第124話 殲滅
ストームたちが必死に商人と思われる女性を守りながら防戦しているが、野盗の数が多すぎて分が悪い。もともと戦闘力はそんなに高くない上に、他人を守りながらの戦闘なのでジリジリと押されている。
「ぐあああっ!!」
突然、後方の野盗が叫び声を上げる。
「どうした!!な、なんだこいつは!?」
宙を舞い、目の前に颯爽と登場したグランとアレグリアに野盗は驚く。
「ア、アレグリア殿!!えっ!?そんなデカい狼いましたっけ?」
ストームたちは援軍の登場に『ホッ』としながらも、戸惑いを隠せない。
「ふふふっ、この子はグラン!!えっと、私の…相棒!!行くわよ、グラン!!」
グランが正面から野盗の集団を突っ切ていく。
案の定、野盗はパニックを起こしている。
「この女、いきなり出てきやがって…捕まえろ!!なかなかの美形だ。こいつも俺たちで犯した後、売り飛ばせばいい金になる!!」
混乱した中で野盗のリーダーと思われる男が叫び、アレグリアに向かって剣を向けた。
「ふんっ、下衆が!!」
アレグリアがゴミを見るような目つきして呟き、愛槍で剣を軽く弾く。
「キイーーーン」
耳をつんざくような高い音が鳴り響いたと思うと『ギャアアアーーー、う、腕が、腕がぁぁぁ~!!』と、野盗の叫び声が響き渡る。
「はっ!?あんた、どうしたのよ?軽く弾いただけなのに…」
野盗の指先から肩にかけてガチガチに凍り付いているのを見て、アレグリアは驚愕する。
「テメーがやったんだろうが!!」
「………やっぱり!!グランね、グランのおかげで、私の氷属性の能力が引き上げられたんだわ。間違いない!!」
グランが盗賊の凍った腕に尻尾を当てる。
すると…
凍り付いた腕が『パリンッ』と音を立て、粉々に砕けた。
「ぎゃあああ~、腕が腕が!?い、痛くない?」
「ふふふっ、あんたの腕は完全に壊死していたみたい。だから痛みを感じない」
アレグリアはグランの背中から野盗を見下げて言った。
これを見て散り散りに逃げ出す野盗たち。
「お、お前ら逃げるんじゃねぇ!?」
『う、うわあぁぁぁ~!!』
パニックを起こし散り散りに逃げ出す野盗を、ファレノプシスとウオッカが始末していく。
ファレノプシスは槍で、ウオッカは盾を手に体当たりをして仕留めていた。
「も、もう勘弁してくれ、悪かった。降参する。俺たちは好きで野盗になったわけじゃないんだ。生活が苦しくて仕方なく…子供、そうだ!!子供のためなんだ。俺が帰らないと子供が食い物も無く餓死してしまう。頼む、命だけは見逃してくれ」
「………子供」
アレグリアは呟き、野盗のリーダーから目を離し周りの状況を確認する。
野盗は『ニヤリッ』とほくそ笑み『スッ』と懐に片腕を忍ばせる。
そして『甘いんだよ!!』と叫びながら飛び上がり、短刀をアレグリアに向けて振りかざした。
「………どっちが?」
冷めきった目つきでアレグリアは高速の三段突きを繰り出し、野盗のリーダーの体を串刺しにする。
「ぐはぁっ」
喉元に突き刺さった槍の周囲から体が凍り付いていき、やがて全身が凍り付く。
アレグリアが槍を払うと、野盗の体は地面に叩きつけられ砕け散った。
「グラン、行くわよ」
「承知!!」
アレグリアとグランは、ファレノプシスとウオッカの間をすり抜けて逃げる野盗を追いかけ、一人ひとり始末していった。
「ふう~、これでおしまいね!!」
最後の一人を追い詰めるアレグリア。
「待って。私にもやらせてよ!!」
「グラン。ハヤトから手を出すなって言われたでしょ?」
「く~ん…グランのお願いだよ」
「そんな甘えた声を出して…許しちゃう!!」
「ありがとう、アレグリア。そ・れ・に、手は出さないよ。よ~し!!」
グランが後ろ足で野盗を思いっきり蹴っ飛ばす。
「確かに手は出してないわね!!あぁ…見なくなっちゃった。まあ、間違いなく死んでるわね。終了ね。みんな、野盗は全滅したわ!!」
アレグリアは槍を天に向かって突き上げ、勝ち鬨を上げたのだった。
【ウオッカ視点】
(グランの背に乗り、アレグリアが派手に暴れているわね。私も活躍しないと…)
私はグランと共に派手な立ち回りをしているアレグリアを見て、少し焦りのような感情を覚えた。
「ウオッカ、あなたは盾役、派手さは必要ないわよ」
「…確かにそうね。私には私の役割がある」
私の心を見透かしたかのようにファレノプシスが言った。
「今回の相手はあなたが前線に立ち攻撃を受ける必要はない。単体でもさほど強くはない相手だし、戦術もない。私たちはただ、一人ずつ必殺していけばいい」
「…了解だよ、リーダー。でも…試したい事があるの」
「試したい事?」
「そう、私のこの大きな体を生かした技を考えたの」
「技?体当たりだけでも充分じゃあ…」
私は野盗に体当たりをして吹っ飛ばす。
野盗はうめき声をあげながら倒れている。
「見ててよ、リーダー!!」
「何をする…えっ!?」
私はファレノプシスにウインクをして、倒れ込んでいる野盗に向かって走り出す。
そして…
「ウオッカ・ヒップ・プレス!!!!!」
大きくジャンプをし、野盗の後頭部をめがけて、ヒッププレスをぶちかました。
野盗の顔面が地中に埋まり『ピクリッ』とも動かない。
私は得意げにファレノプシスに向かってサムズアップをする。
野盗を串刺しにしながら、ファレノプシスは苦笑いをしている。
「ふふふっ、どんどん行くよ!!」
私は逃げ惑う野盗たちに体当たりをくらわしながら、ヒッププレスをぶちかましていく。
野盗を駆除して一息を付く。
『ウオッカさん、凄い技ね!!』
戦いを終えて帰ってきたアレグリアとグランが目を輝かしている。
「ふふふっ、そう思う?でも、あなたたちのが凄かったわよ!!」
「えへへへっ、頑張りました!!」
「グランも楽しかった!!」
私はアレグリアとグータッチを交わし、グランの首筋を撫でる。
「ふふふっ、みんな、初めての本格的な戦闘でよく戦った。私からは何もいう事はないわ」
ファレノプシスが槍を掲げ、刃こぼれが無いか確認しながら言った。
『任務完了!!』
私とファレノプシス、それにアレグリアとグランは抱き合い、お互いの健闘をたたえ合ったのでした。




