第57話 俺は尻派
「ふふふっ、母親と娘、一緒にハヤト様にお仕えできるなんて羨ましい限りですわ。しかし、今は私に改めて魔法の説明をさせてくださいね」
シーザリオが微笑を浮かべながら言う。
(良かった…。『この変態野郎!!』と罵られるかと思ったが、素直に母娘丼を受け入れているようだ。本当にこの世界の価値観には驚かされるなぁ)
俺は内心、冷や冷やしていたのだが『ホッ』と一息をつく。
「ではハヤト様、魔法の説明を…。魔法は体内に一定の魔力さえあれば、誰にでも使える可能性があります。逆に言うと、一定の魔力が無ければ、絶対に使える事はありません。先程も言った通り、イメージをして魔力と共に放失したものが魔法ですから…。あと、魔力があっても、イメージができなければ使うことはできず、イメージできても、魔力が一定量無いと、魔法を発動する事はできません。その様な条件を満たした者だけが、魔法を使う事ができ、魔法使いと呼ばれています」
「魔力が重要か…」
「はい。厳密に言うと、この世の全ての生き物の体内には、微量の魔力は備わっています。ですが、ほとんどが本当に微量で、何の役にも立たない、意味のない量なのです」
「修練で魔力を増やしたりする方法はないのか?」
「通常は生まれた時に魔力量は決まっていると言われていますが…」
「んっ!?」
「ハヤト様の様な規格外の人間が現れてしまいますと…今までの常識が覆されてしまう可能性があるかもしれません」
シーザリオは期待に満ちた表情で言う。
俺は慌てて…
「い、いや…俺にそんな力はないからね!!」
そう言ってみるものの、みんなの視線には、明らかに何かを期待した感じが見て取れる。
「ハヤト様にそんな力は無いとは言い切れないのですよ」
「ほ、本当に?」
「はい。私が水の精霊様の加護を持っている事はご存じですね。私はその加護のおかげで様々な恩恵を受けています。例えば…私は水を浄化する事ができるのです。そしてその浄化された水は、高レベルのポーションを作る時に非常に役に立ちます。これは加護を持っていない普通の人間では真似ができません」
「ポーション!?」
「はい。ハヤト様は創造神様の加護をお持ちです。過去に前例が無いのです。どのような能力が隠されているか…私の様な凡人には正直、想像がつきません」
「凡人って…。シーザリオはこの世界でもかなりの実力者だと思うけど…」
「ふふふっ、ハヤト様にそう言われると、とても嬉しく思います。微力ながらこのシーザリオ、ハヤト様の為に力を尽くす覚悟です」
「あ、ありがとう。とても頼もしく感じます」
俺は素直に感謝の気持ちを伝える。実際、シーザリオとメサイアはとても頼りになるのだ。俺に魔の手が伸びて来た時に、確実に味方でいてくれる頼もしい女性だ。しかも超美人さんだ。
「簡単にではありますが、以上がスキル、魔法と魔力の説明となります。正直に言えば、分かっていない事の方が多いと言わざるを得ません。十分な説明ができず、自分の力不足を痛感する次第です…」
シーザリオは肩を落とし、申し訳無さそうに言う。
「仕方がないよ…。シーザリオが分からないなら、他の人にも分からないんじゃないかな。幸い、俺には鑑定スキルがある。これから分からない事をどんどん調べていこう!!そうすれば、この世界に住む人達の為にもなるし、後世の為にもなるからね」
「ハ、ハヤト様、そこまでこの世界の事を考えて…感激です!!」
シーザリオは俺の手を握り、目を潤ませて言った。
「くっ!?ま、また、ハヤト様に触れて…。抜け駆けはしないと言ったのに!!」
横にいるメサイアが苦い顔をして吐き捨てた。
俺は驚いてメサイアの方を見た。
「どうしたの?メサイア」
「い、いえ…なんでもありません」
メサイアは悔しそうな顔をしてうつ向いた。
「ふふふっ、ハヤト様。メサイアは悔しいのですよ。私がハヤト様の肌に触れるのが…悔しくてたまらないのです」
「シ、シーザリオ!?その様な事をハヤト様に言わなくても…」
シーザリオの指摘に、顔を真っ赤にして恥ずかしがるメサイア。
俺はそんなメサイアを見て微笑ましく思う。
「メサイアにも、これからよろしくお願いするからね」
そう言い、優しく手を握った。
「ひゃっ!?」
少し間が抜けた声を出し、固まるメサイア。普段は凛々しい立ち居振る舞いとのギャップにやられてしまい、思わずメサイアの腰に手を回して抱き寄せた。
「ハ、ハ、ハ、ハヤト様!?」
驚くメサイアは大きな声を出す。だが次第に冷静さを取り戻し、逆にまだ体が小さな俺を抱き返してくれた。
「!?」
メサイアに抱きしめられる俺の顔は、身長差により彼女の胸の谷間にすっぽりと収まった。バスト86のスレンダー美人のメサイア。決して巨乳というわけでは無いのだが、十分な膨らみを感じられる。
(たまらん!!でも…決して狙ったわけではないからね!!お、俺は尻派だし…胸は別に…)
自分で自分に言い訳をしながらも、メサイアの胸の感触を堪能するのであった。
【シーザリオ視点】
(ふふふっ、母と娘が仲良く一人の男性の為に尽くしていく。とても羨ましく思いますわ。私は幼い時に、母親を亡くしていますから、母と共にハヤト様に尽くすという事は叶いませんが…)
私はアレグリアとジュリアさんが手を取り合っているところを見て羨ましく思う。
しかし、今はそんな事を思っている時では無い。ハヤト様に魔法の説明をしなければ…。
私は自分の知識の全てをハヤト様に伝えるのだが…正直、分からない事が多すぎるのです。完全な説明をし、ハヤト様のお役に立てないのが悔しくてたまりません。
しかも…ハヤト様の持つ『創造神マリア様の加護』の効果も分からない。
(また分からない事が増えてしまいました。自分の無力さに嫌気がさします)
私が自分の力不足を嘆いていると『仕方がないよ…。シーザリオが分からないなら、他の人にも分からないんじゃないかな。幸い、俺には鑑定スキルがある。これから分からない事をどんどん調べていこう!!そうすれば、この世界に住む人達の為にもなるし、後世の為にもなるからね」と、おっしゃって頂きました。
私は感激し、ハヤト様の手を握る。それを見て、メサイアが何か吐き捨てる様に言っています。
(まあ、お下品な!!)
「ふふふっ、ハヤト様。メサイアは悔しいのですよ。私がハヤト様の肌に触れるのが…悔しくてたまらないのです」
メサイアのお下品な言葉を聞いて、思わず煽るような事を言ってしまいました。そして少しだけ優越感を感じながら考えます。
(さすがはハヤト様!!使徒様にして聖者様。一生、お側に仕えさせていただきます!!そして…いずれは…ハヤト様の子を…)
私は一人、顔を赤らめてしまいました。
しかし、私が妄想をしている隙に大変な事態が…。
(今、ハヤト様はメサイアに抱きしめられています。な、何故!?しかも、ハヤト様のお顔がメサイアの胸の谷間に『スッポリ』と…。確かメサイアの胸のサイズは86…。私は88…!!私の勝ちです…が、許せません!!)
私はハヤト様を胸の谷間にうずめ、だらしない顔をさらしているメサイアを睨みつけるのでした。




