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神の領域の鑑定スキルを得た俺は、関わったすべての人を幸せにするつもりが、なぜか最狂のハーレムを作り上げてしまう  作者: 爆進王


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第171話 派遣のエレオノーラ

「今は比較的過ごしやすいけど、エアディドールの夏とか冬はどうなの?」




「夏はかなり暑いですね。気温も35度を超える日も、一日や二日ではありません。しかし、海からの風があり、王都などの内陸部よりは、比較的過ごしやすいかと思われます。冬は極端に気温が下がり、大雪に見舞われるときもありますが、その期間は一時的で、比較的過ごしやすい気候だと思います」




「そうか。エアコンはあったほうがいいな。ふふふっ、魔法をリンクさせれば、さらに可能性が広がる。イメージが勝手に膨らんで、本当に楽しいな!!」





 興味津々のバリキャリ女子に見守られながら、俺は空調設備を整えていく。





「風魔法と氷魔法、それに火魔法を組み合わせて…ねぇ、夏は蒸し暑くはならないの?」




「夏は乾燥していますが、夏の前後に雨季があり、そのあたりは蒸し暑くなる日もあります」




「そうか…じゃあ、ドライも加えよう」




「今度はなにを作られているのですか?」





 好奇心が抑えられないという顔をして、バリキャリ女子が聞いてくる。子供みたいで、少し可愛らしい。





「ふふふっ、店内の室温を、人が過ごしやすいように最適化する設備だな。あっ、この際、空気清浄機能まで付けといたろっと!!クリーンも付与っと…完成!!」





 いくつかの魔石を建物の柱や天井に取り付けていく。




 火魔法を発動し、手の平に巨大な火の玉を作り出す。見る見るうちに部屋の気温が上昇していく。





「あ、暑い…」





 ハンカチで額の汗を押さえるバリキャリ女子。




 俺は魔法を解除して様子を見る。




 すると…魔石から冷たい風が吹き出してきて、室内の気温が下がる。





「まっ、25度くらい?…かな。こんなもんでいいだろう」




 振り返り、ドヤ顔でバリキャリ女子を見ると『信じられない。素晴らしい!!ハヤト様は天才ですね!!ぜひ、私を雇ってください!!』と、絶賛の言葉を連呼する。





「いやいや…それほどでも…んっ!?………雇ってって…本気か?」




「本気ですとも!!」




「でもなぁ、エアディドール家の家臣を引き抜くのは…」




「あっ、私、エアディドール家の家臣ではありません。父がエアディドール家の家臣の知り合いの知り合いで、なんとか頼み込んで2か月更新の契約で派遣されているだけの一般労働者、普通の庶民の身分なんです。基本、どんなに頑張って仕事をしても、どんなに成果を出しても、残念ながら庶民が直接、エアディドール家の家臣に採用されるという事は、難しい世の中なのです」




「まさかの派遣社員!?」




「少し前から、軍備や兵糧の支出がかさみ、エアディドールの財政は苦しくなってきていると聞かされていて、私の契約も…更新………しないと…言われてしまいました。いつも助かってる。君は優秀だねって言われていたのに…」





 バリキャリ女子は元気なく下を向いた。





「採用!!!!!」




「えっ!?…本当ですか!!」




「あぁ!!本当だ。エレオノーラ」




「な、なぜ…エアディドール家の家臣でもない、ただの派遣である私の名前を?」




「ふふふっ、なぜだろうな?そんな事はどうでもいいじゃないか。君の能力も性格も把握している。試験も面接も無しだ。採用する。しばらくはゼニヤッタの下について、彼女を助けてやってくれないか」




「は、はい。喜んで!!本当に、本当にありがとうございます!!」





 俺はエレオノーラと前世の自分を重ね合わせる。





(いつも助かってる…か)





 胸が締め付けられる思いがしたが、エレオノーラの喜んでいる顔を見ると、俺も自然と笑顔になり、心が穏やかになる。




 しかし…





「ハ、ハ、ハヤトはん!?ウチの、ウチの…ウチのウンチが消えてしもうてんな。においもあらへん!!どこいったんや!!なぁ、ハヤトはん、ウチのウンチ、どこいってしもうたんや!!!!!」





 ゼニヤッタが大慌てでトイレから飛び出してきた。俺の穏やかな気持ちが台無しである。





「………ゼニヤッタ。下品がすぎる!!」




「あっ…すまへんな。堪忍してえな。ついつい興奮してもうてん。せやかてハヤトはん。あのトイレの仕組みは、どうなっとるん?」




「浄化しただけだよ。排泄物は浄化されて、水と一緒に土に戻った。ただそれだけ。臭いのはクリーンの生活魔法で自動的に消臭。っで、使った感想は?」




「やっぱ、ウチの予想通りや!!最高やがな!!もう、ここのトイレしか使われへんよ」




「ふふふっ、そこまで喜んでもらえるなら、作った甲斐もあったというものだよ」





 ゼニヤッタが大げさに腕を広げて喜んでいると、光センサーが反応して、自動ドアが開く。





「うわぁ!?勝手に開いた!!なんやこれっ!?」




「ゼニヤッタがトイレに入っているうちに、勝手に改修をしておいたんだ」




「な、なんやてっ!?この勝手に開くドア。ハヤトはんが作ってくれはったのですか!?」





 目を丸くして、ゼニヤッタは光センサーに手をかざし、ドアを開閉させている。





「大きな荷物を持ったお客さんや、たくさんの荷物を持ったお客さんも、自分でドアを開閉せずにいいから便利だろ?」




「ほんまでんな。おおきに!!」




「その他にも、店内の空調設備を整えておいた。これで暑い日も寒い日も、店内はいつも快適だ。あと、従業員用の控室に一通りの調理器具を揃えておいた。まあ、外食するのも良し、買ってきてここで食べるのも良し。自分で調理するなら使ってくれ」




「ほんま、致せり尽くせりですわ。いっその事、ウチ、ここで住み込みで働こうかと、真剣に考えますよ」




「いいんじゃないか?二階にも部屋がいくつかあるようだし、快適に過ごせると思う。ただし、ここ、エアディドール領はあくまでも支店。本店はシーザリオ島に置いてもらう事になる」




「…支店。この立派な建物が支店。ホンマに豪商になった気分ですわ」




「まあ、今は本当に気分だけだと思うけど、シーザリオ島の開発資金を稼ぐという目的もある。正真正銘の豪商になってくれないと困る。これは俺からの投資だ。頼むぞ!!」





 俺の言葉を聞いて、ゼニヤッタの顔が引き締まる…が『ウチ一人では…切り盛りできへん』と呟く。





「そう思って、このエレオノーラを雇う事にした」




「ホンマにっ!?」





 丁寧にゼニヤッタに向かってお辞儀をするエレオノーラ。





「優秀だぞ。ただ、商才は期待するな。お金や在庫の管理。あとは書類関係を作らせたらいいと思う。そういうの苦手だろ?」




「そやねん!!お金や在庫の管理はできへん事ないけど、書類関係は本当に面倒やねん!!いつも頭抱えててん!!ホンマ、よろしゅう頼むは、エレオノーラ」




「こちらこそよろしくお願いします。ゼニヤッタ様!!」




「ゼ、ゼニヤッタ様!?様って、がらじゃああらへんよ。やめてぇな!!」





 一瞬で顔が真っ赤に染まるゼニヤッタ。可愛い。





「ふふふっ、じゃあ、ゼニヤッタさん、ですね!!」




「せやな。それでええわ!!」





 二人は笑顔で手を取り合う。上手くやっていけそうだ。





「そやっ!!エレオノーラ、トイレ使ってみてよ。とにかく凄いねん!!なぁ、早よ早よ」




「えっ!?えぇ…と」





 少し恥じらうエレオノーラ。俺のほうをチラ見する。男の前での下ネタ的な話題は得意でないらしい。




 しかし、ゼニヤッタは気にもせず『ムッチャ、気持ちいいねん。出した後、ボタンを押すとクリーンが発動してな、気分もアソコも爽やかになるんや!!病みつきになるで!!」と、まくしたてる。





(もう少し、デリカシーが欲しい気がするが…これはこれで、ゼニヤッタらしいと思うべきなのだろうか…要、審議だな)





 俺はエレオノーラの手を引き、トイレへと向かうゼニヤッタの背中を見つめながら思うのであった。








【FCL エアディドール領への帰り道】




 グランの背中に乗り、アレグリアたちはエアディドール領への道を、のんびりと進んでいる。





「絶世の美女冒険者パーティー、FCL。普通なら雑魚冒険者や盗賊が現れ、私たちを襲おうとして返り討ちに遭う。そんなイベントが起きるんだけど…出てこないわね!!」





 軽口を叩くアレグリア。





「アレグリア、気を緩めないで。冒険者は気を緩めた瞬間に、命を落とす事もあるわ」




「その通りじゃ…。戦でも勝ち確、楽勝なんて思った時に、得てして、手痛い反撃を食らうもの。油断は禁物じゃ」




「つ、つい…ごめんなさい」





 ファレノプシスとグルーヴに苦言を言われ、アレグリアは槍を握り締め、改めて周りを警戒する。





「………とは言え、これだけの実力者が揃っているのじゃ。気を抜くなと言うほうが、無理かもしれぬのう~」




「グルーヴちゃんにそう言われたら、なんだか私も気が抜けて、お腹が空いてきたような気がするわね」




「ウオッカよ。そなた、今の今まで、思いっきり気を抜いて、昼寝をしておったではないか」




「あはははっ、私は目を閉じ、妙な気配がないか、探っていたのよ。それが分からないなんて、グルーヴちゃんもまだまだね!!」




「ふふふっ、…よく言う」





 憎まれ口を叩くウオッカに苦笑するグルーヴ。完全に壁は無くなっている。





「んっ!?グラン、止まって。………なにか音がする。聞こえない?」





 アレグリアが目つきを鋭くして言う。




 全員が意識を集中させる。





「馬の蹄の音じゃな。50騎ほどおる」




「エアディドールの部隊でしょ!?」




「………それは分からぬ」




「でも…エアディドールの部隊じゃないとしたら………どこの?…えっ、待って!!他の貴族の部隊がエアディドール領にいるなんて、通常考えられないんじゃあ…」




「通常はな。ただ…」




「ただ?」




「エアディドールと王家は、折り合いが悪い。最近は特にじゃが…、だからこそ、いつ何時、攻めてこられても対応できるよう、備えを固め、戦の準備をしていたのじゃ。抜かりはない」





 アレグリアとグルーヴの会話を聞いて、ファレノプシスとウオッカにも、緊張が走る。





「どうするの?」




「グランよ、このまま進むがよい」




「は~い!!蹴散らしていい?」




「まあ、待つのじゃ。味方かもしれぬからのう」




「分かった!!」





 グランがスピードを上げる。




 どうやら『暴れられるかも!!』と思っている様子。




 一瞬で謎の部隊に近づき、崖の上から、エアディドール領の方向へと歩を進める、騎馬隊を見下ろす。





「ねぇ!!いい?暴れていい?」





 尻尾をブンブン振り回すグラン。





「……………」





 無言で顔をしかめ、見るからに嫌そうな表情を浮かべるグルーヴ。





「どうしたの?グルーヴちゃん」





 グルーヴの様子を見て、アレグリアが心配をして声をかける。





「………アゼリじゃ。あの旗印は、聖女アゼリの旗印」




『アゼリ様!!』





 本当に苦々しく言葉を絞り出すグルーヴとは対照的に、アレグリアとファレノプシス、それにウオッカが笑顔になり、急に落ち着かなくなる。





「聖女アゼリ様がエアディドール領に!!ヤバイ!!挨拶できる!?」


「どうしよう…全女性が憧れる存在の聖女様が…ここに!!」


「アーキュリー王国と結婚した永遠の処女。聖女アゼリ様!!」





 三人は胸の前で手を組み、旗印がついた神輿を拝み始める。




 そして…





『グルーヴちゃん!!アゼリ様とは知り合いなんでしょ!!紹介して!!』





 グルーヴに詰め寄る三人。目がマジ。




 だが…





「断る!!グラン、このまま、全速力でエアディドール領まで走るのじゃ!!!!!」




『なんでよっ!?私たち庶民の憧れ、聖女様よ!!』




「なにが憧れじゃ!!あ奴は………変態じゃ!!」




『はあぁぁぁ~!?変態!?グルーヴちゃん、なに言ってんのよ!!聖女アゼリ様よ!!』




「なにが聖女なものか!!いいからグラン、早よ行くのじゃ!!詳しい事は後から話す」




「………は~~~い。暴れられなくて、残念」





 少し不貞腐れ気味のグランは、渋々、エアディドール領の方向へ、駆け出していくのであった。

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