第174話 全裸のシーザリオ
シーザリオの部屋のドアをノックする。実は、直前まで忍び込もうと思っていたのだが、さすがに女性の部屋、しかも真夜中に忍び込むのはデリカシーが無さすぎるので、堂々とドアから入る事にした………のだが、反応がない。
(…やっぱり寝てしまっているのかな。どうしたものか?………忍び込むのはやめた…つもりだったが………仕方が無いだろう?)
自分自身に言い訳をしながら、ドアノブを握り締める。
(火魔法を使えば、ドアノブを溶かせないかな?…やってみるか?いや、やめておこう。ドアまで燃え上がってしまったら、それこそ大惨事だ。じゃあ、どうすればいいのか…そうだっ!!)
金色のドアノブの表面が白く変色していく。
俺は氷魔法を発動させて、ドアノブを絶対零度の領域まで、瞬時に冷やす。
(確かキンキンに凍った物質は、少しの衝撃を与えただけで、破壊できるという映像を見た記憶がある。どうだろう?成功するかな?)
俺は表面が白銀にまで変色したドアノブを、指先で軽く弾いた。
すると、見事なまでに、ドアノブだけが砕け散り、俺は苦も無く、シーザリオの部屋に侵入、いや、お邪魔する事に成功した。
部屋の中は月明かりに照らされていて、思ったより明るく、俺は忍び足でベッドに近寄る。
当然だが、ベッドでは静かに寝息を立てている黒髪の美女、シーザリオが熟睡している。
「シーザリ………」
顔を近づけ声を掛けようとする…が、しかし、シーザリオの寝顔は月明かりに照らされて、あまりにも神々しく美しすぎた。
シーザリオの肌は、月明かりのせいで青白くも、透明感が抜群であり、シミの一つもない、プルプルの質感。
俺は思わず見惚れてしまう。
そして…自然と頬にキスをする。
「…うう~ん………ハ、ハヤト様。おはようございます」
静かに目を開けるシーザリオ。少し寝ぼけている。
「ごめんな。まだ真夜中だ。おはようじゃないよ」
「構いません。おはようでも、お休みでも。ハヤト様が来ていただけるだけで、シーザリオは幸せでございます」
「ありがとう。思い付いた事があって。シーザリオに頼み事があるんだ」
「この日を待っておりました。夜這いだからと言って、抵抗などするわけもございません。この身はハヤト様のもの。お好きに愛でてくださいませ」
ほんのり頬を染めるシーザリオ。静かに目を閉じる。
「では…遠慮なく。って、ごめん。そうじゃないんだ!!」
「ふふふっ、やっぱりですか?」
「からかったな!!」
「冗談半分、本気半分ですよ。私はいつでもお待ちしております」
いたずらっぽく笑う顔が、とても愛おしく感じられたのだった。
☆★☆
瞳を潤ませて俺を見つめるシーザリオの黒髪を優しく撫でる。
「それで、頼み事とは?」
「あぁ…そうだったね。実はグレンデルの上流にある巨大ダム。今は水が無いらしいんだが、そのダムに今から行って、二人で水を溜めたいなって思ったんだ」
「確かに、エアディドール領も水不足と聞いておりました。素晴らしい考えだと思います。エアディドールの民のためにそこまで。さすがはハヤト様でございます」
「えっ!?い、いや…別に。特にエアディドールの民のためとかじゃなく…」
「えっ!?では一体、なんの目的なのでしょう?」
「討伐軍が川を渡ってくるだろ?あれほどの大河だから川幅も半端ない。大軍がエアディドールの外郭を突破しようとなだれ込んでくる。その時、ダムを決壊させれば…」
「……………」
「一気に数万の敵兵を、溺死させる事ができると思うんだけど…どう思う?」
「…えげつない事を考えますね。淫らな気持ちが、吹っ飛んでしまいましたよ」
シーザリオは掛け布団を勢いよくめくり、ベッドから起き上がる。
「……………」
シーザリオは全裸。下着一つ、身に着けていない。まさに、正真正銘の全裸。
俺は月明かりに照らされた、シーザリオの蒼白い肌に息を飲み『…綺麗だ』と言う事が精一杯で、圧倒的美を目の前にして、立ち尽くした。
シーザリオは『メサイアの裸を見たのです。私の裸も見てください』と、うつ向きながら言った。
「それ、争うところ?」
「負けたくありません」
「…勝ち負けではないような」
「世の中の普通の女性は、多少なりともお嬢様に対して、劣等感を持っております。私も例外ではございません。私は幼い時に彼女と出会い、親友になった。今も、心から信頼して、頼りにしています。でも同時に、公爵家のお嬢様には『絶対に負けたくはない』という気持ちも、常に持ち合わせています。ただ、この彼女に対しての気持ちが、私をここまでの高みに引き上げてくれたとも言えます。これまでも、これからも、私はメサイアとライバルとして競い合う事で、お互いに成長していきたいと思っているのです」
涼やかな瞳で俺を見つめるシーザリオ。
「…分かったよ。そこまで言うなら、鑑定してみよう。う~ん、胸はシーザリオのほうが少し大きいな。でも、お尻はメサイアのほうが引き締まってる。これは魔法使いと剣士の差だろう。どちらにしても、甲乙つけがたいな。二人とも、とても美しい!!」
俺は遠慮なく、シーザリオの胸を下から持ち上げ、後ろに回り、お尻を突いて、弾力を確かめる。
「ハ、ハヤト様!?」
「あはははっ、冗談だよ!!さっきのお返しだ」
「もうっ!!酷いです!!」
シーザリオは俺の胸に顔をうずめ、何度も体を叩く。
「シーザリオ、君の体が綺麗だと言った事は冗談じゃない。心からそう思った。いつまでも、俺のそばにいて欲しい」
「ハヤト様」
月明かりに照らされた俺とシーザリオは見つめ合い、激しく、情熱的で、どこまでも深い、大人の口づけを交わしたのであった。




