第58話 女性の扱いは平等に…
「メサイア…メサイア!!いつまでハヤト様を抱きしめているのですか。早く離れなさい!!」
シーザリオが大きな声を出し怒る。
「はっ!?こ、これは申し訳ありませんでした。私とした事が…はしたない事を」
メサイアは慌てて俺から離れる…が、俺は少し残念な気分になった。もう少しだけ、メサイアの胸の感触を堪能したかったのだが…。仕方が無い。シーザリオが『ブチギレ』寸前の様だ。
「まあ、これでおあいこです。今回だけは許しますが…メサイア、抜け駆けは許しませんよ」
「分かっていますよ」
シーザリオとメサイアの間で談合でも行われているのかという会話が交わされるが、ここは指摘しないほうが良いだろう。俺は華麗にスルーを決め込んだ。
「アレグリアさん達にも謝らなくては…。申し訳ありませんでした」
メサイアがアレグリア達にも頭を下げた。
「や、止めてください、メサイア様。私達は全然、怒っていませんから!!」
「娘の言う通りです。私達に頭を下げるのは止めてください」
「ハヤト様を抱きしめる事くらい、どうって事無いですよ!!私達とアパパネは、毎日のようにハヤト様にキスをしていますからね!!」
最後のリスグラシューの言葉を聞いた後、二人は固まってしまった。
「……………」
「……………」
声も出ないくらいの衝撃を受けたようだった。口を『アワアワ』とさせながら、目を見開いて驚いている。
そして…
『毎日キスをしているだと!?一体、どういう事だ!!説明しろ!!理由によっては…命は…無いと思え!!』
シーザリオとメサイアは年頃の女性とは思えない、激しい言葉をリスグラシューに浴びせ掛ける。
しかし、リスグラシューは微笑を浮かべ余裕の表情…。
「ふふふっ、メサイア様。生活魔法はお使いになられますか?」
「生活魔法?私は使えないが…。どうしても…という時は、シーザリオに頼む事もあります」
「ハヤト様、メサイア様に『クリーン』を…」
俺はリスグラシューの意図が分からないが、とりあえず、メサイアに『クリーン』をかけてあげた。
「あぁ~~~!!気持ちいい!!ありがとうございます。ハヤト様」
何とも爽やかな笑顔を浮かべ、メサイアは俺にお礼を言った。
「では…メサイア様。ハヤト様に生活魔法をかけて頂いた対価を…」
「対価?」
「はい。私達はハヤト様に生活魔法をかけて頂いた対価として、頬にキスをするのです」
「えっ!?キ、キ、キチュー!?」
「キスとチューを掛けたのですね。おもしろいですわ」
『クスリッ』とも笑わず、リスグラシューは言った。ちょっと怖い。
(リスグラシュー…。そこはスルーしてあげて…)
微妙な空気が流れる…が、メサイアはすでに、キスの事しか考えられなくなっているようだ。
「本当にキスをしても!?」
メサイアは僅かに震えながら、俺の頬に控えめに口づけをする。
「ハヤト様、何度でも、何度でも、何度でも言います。あなたに出会えて、私は幸せです。末永くよろしくお願いいたしますね」
「俺もメサイアに出会えて幸せだよ」
メサイアの目を見つめ、恥ずかしくなるようなセリフも自然と言える様になってきた。俺も異世界での環境に適応してきたという事なのだろう。女性に囲まれる事が当たり前になってきている。
しかし、この状況が許せないという女性が一人いる。
そう…シーザリオである。
メサイアが俺の頬にキスをするのを見て『ワナワナ』と震えている。再び爆発寸前という危うさになっていた。
「シーザリオ様は間違いなく、生活魔法を使えるはず…。今回はお預けという…」
リスグラシューが話し終える前に、シーザリオが爆発…では無く『もういいです!!』と言い、むくれて布団の中にもぐってしまった。
そして、布団の中から『ブツブツ』と声が聞こえてくる。
「抜け駆けをしないと言ったばっかりなのに、メサイアったら…。だらしない顔をしてハヤト様にキスを…。ハヤト様もハヤト様です。軽々しくキスなんかされて…」
リスグラシューが俺を見る。 『何とかシーザリオ様のご機嫌を取ってください』という無言の視線が…。
(俺のせいなの!?)
困惑しながらも、このまま放置するわけにもいかず、激オコのシーザリオのご機嫌を直す事にした。
「あぁ~、良く考えたらシーザリオも魔力が少なくなっているから、生活魔法を掛けてあげようと思っていたのに…。残念だなぁ~」
シーザリオの愚痴が一瞬で止まった。分かりやすい反応。
「そうね。今日はこれ以上の魔力の使用は危ないかも…。シーザリオ様は生活魔法を使わないほうかいいわ」
「やっぱり女の子は、寝る前には『クリーン』を掛けてもらわないとね」
「ただし、対価はキスをする以外には認められません」
アレグリアとジュリアさん、それにリスグラシューが、次々に援護射撃を打ってきてくれた。
シーザリオが布団から『ぴょこ』っと顔を出す。
「も、申し訳ありませんが、私は魔力が減少していて…『クリーン』をお願いしてもよろしいですか?」
「もちろんいいですけど…。対価は頬にキスだけど…いいかな?」
「もちろんですわ!!」
思わず苦笑いをしてしまうほど、簡単にシーザリオの機嫌は良くなった。
そして『クリーン』を…。
「あぁ~、なんて心地よい。体だけでは無く、心まで綺麗になる感じがします。ハヤト様、ありがとうございます!!」
潤む目で俺を見つめるシーザリオ。
「チュッ」
メサイアと同じく、僅かに震えながら、控えめなキスをしてくれたのだった。
そして俺は『複数の女性と付き合うなら、平等に接しないと大変な事になってしまうのだな』と、切実に思ったのだった。
【シーザリオ視点】
(何と、何とはしたない事を…。メサイア、私はあなたを見損ないましたよ。わざと、ハヤト様のお顔を自分の胸の谷間に…。あぁ~、はしたない顔をさらして…親友として見ていられません!!)
私はメサイアに苦言を呈しました。まるで魔力注入時にハヤト様に対して行ったセクハラを忘れたかのように…。
(これは親友として、あなたの事を思っての行いです。決して、嫉妬などではありませんよ)
こんな事を思っていると、リスグラシューから聞き捨てならない言葉が…。
(ハ、ハヤト様にキスをしているだと!?しかも…毎日!?ぜ、絶対に許す事はできません!!も、もしや、嫌がるハヤト様に無理やり…。だとしたら、見逃すわけにはいきません。わ、私だって21年もの間、一度もキスをしたことが無いのに…)
私は魔力が減少している今、魔法を使用する事は危険と承知の上で、事と次第によっては魔法を使用せざるを得ないと覚悟します。
しかし…
(なっ!?メサイアまでもが…キスを…して…)
にわかには信じられない光景が目の前に広がった。
(キスは生活魔法の対価…。生活魔法が使える私は…キスができない)
絶望感で思わず布団で顔を覆ってしまいました。
そして嫉妬の炎が私を包み、思わず口から醜い言葉が…。
(もういいです。別にキスなんて…。私はそんな軽い女ではありません。ふふふっ、生活魔法の対価がキス。はしたない…何てはしたない人達なのですか。私は自分の能力だけを武器にして、ハヤト様に尽くしていきますわ)
私はそう決意しました…が、ハヤト様が魔力が減少している私を気遣い、生活魔法を掛けてくれると…。
そして他の皆さんも口々に私に『クリーン』の生活魔法を掛けてあげてと…。
私は今、心に決めた決意など一瞬で忘れ、ハヤト様に生活魔法をお願いしてしまいました。これでいいのです。女性は移り気なのです。
そして…
「チュッ」
初めてのキス、頬ですけど…。
(あぁ~!!頬が『プニプニ』しています。二の腕も『プニプニ』でしたが、頬もなかなかですね~。でも、一番『プニプニ』で美味しそうなのは…唇)
私は自分のはしたなさを一切、気にもせずに、次は『唇を食べちゃおう!!』と、密かにターゲットを定めたのでした。




