第132話 俺…ウオッカ・ヒップ・プレスを食らう
「学ぶ事も大切だけど、今は移動して来たばかりだから、ひと休みしようよ」
「ふふふっ、そうね」
俺はそう言ってソファーにダイブした。
ジュリアはそんな俺を笑顔で見守る。
「私もひと休み!!」
「グランもひと休み!!」
アレグリアとグランが俺の上にダイブしてきた。それを見て、アパパネとブエナが真似をして、さらに上からダイブをする。
「ぐへっ!?助けてくれ!!」
押しつぶされる俺。
何とか顔だけ出ている状態。
特に重たくはないが、大袈裟に言ってみる。
「ウオッカ、野盗との戦いで繰り出したヒッププレス、俺に試してみなよ!!」
「えっ!?………いいの?」
「当たり前だよ。一度ヒッププレスを食らって考察してみたいと思ったんだ。もしかして、思いもしない弱点が見つかるかもしれないからな。さあ、早く!!」
「…ハヤト様がそう言うなら、ウオッカ・ヒップ・プレス!!」
俺の顔面にウオッカがヒッププレスをぶちかましてきた…と言っても、相当手加減を加えたヒッププレスではあったのだが…。
(!?…天国かな?)
俺の顔は柔らかなウオッカのお尻に埋もれる。
『何やってるの!!』
「えへへへっ、仕方が無いじゃない。ハヤト様に言われたんだから!!」
ウオッカはそう言って満面の笑みを浮かべたが『不敬です!!』とリスグラシューに頭をはたかれる。
「いたたたっ!!リスグラシュー、ちょっと酷くない?私はハヤト様のいう事を聞いただけなのに…。でっ、ハヤト様、私が考えた必殺技、ウオッカ・ヒップ・プレスの感想は?」
ウオッカは頭を擦りながら立ち上がり聞いてきた。
「うむっ、柔らかくも張りがあり、俺の顔面を優しく包む込むような最上級の質感。ななかなかのお尻だと思うよ!!」
「わ、私はそのお尻の事じゃなくて…ヒッププレスが必殺技として通用するか聞きたかったんだけど…」
「あぁ…すまん。そうだな…勢いをつけ全体重を乗せてぶちかませば、頭蓋骨が砕けるんじゃないかな。野盗たちも即死してたみたいだし…」
なぜか顔を赤らめながら腰をくねらせているウオッカ。
「欠点を挙げるとすれば…即死しなかった場合かな。ヒッププレスをした後、どうしても無防備になる。そこを反撃されるかもしれない。そうだな…もっとお尻を密着させて鼻と口をふさぐ。そして両足で頭を挟み込み、相手の息を完全に止めて窒息をさせるというのはどうだろう?さあ、ウオッカ。そして俺の顔面にまたがり、お尻を密着させてみろ!!」
「お、お尻をハヤト様の顔に密着させる…」
嬉々として俺は言う…が、ウオッカはさらに腰をくならせている。
「では…遠慮なく」
ウオッカが俺の顔にまたがろうとする…が、全員に羽交い絞めにされる。
「そんな事が許されるわけないでしょう!!」
「ウオッカ…殺す!!」
「うらやまけしからん!!」
「私もヒッププレス、練習しようかな?」
鬼の形相でウオッカに罵声を浴びせるシーザリオとメサイア。二人に加えファレノプシスとリスグラシューも加勢する。
「あなたたちもいつまでハヤト君に抱き着いているの?」
アレグリアとグラン、それにアパパネとブエナもジュリアに首根っこをつかまれ、俺から引きはがされた。
「ハヤトはんたち、いつもそんなプレイしてるん?爽やかに『俺たちは清い関係』なんて言ってはったのに…」
部屋の入り口には、恥ずかしそうにしながらも、ガン見しているゼニヤッタが立ち尽くしていた。
「…そういうプレイ言うな」
「…せやかて、ウチも年頃の女の子なんよ。お尻を好きな人の顔に密着させるなんて………興味あるやん!!」
「興味あるんかいっ!!でも、今はみんな旅で浮かれてるだけ。普段はこんなんじゃないからね」
「そないか?しっかし…ウチの部屋とはエライ違いやな。まるでウチが泊ってる部屋が、屋敷牢に感じるわ!!」
「はははっ、そこはゼニヤッタ、シーザリオ様とメサイヤ様のおかげですよ!!」
俺は冗談めかして言う。
いつの間にか窓の外の景色を眺め、優雅にお茶を飲んでいるシーザリオとメサイアが微笑を浮かべる。
「さすがやな!!二人とも絵になっとるわ!!豪華な部屋にも違和感がない。庶民のウチとはエライ違いやでっ!!」
ゼニヤッタは二人の姿を見て感心をする。
すかさずリスグラシューがお茶を出す。
「おおきに!!ハヤトはん、しばらくこの部屋にいてもええか?細かい仕事の打ち合わせがしたいんや」
「いいよ。ブエナ、こっちにおいで」
「なに?ハヤトお兄ちゃん」
アパパネとじゃれ合って遊んでいたブエナが『ちょこちょこ』と走ってきた。
「さっき言ったようにブエナが作るポーション、半分はゼニヤッタさんに渡してくれ。当然代金はそのままだから心配ない」
「いいよ。あとの半分は今まで通り、ハヤトお兄ちゃんに渡せばいいの?」
「そうだよ」
「分かった!!ゼニヤッタお姉ちゃん。よろしくお願いします」
ブエナがちょこんと頭を下げる。
「ブエナはん、こちらこそ、よろしゅう頼んますわ!!しかし…ウチがシーザリオ様のお墨付きポーションを扱える日がくるなんて…感無量やで!!」
涙ぐむゼニヤッタさん。それほど貴族のお墨付きを取り扱う事は商人にとって重要らしい。しかもシーザリオのお墨付きともなると、それだけで超一流商人の証になという。
「ハヤトお兄ちゃん、預けた荷物の中に完成したポーションが少しあるから、ゼニヤッタお姉ちゃんに渡しておいてね」
「おおきにね。ブエナちゃん」
「ふふふっ、豪商ゼニヤッタ、よろしく頼むよ」
俺は握手を求める。
「豪商なんて言わんといて!!ウチはまだ何もしてないさかい…」
「あはははっ、分かったよ、ゼニヤッタ」
「えへへへっ、末永く頼んますわ!!」
俺とゼニヤッタとブエナは、ガッチリと握手を交わしたのであった。
【ゼニヤッタ視点】
(…座敷牢かな?)
仲居さんから案内された部屋の中で立ち尽くす。
(まあ…お金もかからんし、ええねんけど…。せやっ!!ポーション販売の打ち合わせ言うて、ハヤトはんたちの部屋に押しかけたろっ!!)
ウチは宿の従業員に見つからんよう気を付けて、VIPエリアへと侵入していく。
ハヤトはんたちの部屋の前まで来た。
(さ、さすがやな。ウチの部屋とはドアから違うわ。…ごめんやでっ!!)
ウチは腰をできる限り下げながらドアを開ける。
しかし…ウチの目に飛び込んできた光景に絶句する。
(……………)
しばらく動けへんかった。
(なにをしてんねん!!この人たちは…。『俺たちは清い関係』と爽やかな顔をして言っとったやろ!?それが宿に着いたとたんにこれかいな!!)
ウチはハヤトはんに群がる彼女たちを見て呆れかえる。
(なんやっ!?ウオッカさん…ハヤトはんの顔面にまたがっとるでっ!!どんなプレイなんや!!)
羞恥心よりはるかに強い好奇心。
ウチは興味津々で、しばらくこのプレイを観察する。
(ハヤトはん…さらにお尻を密着させて窒息させろ言うとるがな…。これは…窒息プレイとでも言うんかいな!?ウチには未知の世界やでぇ!!世の中にはこんな世界があるんやな…)
ウチは目の前で繰り広げられている未知の世界を目の当たりにして、ただただ立ち尽くしてしまうのでした。




