番外編 変態聖女アゼリ
【シーザリオ視点】
視察の報告を行うために、王城の一室に来ていた。その部屋には、宰相や内政を司る大臣、それに徴税官僚が揃って座っている。
淡々と資料を読み報告する。
「うむっ…不正はないようだな。ご苦労」
私は『リーズを治めている貴族は、あんたの子飼いでしょ?例え不正が見つかったとしても、握り潰すくせに…』と思う。
ため息を付きながら部屋を出ると…
「シーザリオちゃん!!」
突然、後ろから声を掛けられ、そのまま抱きしめられた。
(うげっ!?一番会いたくなかった人に出会ってしまった………)
私は抱き着かれたまま、部屋の中に引きずり込まれる。
部屋の中、目の前には、おびただしい色気をまき散らしている美熟女変態聖女アゼリ様がいる。
「もうっ!!シーザリオちゃん!!冷たいんじゃない?私とあなたの仲なのよ。久しぶりに会ったんだもの、口づけくらいしてくれても、バチは当たらないと思うわよ!!」
「アゼリ様、私とあなたは、そんな仲じゃないでしょう?大体、あなたは聖女。国と結婚した永遠の処女のはず。不謹慎な発言はお控えください」
「もうっ!!官僚みたいな事言って!!そんなの建前上の事だって分かってるでしょ?」
「…それでも、民衆は信じています。アゼリ様の事を汚れなき聖女様と…ね。では…」
一礼して去ろうとするが…
「んっ!?んんんっ!!シーザリオちゃん!?その肌、どうしたのよ!!シミ一つなく瑞々しくなっちゃって…とても美味しそう!!」
アゼリ様がそう言いながら、舌なめずりをする。
妖しく舌を動かし迫って来る。
「ち、近寄らないでください!!」
「うふふふっ、照れちゃって!!可愛いわね。今夜、ディナーでもどうかしら?その若返った肌の秘密、ベッドの上で教えてくれる?」
「お断りします。今夜はエアディドール邸で晩餐会に出席します」
「…ハゲ公爵邸で?あぁ…メサイアちゃん関係ね。そんなのドタキャンすればいいじゃない。二人で楽しみましょうよ」
私は『もう…禿げてないけどね』と思うが、面倒な事になりそうなので、なにも言わない。
でも、アゼリ様。なにやらシャカール様に思うところがある様子。ハゲ公爵と言った時、露骨に嫌な顔をした。
「アゼリ様、何度も言いますが、私は同性愛者ではありません」
「私も違うわよ」
「嘘を言わないでください!!」
「本当よ。私は同性愛者ではなく、両性愛者よ」
なぜかドヤ顔で言うアゼリ様。
私の背筋に寒気が走る。
「シーザリオちゃん、よく聞いて。女性だけとか男性だけとか、そんな考え方は差別だと思うの。私は性別など関係なく、一人の人間として、愛する人を愛でたいと思っているのよ」
「……………」
悦に浸り語り出すアゼリ様を、私は顔をしかめながら聞く。
「思い出すわぁ………エアディドール…か。あれはまだ…わたしが20歳半ばの時だったかしら。実は………グルーヴちゃんを狙っていた事があってね」
「なっ!?」
私は思わず体をのけぞらす。
「あの子もあなたと同じで、ぜんぜん誘いに応じてくれなかったわ。照れ屋さんだから…」
(そういう問題じゃないわよ!!)
「何度もアプローチをしたんだけど、結局…シャカールと結ばれちゃった。悔しかったわ…私のグルーヴちゃんを奪われて、シャカールを恨みもした。でもね…その時、ふっと思ったの。大好きなグルーヴちゃんが寝取られる。シャカールに貫かれるグルーヴちゃんのあられもない姿を…。ふふふっ、凄く興奮しちゃった!!胸が高鳴り、体が燃えるように熱くなったの」
(両性愛者の上で寝取られ属性!?ドМの聖女、厄介すぎる)
「ねぇ~、いいじゃない!!今夜、一回だけ!!」
「一回でもあり得ませんから!!それに…私、婚約しましたからっ!!」
「えっ!?わ、わたしに…断りもなく………婚約!?」
「なんでアゼリ様に報告しなきゃならないんですか?関係ないでしょ!!」
「誰よ!!どこの貴族?」
「貴族ではありません。………ポーションを作り、販売したりしています」
「………ポーション売り。そうかっ!!あなたの肌、その男が作ったポーションが原因ね!!あなたほどの女性が、ただのポーションを作るだけの男性に惚れるわけないもの。そうでしょ!!」
「ノーコメントです」
「私も会いたいな。その男性とっ!!」
私の顔を楽しげにのぞき込むアゼリ様。
「お、お断りします!!」
「………あなた、この後、領地に戻る予定よね。私が王に掛け合って帰国の予定、握り潰してもいいのよ」
「そ、そんな…職権乱用よ!!」
私の抗議も上の空。アゼリ様はなにやら考えを巡らしている。
「シーザリオ島に行くには、まずエアディドールの領地に行き、そこから船で…。私も行くわ!!エアディドール領に!!久しぶりに、グルーヴちゃんにも会えるし!!いつ出発するの?」
「と、当分先です。リーズで知り合った者に、王都を見学させないといけないので…」
「ふう~ん…本当かなぁ~。まあ、いいかっ!!私も仕事の調整があるし、出発の日程が決まったら連絡してね。あと…やっぱり、少しだけでも………楽しみましょう」
アゼリ様が舌を艶めかしく動かし、再び迫って来る。
「これ以上、近寄らないでっ!!」
私は水魔法を放ち、アゼリ様の足と腕を拘束する。
アゼリ様がバランスを崩し、四つん這いの体勢になる。
「放しなさい!!聖女アゼリにこんな事して…こんな事…して…。シーザリオちゃん!!もっと強く…拘束してくれないかしら。なんだか、シーザリオちゃんに拘束されているかと思うと………興奮しちゃう!!ねえ、お願い!!こういうプレイ、初めてなの!!もっと、もっと強く拘束してほしいの!!!!!」
「この変態聖女!!いい加減にしろ!!」
「ひいいいいいっ!!!!!」
私が拘束した水魔法を強めると、アゼリ様の意識は吹っ飛んでしまった。
「い、今のうちに!!」
私は大急ぎで部屋から出て、エアディドール邸に戻るのでした。




