第63話 過剰品質
「ただいま!!」
俺はもはや自宅の様にベガへと入っていく。
『お帰りなさい!!』
みんなも当たり前の様に俺を迎えてくれる。
「シーザリオとメサイアも来てたんだね」
「はい。強引に宿を引き払い、ベガに宿泊する事にしました」
「しばらくお世話になる予定です」
シーザリオとメサイアは『ニッコリ』と笑う。
「アレグリア、ポーションを買って来たから」
俺はテーブルの上に20本のポーションを取り出した。
「え~と…これがいい!!Lv.10、下級ポーションの中では最上級だよ」
「ありがとう!!やっぱり、ハヤトに選んでもらうのが正解だよね!!でも、買いすぎじゃない?」
俺はアレグリアにポーションを渡し、人生相談所でポーションを売ってみると話した。
「売れるかなぁ?」
アレグリアは不安そうな顔で言う。
「このポーションの製作者から、普通に並べるだけでは、絶対に売れないと言われたよ。だから…」
俺はシーザリオに『お墨付き』の発行をお願いしようとするが『私が『お墨付き』を発行します!!』と、先に言われてしまった。
「良いのか?シーザリオ…簡単に『お墨付き』を発行するなんて言って…」
「良いも悪いも、ハヤト様が選んだポーションなら、粗悪品のわけがありませんからね。お任せください!!」
「頼もしいね!!」
「何なら、私が全て買い上げましょうか?」
「いや、それはやめておくよ。10本は自分で売ってみるよ。あとの9本は実験に使うから、売らないけどね」
「実験とは?」
「俺もシーザリオみたいに魔力を注入して、中級ポーションを作れないものかと思ってね。昨日はアレグリアのポーションを使って実験してみたんだけど…失敗したんだよ」
「失敗ですか…下級ポーションのままだったという事ですか?」
「いや、変な名前の万能薬になっちゃったんだよ」
「…万能薬?見せて頂いても?」
「ごめん。このポーションを売ってくれた人にあげちゃったんだ」
「そうですか…」
何か難しい顔をして考え込むシーザリオ。そのまま目を閉じて考え込んでしまった。
そして、リスグラシューが大慌てでやってきた。
「痛い、痛い、痛い!!ハ、ハヤト様、私にポーションを売ってください。不覚ながら、包丁で指を切ってしまいました」
リスグラシューの指からは大量の血が…。
「凄く痛くて…本当に申し訳ありません」
「少し待ってくれ。でも、お金はいらないからね」
俺はキリ傷が治って、血が止まるイメージを描きつつ、ポーションに魔力を注入する。だが、のんびりしている暇はない。こうしている間にも、リスグラシューの指からは血が流れている。
「よし。時間は少ないが…鑑定!!」
上級ポーション Lv.10 止血(特大) 再生(特大)
「…できた!!上級ポーションだけど!!早く飲んでくれ」
『上級ポーション!?』
みんな驚きの声を上げるが、俺からポーションを受け取ったリスグラシューは一気に飲み干す。
「んんんっ!?傷が治った!!痛みもありません!!」
「おおぉぉぉ~~~!!やったわね!!さすが上級ポーション!!でも、絶対に過剰品質だから!!切り傷くらいなら、私がもらった下級ポーションでも治るわよ」
アレグリアがツッコむ。
「良しっ!!細かい事は気にしない!!」
リスグラシューの傷が治り、みんなが驚き、喜ぶ。俺も思わず大きな声を出し、ガッツポーズを決めてしまった。
「ハヤト様、効能を詳しく教えてくれませんか?」
「効能?止血、再生が特大となっていたよ」
「と、特大!?特大…特大…」
シーザリオは驚き、再び考え込んでしまった。
「ハヤト君、凄いわね!!効能を絞って上級ポーションが作れるなんて!!」
「本当だよ!!もっと実験をしてみようよ!!」
ジュリアさんとアレグリアが俺を絶賛する。アパパネもキラキラした目をして、俺を見つめている。
(嬉しいが…なんか照れくさいな)
そう思うが、この際だから、いろいろ試す事にしたのだった。
【目覚めたファレノプシス】
「あわわわっ、ファ、ファ…あああっ…ファレ…」
目の前にいる最愛の妹がうまく息ができていない。一体、どうした?口を大きく開き、息を吸いたいのか喋りたいのか…とにかく、あわわわっと声にならない声を出している。そして私を見るその表情は、まるで化け物が出たかの如く驚いている。
「ブエナ、どうしたんだ?」
優しく声をかけるが…
「ファ…ファ…ファレ、はあ、はあ…ファレ…」
上手くしゃべる事ができていない。
「まったく…ブエナはいつまでたってもお子様なんだから…」
そう言いながら、私はブエナが作っていたスープを口にする。
「おっ!!なかなかの味じゃない!!ブエナ、早く食事にしようよ」
そう、声をかける。
しかし、一方のブエナは…
「ファ、ファレ姉が…立ち上がって喋ってる…あぁ………あ、脚が…生えてる!!」
驚愕の表情で、私の事を、化け物でも見ているかのように言う。失礼な!!
「しっかりしなさい!!」
埒が明かないので、ブエナの背中を力を込めて叩く…と、ブエナは『ハッ』と我に返り、そして大粒の涙を流し、私の胸に飛び込んできた。
「ファレ姉…ファレ姉!!。ファレお姉ちゃん!!」
私はなぜブエナが号泣しているか理解できず、ただただ唖然として、泣きじゃくる妹を優しく見守るしかありませんでした。




