第56話 もう…どうにでもなれ!!
「ハヤト様、まずは前提として、完全には魔法とスキルの詳細は解明されていないという事をご理解ください。その上でハヤト様、魔法とスキルの違いはお分かりですか?」
「ごめん。正直よく分かっていないんだ」
「構いませんよ。まずスキルから説明をしますね。スキルとは個人に与えられた、一種の才能だと考えられています。ただ、全員に与えられるものではなく、生まれた時から持っている者もいれば、厳しい修練や、戦いの中で死線を超えた時に獲得できる人間もいる様です。ただし全ては想像でしかありません。他人のスキルを確認する術がありませんでしたから…。そしてハヤト様の様に異世界から転移して来た者は、洩れなくスキルを持っていると言われています」
「なるほど…。今は『鑑定スキル』持ちは俺しかいないのかもしれないけど、やはり過去には『鑑定スキル』を持った人がいたと思う。そうでないと異世界から来た者が洩れなくスキルを持っていると言われている事が説明できないと思う。分かるわけがないから…。『鑑定スキル』は夢のスキルでは無いよ。レアスキルではあると思うけど…。それに…」
「それに?」
「俺の持っている『鑑定スキル』はただの『鑑定スキル』じゃないんだ。俺が持っているのは『神の領域の鑑定スキル』だから…。この『鑑定スキル』に限りなんだけど、俺は創造神マリア様と同等の能力らしいよ」
「マ、マ、マリア様と同等の能力!?」
シーザリオが目を見開いて驚く。他のみんなも『信じられない』という顔をする。
「そうだよ。だから鑑定した人の全てが分かってしまう。あっ!?確かマリア様が言っていたような…『あなたに強力なスキルを与えましょう。本来なら人間が持つ事はできないほどの強力なスキルを』と…ね」
全員沈黙をするが…一斉に…
『やっぱり使徒様じゃないですか!!』
大きな声で、俺に向かってツッコんだ。
「えっ!?い、いやぁ…べ、別に…」
俺が反論しようとするも、みんなの目が怖い。
まず、アレグリアが言う。
「創造神マリア様と同レベルの鑑定スキルって、人外確定だよ!!」
俺はもはや、人で無くなってしまった。酷い。
そしてシーザリオはベッドに横たわりながら『何故、マリア様はハヤト様に自分と同等のスキルを与え、この世界にお遣わしになられたのか』などと、大袈裟な事を言っている。
(…いや別に、単純なミスなだけだけど…。俺にピアノの才能があると言いながら、ピアノの無い世界に送り込もうとした単純な確認不足。スキルはお詫び。でも、とてもそんな事を言える雰囲気ではない。困った)
俺はどうやってこの状況を乗り越えられるか考える。
「ふふふっ、おもしろいですわ…。自分の器の小ささが…とてもおもしろく…情けない…。私はこの国の公爵家に生まれ、誇りをもって今までの21年間を生きてきました。しかし…今となっては陳腐、とても陳腐な人生に思えてきます。創造神マリア様と同レベルの鑑定スキルを持つハヤト様の前では…。しかし…そのハヤト様のお側に仕え、共に歩んでいける事を嬉しくも思います」
メサイアが天を見上げながら言う。
「あ、あの~、メサイア。君の人生はとても素晴らしい物だと思うよ。決して陳腐な人生ではないから…。俺はたまたま、本当にたまたま『神の領域の鑑定スキル』をもらっただけだから…」
俺の言葉を聞いてメサイアは微笑みながら…
「ありがとうございます。ハヤト様は前に生きておられた世界で、何か大きな偉業を成し遂げたのではありませんか。そして、その功績がマリア様に認められ、マリア様と同等のスキルを付与された。そういう事なのでしょう」
(い、いかん。また話が大きくなって…。このままでは…またリスグラ…)
俺が訂正を入れようと思った瞬間、奴が…言う。
「ふふふっ、分かりますか?メサイア様。おそらく、ハヤト様は前に生きていた世界を救い、その功績が認められ、マリア様と同等の鑑定スキルと、自らの加護を付与され、この世界に舞い降りたのです。腐敗した世界を救い、弱者を救済したハヤト様は使徒様にして聖者様なのです!!」
(せ、せ、聖者って!?確かに人の為に何か自分ができる事をしてあげられたら…と思う気持ちはある。そのために鑑定スキルを付与してもらったし…。でも、実際の俺は…人に言えないスケベな事も考えるし、美しい女性に囲まれた今の状況を嬉しく思っている。決して聖者なんかでは無いんだ!!)
俺はリスグラシューの言葉を聞いて目まいを起こしそうになる。
「あぁ~!!使徒様、聖者様!!」
ジュリアさんが胸の前で手を組み、涙を流しながら俺を拝む。
「ジュ、ジュリアさん、俺を拝むのは止めてください!!」
大慌てでジュリアさんを止める…が、背後からまたリスグラシューが追い打ちをかけてくる。
「さあ、私達もハヤト様を拝み、そして忠誠を誓いましょう!!そして共に歩み、この世界を救うのです!!私はここに宣言します。ハヤト様の剣となり盾にもなります。そして妻となり、ハヤト様の子を産みたいと思います!!」
(と、とんでもない宣言が来た~!?)
俺は『流石にみんな、これにはドン引きするだろう』と思い、みんなの顔を見渡す…が…
「私は最初からそのつもりだけどね!!」
アレグリアが澄んだ瞳で見つめながら言った、
正直、これは嬉しい。
問題は…ジュリアさん。
しかし…
「私の様な年増の未亡人でもよろしいのですか?」
そんな爆弾発言を、ジュリアさんは拝みながら言い放つ。
(これは最上級の母娘丼。しかし…異世界に来てまで…これでいいのか?)
自分自身に問いかける。
しかし…
「お母さん、大丈夫よ!!ハヤトならお母さんの38年間の人生をすべて受け入れてくれるわ!!」
「ア、アレグリア!!」
「お母さん!!」
母と娘が手を取り合って頷き合う。
(もう…どうにでもなれ!!)
俺は考える事を放棄したのだった。
【アレグリア視点】
(か、神の領域の鑑定スキル!?)
私はハヤトの言葉を聞き、言葉を失う。
(ただの鑑定スキルでも凄いのに、神の領域の鑑定スキル…創造神マリア様と同等の能力だなんて…信じられない!!)
私はシーザリオ様と話をしているハヤトを見つめながら思う…が、自分の全ての感情を知られていると思うと、恥ずかしくなり自然と顔が赤くなる。
(あぁ…恥ずかしい。ハヤトにすべてを知られている…。どうしよう…。ハヤトの事を考えて、エッチな事を考えてしまう時だってあるのに…昨日の夜もベットの中でハヤトの事を考えていやらしい事を…)
昨晩の自慰行為を思い出し赤面をする。
(でも…ハヤトはこんな私を受け入れてくれている。嬉しい。ずっと一緒にいたい。ハヤトと離れる事なんて考えられない。もっと力を付けてハヤトの役に立ちたい。シーザリオ様やメサイア様では無く、私がハヤトを守る!!)
私はすべての事を受け入れ、ハヤトの横に立つ自分を想像する。そして、さらに力をつけるため修練に励む事を誓うのでした。




