第60話 中級ポーションの製造…失敗!?
(試してみようかな)
俺はポーションの中に自分の魔力を注入する。
(初めてだから上手くできるか分からないけど、イメージ…イメージ…イメージ)
自分の体の中にある魔力を、瓶の中に入れるイメージを描く。
不思議そうな顔をしてアレグリアが言う。
「ハヤト、難しい顔をして、何をしているの?」
「い…いや、こう…して、魔力を、ポーションの中に…送り込めないかと…思って」
眉間にしわを寄せ、ポーションの入った瓶に手をかざしている俺は答えた。
「えっ!?出来るの?」
「い、いや…分からないけど、試しにと思って…ふんっ!!うりゃ!!どりゃあ~!!」
アレグリアは、いろいろなポーズをして瓶に魔力を送り込もうとしている俺を見て笑う。
「あはははっ!!そのポーズは意味があるの?」
「いや…全く分からないよ」
「変だよ!!あはははっ、おかしいよ!!」
ベッドにダイブし、笑い転げている。
「成功したら、アレグリアにあげるから…笑わないでくれ」
「えっ!?本当!!でも、ポーズは関係ないと思うんだけど…普通にできないの?」
「何か、こう…ポーズを決めた方が、魔力が入っていきそうな気がするんだよ」
「絶対、気がするだけだから!!」
ベッドに寝転びながら、楽しげに俺を見つめるアレグリア。
約五分くらいだろうか、俺はポーションに魔力を送り込んだ。
「成功していれば、中級ポーションになっているはず…」
「チョット、ドキドキするわ!!」
アレグリアも期待しているようだ。成功して良いところを見せたいものだ。
「…鑑定」
「どう?ねぇ、ねぇ、どう?」
「……………」
「成功した?失敗?」
「ごめん…。失敗しちゃったみたいだ」
「…仕方が無いわよ。初めてだもの」
俺はがっくりと肩を落とす。
「何回も練習しないと上手くはいかないみたいだな。明日、練習用のポーションとアレグリアの分のポーションを買って来るよ」
「ふふふっ、このポーションは失敗しちゃったけど、ハヤトの選んだポーションが手に入るなら、全然OKでしょう!!」
「今日はごめんな。じゃあ、明日にはポーションを買ってくるから」
「大丈夫だからね。気にしてないわ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
俺はアレグリアに謝って、部屋を後にした。
自室に戻り、そのまま持ってきてしまったポーションを机の上に置く。
「せめて下級ポーションのままなら良かったんだけどな。これ…どうしようか…」
もう一度、鑑定結果を見返してみる。
エリクサー 万能薬
「まったく…エリ…ク…サーって、何なんだよ!?万能薬って…。前世で見た万能薬詐欺のニュースを思い出したわ!!」
俺はとりあえず、失敗して出来てしまったエリクサーなるものをマジックバックに入れ、今日は寝る事にしたのだった。
☆★☆
翌朝、ダイニングへと降りていくと、すでにシーザリオとメサイアが椅子に座っていた。
「おはよう」
『おはようございます』
すかさず立ち上がり、仰々しく挨拶をする二人。やめてほしい。
「はい、みんな!!『クリーン』を掛けるよ」
『は~~~い!!』
アレグリア達が頬にキスをしていくと、当然とばかりに、シーザリオとメサイアもキスをしてくれた。
「メサイア、宿をここに移しませんか」
「私としても同意したいのは山々ですが、残念ながら出来ません」
「ぐぬぬぬっ…やはりダメですか…」
「一応、シーザリオは国の要人ですので…でも、私だけなら…」
「絶対に許しません!!」
「そう言うと思いましたよ」
二人ともとても残念そうな顔をして、アパパネが持ってきた朝食を食べる。
「お、美味しい!!メサイア、信じられぬ美味しさです」
「はい。とても美味しいですね。一度、宿を変更できないか、交渉してみましょう!!」
二人はそう言いながら、リスグラシューの作った朝食を夢中で食べるのであった。
【アレグリア視点】
私の部屋に初めてハヤトを招き入れた。表情には出さないが、少し『ドキドキ』している。
(この私の想いも、ハヤトには伝わっている)
そう思うと、意識しても仕方が無いと開き直れた。すでに私の想いは全てハヤトに伝わっているのだから…。
(ハヤトは全てを受け入れてくれている)
私は、ただそれだけで心が穏やかになり、安心できた。
ハヤトにポーションを渡すと、何やらおかしなポーズを取り出し、奇声を上げ始めた。ポーションに魔力を送り込むと言って…。
私は面白くなり、ベッドに寝そべりながら、大笑いしながらハヤトを見つめる。
そして…
「鑑定!!」
「ねぇ、どう?」
私は興味津々で結果を聞く…が、どうやら失敗してしまったみたい。
(ハヤトでも失敗する事があるんだ…)
私は素直にそう思った。でも、なぜか少し安心をした。
(ふふふっ、少しくらい失敗をしてくれた方が、親近感を感じられるわ。いつも完璧を求められても、ハヤトとしても辛いだろうしね…)
私はそう思いながら、ハヤトを励ます。
今、この瞬間、目の前で作り出されたものが、伝説の万能薬と伝えられている『エリクサー』だったという驚愕の事実は知らずに…。




