第64話 ジュリアさんからの圧に怯える
「どんな効能のポーションを作ればいいと思う?」
俺の質問を聞いて、みんなが考え出す。
「う~ん…そう言われても、難しいわね。私は、ただ単純にレベルが高いポーションなら何でも良いと思っているからね。効能を絞らなくてもいいんじゃない?」
アレグリアが言う。
「確かに…。さっきの上級ポーションも、特に効能を絞らなくても問題が無かったと思いますよ。ハヤト様が作られるポーションなら、全てをカバーできるほどの効果が期待できると思いますからね。効能を絞るというよりも、今までに無かった効能を付与できないものかと考えます」
「今までになかった効能?」
俺はシーザリオの意見に興味を持った。
「はい。例えば…若返りとか…」
「わ、若返り!?」
ジュリアさんが反応する。それはもう、物凄いスピードで反応した。そして、期待に満ちた目で俺を見つめている。確かにジュリアさんは、この中では唯一の30代、それも後半…。若返りに興味を持つ事は理解できるが…。
しかし…間違っても『ジュリアさんは30代後半ですから、若返りに興味を持つ気持ちは分かります』などと言ってはいけない。
「ジュリアさんは若返りのポーションを飲まなくても、充分に若いじゃないですか!!今のままで、とても魅力的ですよ!!」
俺は嫌味に聞こえないように、細心の注意を払い言う。
「確かに。同じくらいの年齢の女性に比べ、かなり若く見えますね」
メサイアも俺の意図を理解し、援護射撃を撃ってくれる。出来る女である。頼もしい。
が、しかし…
「お母さんは、もう…おばさんだからね!!みんな見てよ。最近、ほうれい線が目立ってきたよ!!」
アレグリアの空気を読まない発言に、周りが凍り付く。さすが母娘、容赦がない。しかし、まだ12歳のアパパネさえも『それ言うの?』という顔をしている。俺とメサイアの気遣いが台無しである。
ジュリアさんは娘の言葉を聞いて『シュン』と、落ち込んでしまった。
「よ、良し!!出来るかどうか分からないですが…挑戦してみます!!」
俺は凍り付いた空気を変えるべく、ポーションを手に取った。
(さて…一概に若返りといっても、いきなりジュリアさんの見た目が18歳になり、アレグリアのお姉さんみたいになってしまっても、それはそれで問題だ。大人の女性としての魅力も捨てがたいしね。30代後半には30代後半の美しさがあるのだ!!)
俺はギリギリ問題にならないであろうレベルを考える。単純に見た目が若返るのは良くない。大人の女性の魅力を残しつつ、肌の状態を改善する事を目指す事にした。出来るかどうかは分からないが…。
(美肌…美肌…美肌!!)
俺はシミが無くなり、しわやたるみが改善する事を目的に『美肌』を思い浮かべ、ポーションに魔力を注入していく。
しかし、ジュリアさんの俺を見る圧が凄い。気のせいだろうか、シーザリオとメサイアも『ソワソワ』している気がする。一方で、アレグリアとリスグラシューは大した関心は無さそう。アパパネにいたっては、ジュリアさんの圧に引き気味であった。
男の俺には分からないが、女性の心境として、20歳を境に肌への関心がかなり変わってくるのではないだろうか。3人からは執念らしきものを感じる。
「で、できました…」
俺は恐る恐る言う。なぜか、絶対に失敗できない雰囲気になっている。
「ハヤト君、鑑定!!鑑定!!」
ジュリアさんが身を乗り出して言う。目が怖い。
「鑑定」
俺はジュリアさんからの圧に耐えられず、『頼む、成功していてくれ!!』と、祈る思いで、鑑定をするのであった。
【ジュリア視点】
(おばさん…ほうれい線が目立つ…)
娘、アレグリアの言葉に愕然としました。
私は怒りを通り越し、力が抜けてそのまま椅子へ…。もし椅子が無かったら、私は倒れてしまったかもしれません。アレグリアに悪気はないのでしょうが、さすがに傷付きました。
(若さが憎い!!)
十代の若さに嫉妬する私。女性にとって老いとは、それほどまでに恐ろしいものなのです。それが十代の小娘には分からないのです。間違いなく、自分も老いていくというのに…。
(でも、私にはハヤト君がいる。ハヤト君が私のためにポーションを作ってくれるかも…)
ハヤト君がポーションを手に取りました。期待せずにはいられません。
(やったわ!!期待通り、ポーションを作ってくれる!!成功して!!成功したら、私を好きにしてもいいからね!!)
私は祈るような思いで、ポーションを手に取るハヤト君を見つめるのでした。
【目覚めたファレノプシス 2】
最愛の妹、ブエナビスタが私の胸の中で号泣している。その間に少しずつ、記憶を思い出してきた。
(私は…ギルドに強制召集され…魔物を…倒し…仲間を救おうとして…その後は…思い出せない)
完全には記憶を思い出せない…が、ある程度は思い出せた。そうしている間に、ブエナビスタも落ち着いたようだった。
「お姉ちゃん、夢じゃないよね?」
真っ赤な目をして私を見上げる妹。相変わらず、可愛らしい。
「あぁ…夢じゃない!!私は長い間、意識を失っていたみたいだね。でも、もう大丈夫!!それに…なんだか、凄く体が軽い。まるで羽が生えたようだよ」
私は槍を構える格好をして、前に踏み込んでみる。
(…なんだか、以前よりスピードや体の切れが増しているような…。私は意識を失い、寝たきりだったはずなのに…)
私は自分の状況が今一つ理解できないでいるのでした。




