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神の領域の鑑定スキルを得た俺は、関わったすべての人を幸せにするつもりが、なぜか最狂のハーレムを作り上げてしまう  作者: 爆進王


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第145話 リスグラシューの覚悟

 心配そうな顔をしてメサイアは自身の母親、グルーヴにポーションを飲ませていく。





「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ」





 ポーションを飲み干すと、すぐに体の変化が現れた。




 青紫色から、さらにどす黒く腫れ上がっていた腕は完全に元に戻り、痛みも引いた。





「……………」





 グルーヴは元に戻った両腕をじっと見つめる。





「グルーヴ様!!」





 ナナが心配そうに名前を呼ぶ。





「にわかには信じられぬ…が、治ったようじゃ…。痛みもなにもない」





 拳を握り締め、グルーヴは完治を確認する。





「それに…体に羽が生えたかのように軽い」





 ナナが持ってきていたイカズチを握り締め一閃………壁際に置いてあった花瓶が、空を切っただけで一刀両断された。




 そして…グルーヴはリスグラシューを睨みつけ、イカズチを向ける。





「小娘、私に向かっての大言。忘れてはおらぬぞ!!」




「……………」





 リスグラシューは無言でグルーヴに背を向け座る。





「お好きなように。私はハヤト様のためなら、いつでも死ぬ覚悟はできております。怒りが収まらぬならお切りください。ただし!!あなたは負けたのです。ハヤト様に抱かれ、子を産むとおっしゃいました。私の代わりに、これからの人生をハヤト様に捧げてください。身も心も………」





 全てを覚悟したかのように、リスグラシューは静かに目を閉じた。




 沈黙が流れる。





「………ふっ、よい覚悟じゃ」





 グルーヴはイカズチを握り直す。





「お母様、考え直して…」





 グルーヴは『ぐわぁぁぁ~!!!!!』と叫び声を上げながら、メサイアの制止を振り切り、イカズチを振り下ろす。





 音もない斬撃が放たれ、壁に大きな傷が現れた。





「ふふふっ、リスグラシューとやら、私の負けのようじゃ。ここで怒りに任せてお前を斬れば、私は自分の負けも認められない愚かな剣士になり下がるじゃろう。リスグラシュー、お前の覚悟、見事である!!」





 リスグラシューはグルーヴに向かって静かに頭を下げるのであった。





「ふふふっ、惚れた男のためにここまでするとはな。メサイア、私もハヤトという男に興味が出てきた。異世界人にしてマリア様の使徒か!!よい男を見つけたものだ」




「お母様、ではっ!!」




「うむっ、ハヤトとの仲、認めようではないか!!」




「ありがとうございます!!」




「ナナ!!今日は宴じゃ!!準備をせい!!」




「は、はい」





 ナナが大慌てで部屋を飛び出していく。





「ふふふっ、ここまでの完敗なら、なにやら清々しくも感じられるわ!!」





 グルーヴはソファーに座り、天井を見上げる。




 そして…





「若い時にハヤトと出会っていれば、私の人生はどうなっていたのか。いや………それは言うまい。ふふふっ、身も心も捧げろ…か、こんなババアの身を捧げられたら、ハヤトも迷惑するだろうに…少しの間、一人にしてくれぬか?」





 そう言って、剣が取れて表情が柔らかくなった瞳から、グルーヴは一筋の涙をこぼす。




 メサイアとリスグラシューは顔を見合わせる。





「お母様、もしよければ…」





 メサイアは美肌ポーションの瓶をテーブルに置き、リスグラシューと共に部屋から出て行ったのであった。





★☆★





「どうなった?」





 俺は部屋に戻ってきたメサイアとリスグラシューに声をかける。





「万事うまく行きました!!ハヤト様との仲、認めてくれるそうです。それと…お母様を救っていただき、ありがとうございました」




「ふふふっ、エアディドール家が後ろ盾となり、シーザリオ島の開発も進むと思われます。これから忙しくなりますよ」





 メサイアは笑顔なのだが、含みのある顔をするリスグラシュー。




 俺は一気に不安になる。





「リスグラシュー、何か隠している事があるんじゃないか?」





 恐る恐る聞く。





「隠し事ですか?………特に何も。強いて言うとするならば………グルーヴ様がハヤト様に身も心も捧げたいと言われておりました」





 淡々と事務的に言った後、リスグラシューはなぜかドヤ顔になる。その顔が可愛いから厄介である。





「ぶうぅぅぅ~!!なにが特に何もだよ!?超特大の隠し事があるじゃないか!!どうしてそんな話が出てくるんだよ!!」




「私に言われましても、分かりかねます。ただ…」




「ただ?」




「ハヤト様がグルーヴ様に勝ってしまった事が原因だと思われます。私には理解できませんが、剣士は自分より強い者に惹かれるものだと思います。あと…」




「あと!?まだなにかあるのか?」




「ハヤト様の子を産みたいと………」




「はっ!?いやいやいや!!メサイアの前でなんて事を言うんだ!!それに俺は既婚者はお断りだぞ!!」





 俺は慌てる。最大限に慌てふためく。





「お母様は幼少の時から、父、私にとっては祖父のジハードから『強い者の子を産め。それがエアディドール家のためになる』と言い聞かされて育ってきたそうです。しかし、まったく自分より強い男と出会えなかった。自身が強すぎますから…。それで、自分に負けなかったお父様を、エアディドールの婿として迎えたのです。今日、初めて自分より強い男に出会い、お母様は衝撃を受け、女としての感情に火が付いたのかもしれません」





 冷静に分析するメサイア。





「シャカール様はどうするんだよ!?許すわけないだろう!!」




「えっ!?お父様は許すのではないですか?」




「はっ!?」




「貴族の世界でも庶民でも、離婚は普通に行われます。どちらかが別れると宣言すれば、それまでです。特に面倒な手続きなどありません。貴族は感情より損得勘定が優先されます。お父様はすでに地位を築かれましたし、愛人たちとよろしくやっています。お母様としてもエアディドール家の跡取りも生まれ、特に障害になるものはありません」




「そんな事を言われても…」





 俺は思わずメサイアとグルーヴ様とベッドの上で戯れる姿を想像する。





(………悪くない。い、いや…控えめに言って………たまらん!!)





 メサイアの言葉を聞いて、俺の頭の中は秒で煩悩にまみれるのであった。








【リスグラシュー視点】




(死ぬかと思いましたが…結果は大成功です!!)





 グルーヴ様の柔らかくなった表情を見て安堵する。





(これでエアディドール家が盾となり、思う存分、シーザリオ島を開発できます。ふふふっ、一刻も早く要塞化して、外敵に備えなければいけませんね。ハヤト様やグルーヴ様はもちろんですが、シーザリオ様やメサイア様、それにFCLの手を煩わさなくても、島を守っていける体制を早期に構築しなくては…)





 私は未来を見据え、笑みが抑えられない。




 島の大規模開発。





(労働者は必要ですが、島民も100人くらいという話。なんとか人数を確保しないと、ままなりませんね。そうだわ!!クロカゲたちに労働者になり得る人材を探し出すようにとの指示を出しておきましょう)





 早速手紙をしたため、天井裏に潜むリバティを呼び寄せる。





「これを…今すぐ族長のところまで届けてください」




「分かりました。ではっ!!」




「お待ちなさい。これを、みんなに…」




「ありがとうございます!!」





 私が大量のちゅーちゅを手渡すと、リバティは微笑み、窓から外へと飛び出していった。





(クロカゲたちがいてくれて、本当に助かります。でも、まだまだです。人材が足りません。なんとか良き人材が見つかる事に期待しましょう)





 窓から身軽に城の屋根の上を駆けていくリバティの背中を見送る。




 だが…





(島が発展し、その噂が国内外に広まると、海洋国家タイダリアが動き出す心配があります。特に女王のアーバンシーはシーザリオ島に興味を持つ事でしょう。それまでに、なんとか防衛体制を築かなければなりません。やる事が尽きませんね!!)





 問題が一つ解決に向かえば、新たな問題が浮かび上がる。




 私はまだ見ぬ女王、アーバンシーの姿を思うのでした。

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