第123話 相棒
「ジュリア、アパパネとブエナを頼む」
野盗と聞いて不安そうにしている二人を、ジュリアが優しく抱きしめる。
「大丈夫よ、TCLは強いんだから!!」
アレグリアが一瞬だけ目つきを緩め、アパパネとブエナを見る。
「…アレグリア、無理だけはしないでね」
「お母さん、冒険者は危険と隣り合わせだけど、今の私は一人じゃない。信頼できる仲間がいるわ。心配しないで!!」
再び目つきを鋭くするアレグリアは愛槍を握り締め、馬車から飛び出していった。
「ふふふっ、アレグリア、気合が入ってますね」
「そうね。一応、私たちも馬車から出て、TCLの戦いぶりを見守るとしましょうか」
メサイアとシーザリオも馬車から降りる。
「まあ、今のTCLが負けるとは思えないが…一応、俺も馬車から降りて、戦いを見守ろう。ジュリア、二人を頼むよ」
ジュリアは黙って頷くが、アレグリアの事が心配なのだろう。不安そうな顔は隠せないようだった。
「どうしたの?」
グランが『キョトン』とした顔で聞いてきた。
「野盗が出たんだよ」
「野盗?」
「あぁ、悪い人間の集団だな。アレグリアたちが、その悪い人間たちを倒しに行くんだ」
「倒しに…むむむっ、戦闘になる!!私も行く!!」
「グラン?」
「なんかむっちゃ暴れたい気分なの!!」
「………ダメだよ」
「グランのお願いだよ、ご主人様ぁ~」
グランが耳元で甘くささやき、俺の唇を舐める。
(なっ!?グラン、色仕掛けか!!)
俺の胸の中で上目遣いをして見つめるグランが可愛すぎる。
一瞬で骨抜きにされる。
(くそぉ~、グランが小悪魔系フェンリルだったなんて…嫌いじゃない!!)
俺はグランに『グランは強いから手出しはしてはダメだよ。TCLのサポートだけだったら許可する。どうだ、約束できる?』と聞く。
「サポートだけか…分かった。背中にアレグリアを乗せて戦ってもらう。私はアレグリアの足になるよ」
「アレグリアを背に乗せるか…同じ氷属性ならアレグリアにも相乗効果が生まれるかもしれないな。よし、グラン。アレグリアをサポートしてやってくれ!!」
「承知です!!」
グランを抱えながら馬車から降りるが、グランは俺の腕からすり抜け、体を元の大きさに戻す。
「アレグリア、乗って!!」
「グラン!?」
ファレノプシスとウオッカと並び、今にも『突っ込むぞ!!』という体勢のアレグリアに向かってグランが叫んだ。
「ふふふっ、それはおもしろい!!アレグリア、あなたがグランに乗って駆けまわり、野盗たちを混乱させなさい。混乱した野盗が散り散りになったところを、私とウオッカで個別に始末していくわ」
ファレノプシスが一瞬で戦略を考えて、冷静にアレグリアに指示を出した。
「………いいわ。グラン、行くわよ!!」
アレグリアがグランに飛び乗ると、地を這うような低い体勢で爆走していく。
「初めての戦闘が対人間となりますが、ウオッカは大丈夫ですか?」
「リーダー、心配しなくてもいいよ。野盗なんかに手加減するほどの優しさは持ち合わせてないよ。思いっきり叩きのめす」
「ふふふっ、ウオッカ、その顔を見て安心しました。でも、これだけは覚えておいて。妙に同情などして手加減をしたら、殺られるのは自分だという事を」
「…あぁ、分かってる。弱い人間を見つけると、とことん追い詰める…そんな人間を嫌というほど見てきたからね。私も最近まで…だから、そういう人間には容赦はしないわよ」
ファレノプシスとウオッカが先行するアレグリアとグランを追いかける。
「ハヤト様!!グランは不味いでしょ!!グランは!!」
「あわわわっ、グランが大暴れしたら、とんでもない事に!!」
シーザリオとメサイアの顔が青くなる。
「大丈夫だよ。グランには『アレグリアを助けるだけだよ』と言っておいたからな。ここは街の中でもないし心配するほどじゃない………と思う?」
「最後がなぜ、疑問形なのですか?」
「そこが恐いんですが…」
シーザリオとメサイアは心配そうな顔をして、TCLの後姿を見つめるのであった。
【グランとアレグリア】
「アレグリア、乗って!!」
「グラン!?」
アレグリアはグランの言葉を聞いて一瞬驚いたが、すぐにグランの背中に飛び乗り駆け出していく。
「アレグリア、ご主人様から手を出しちゃいけないって言われてるから、私はあなたの足になるだけ。あなたの戦いやすいように指示を出して」
「分かったわ。まずは野盗を混乱させる。このまま野盗の中に突っ込んで行くわよ!!」
「承知だよ!!」
グランは体勢を低くして突っ走る。
アレグリアも空気抵抗を抑えるために、グランの背中に張り付くように身をかがめる。
「アレグリア、大丈夫?」
「ふふふっ、心配無用よ!!」
グランとアレグリアは、まるで同化したように疾走していく。
「クロカゲたちが馬車を守りながら戦っているのが見える?」
「あの猫耳さんたちね」
「そう、あの人たちは味方だから、傷つけちゃ駄目よ」
「分かった!!」
グランとアレグリアは馬車を襲う野盗の群れのすぐ後方まで接近していた。
「な、なんか来るぞ!!」
「ぐあっ!?」
野盗がグランとアレグリアに気づくが、グランは気にせず突っ込んで行く。
なすすべなく、野盗が宙に舞っていく。
「グ、グラン!?」
「アレグリア、私は何もしてないよ。ただ真っ直ぐ走っているだけだから!!」
「ふふふっ、そうね!!グランは手を出しちゃいけないんだから、ただ走っているだけね。でも…私も負けていられないわ!!」
アレグリアは側面から襲ってくる野盗を槍で薙ぎ払うと、一瞬で野盗の体が凍り付いた。
「………なんか、氷属性が強化されてる!?」
驚くアレグリア。
凍り付いた盗賊をグランが尻尾ではたく。
すると『パリンッ』と音がして、凍り付いていた野盗が粉々に砕け散った。
混乱する野盗たち。
一瞬で敵わないと悟り、逃げ出す者もいる。
「そうか!!グランも氷属性だったわね」
「そうよ。私とアレグリアの相性は最高だと思うわ!!」
「グラン、私の相棒になってくれない?」
「相棒、いいの?私で…」
「いいに決まってるじゃない!!」
「嬉しい!!よろしくね、アレグリア」
「こちらこそよろしく!!じゃあ、行きますか!!」
「承知だよ!!」
グランとアレグリアは馬車の前まで大きくジャンプして、野盗と対峙したのであった。




