第65話 美肌効果!!
「……………」
「どうなの?成功したの!?」
ジュリアさんが身を乗り出し聞いてくる。とても『失敗しました』と、言える雰囲気ではない。シーザリオとメサイアの視線も鋭くなった。
上級ポーション Lv.10 美肌(特大)
「はい。美肌効果が付与されたようです」
『び、美肌!?』
思わず立ち上がる三人。
「具体的に!!飲んだ時、どんな効果が表れるの!?」
ジュリアさんは俺の目の前まで来て聞いてくる。
「お母さん、怖い怖い。必死過ぎだよ!!」
アレグリアは呆れているが、娘の声などお構いなし。
「ハヤト君、それを飲めばお肌が綺麗になって、若返るのね!!」
俺の両肩を持ち、体を激しく揺さぶって聞いてきた。
「わ、わかりません。今、初めて作った物ですから…飲んでみますか?」
「当然です!!」
ジュリアさんは俺からポーションを受け取り、一気に飲み干した。
ポーションを飲み干したジュリアさんが、みんなの方を向く。
「ど、どうかしら…何か変わった?」
「…か、変わったわ。明らかに肌が若返った。…信じられない」
「アレグリア。具体的に言って!!アパパネちゃん、悪いけど鏡を持ってきて!!」
大急ぎで鏡を取りに行くアパパネ。完全にジュリアさんの圧に押されていた。
「具体的に…肌に透明感が出ているわ。うるおいが戻って、きめが細かくなった感じがする」
「と、透明感!!うるおい…きめが細かく…凄いじゃない!!」
「本当に凄いわ!!正直、お母さんの肌、とても疲れていたじゃない。凄く、くすんでいたもの。シミも目立つ様になって、透明感何てカケラも無かったのに…。ほうれい線もかなり目立ってきてたしね」
母、ジュリアさんには厳しいアレグリア。なかなかの暴言を放つ。
『……………』
再び、全員が無言になり、凍り付く。
しかし、丁度良いタイミングでアパパネが鏡を持ってきた。
《ナイス!!アパパネ!!》
俺達は胸をなでおろした。
ジュリアさんが鏡を見る。
「ウフッ、ウフフフッ。凄い、凄いわ!!プルプルじゃない!!」
自分のほっぺたを触り、肌の状態が良くなった事を実感している。とても嬉しそう。
そして…
「見て!!顔だけじゃない。指もとても綺麗になってる。あかぎれでボロボロだった指が…」
ジュリアさんが涙ぐみ、狂喜乱舞している。
これだけ喜んでもらえると、ポーションを作った甲斐もあるというものだ。ジュリアさんの喜んだ顔を見ていると、俺まで嬉しくなってきた。
「アレグリア、指でほっぺを突っついてみて!!弾力が違うから!!」
「た、確かに…。ぷるぷるお肌になってる。実際に触ってみるとよく分かるわ」
感心するアレグリア。
『ジュリアさん、私にも触らせて下さい!!』
シーザリオとメサイアがジュリアさんに言う。
「分かるわ。お二人のお気持ちは…痛いほどに。私もちょうど20歳を過ぎた頃から、肌の衰えを感じていましたから…分かります」
二人がジュリアさんの肌を観察する。物凄い至近距離で見て、触っている。二人の表情には鬼気迫るものが感じられた。
俺はそんな二人を見て声をかける。ここはかなり気を使わなければならない。
「シーザリオとメサイアには、まだ必要ないでしょ。十分に綺麗だよ」
俺はこの後、二人がポーションを欲しがる事は分かっている。しかし、この一言を言っておく事が大事なのである。
さらに…
「20歳代は、女性にとって一番輝いてる時だと思う。二人みたいに才能も有って、仕事もバリバリこなしている女性は特にね」
これは自分の好みが入っているが、前世の経験上、言っておいて損は無いだろう。まあ、周りに気を使い生きてきたブサメンの経験など、本当に効果があるのかは分からないが…。
「ハヤト様、面と向かってそんな事を言われたら…照れてしまいます」
「輝いているだなんて…もう、これ以上ないくらいハヤト様の事を愛しているのに、さらに愛おしい気持ちが増してしまいますわ」
シーザリオとメサイアが腰をくねらせ照れる。
(こ、効果があった!!しかも絶大に!!これがイケメンの力なのか!?)
俺は二人の言葉を喜びつつも、どこか理不尽に思う気持ちが残った。そして、前世で不遇な人生を送ってきた俺の心が病んでいるのだろうか?と、考え込んでしまうのだった。
【ジュリア視点】
(あぁ…カサカサでうるおいが無くなってきた私の肌が、こんなに瑞々しく…)
私は手鏡の中の自分の顔を見つめ、指で感触を確かめる。指で押した私の肌は『プルルン』と弾力があり、押した指までもが、あかぎれが治り、昔の様な白く細い指に戻っていた。
(いつまでも鏡を見ていられる…幸せ!!)
私は先程、何回も暴言を吐きまくった娘のアレグリアに、肌を触らせ確かめさせる。もう暴言は吐かせませんよ!!
(ふふふっ、プルプルお肌なんて言って驚いてる!!気持ちいい!!)
私はアレグリアが言った暴言などすっかり忘れてしまうのでした。
【目覚めたファレノプシス 3】
「ブエナ、心配をかけたね」
今度は私から妹のブエナビスタを抱きしめる。強く、優しく…私が意識を失ってから、どんな思いで生きて来たか…想像したら涙が溢れてきた。
「ファレ姉、泣かないで…もう、大丈夫だから!!」
「ブエナ…ブエナ!!」
涙が止まらない私の頭をブエナは優しく撫でてくれる。本当によくできた妹。
私はそんな妹に、これ以上情けない姿を見せられないと、必死に涙を我慢する。
「ブエナ、マリア様に私の回復を祈ってくれたのでしょう?そして、奇跡が起きたんだね。長い間、意識を失っていた私が、偶然にも意識を取り戻す事ができるなんて…ありがとうございます、マリア様!!」
「マリア様に祈っていた事は本当だけれど…。ファレ姉が治ったのはエリクサーを飲んだからだよ」
「んっ…エ、エリクサー!?」
私はブエナの口からエリクサーという、幻の万能薬の名前が出てきた事に、正直、驚いてしまう。当然、冒険者の私は、稀に、本当に稀に、ダンジョンから出るという話は聞いて知ってはいましたが…。
(一体どうやってエリクサーを…庶民が気軽に手に入れられるものではないのですが…。私が意識を失っている間にエリクサーの製造方法が分かったのですか?)
私は得意げな顔をしているブエナを見ながら、困惑をしてしまうのでした。




