の…では!?)
懐に手を忍ばせる。
そこには、ハヤト君からもらった美肌ポーションの瓶がある。
(い…いやいやいや、これはあげられない!!命の次に大切なポーションだもの!!絶対にあげられない!!)
私は瓶から手を離し、ポーションの存在を忘れようとする…が、ウオッカさんが悲しい顔をして『あまり見ないでください』という言葉を言った瞬間、無意識のうちにポーションを差し出していた。
(私はハヤト君に仕える身、そのハヤト君は使徒様なのです。私も自分の事ばかり考えていたらダメなのです)
私は一瞬でもポーションを渡す事をためらった事を恥じる。
そしてウオッカさんはポーションを飲み、当然の様に美肌に…。
(大きな体。当然、胸もお尻も大きくて魅力的。その上、美肌になった顔は浅黒くも、凛として整っている。むむむっ、これは非常に強力なライバルを誕生させてしまいましたか…)
私は喜んでいるウオッカさんを嬉しく思いつつも、新たなライバルの出現に、複雑な気持ちにもなってしまったのでした。




