第115話 一人寂しく温泉へ…
俺たちは、ストームさんたち黒影猫族のみんなに負担がかからないように、のんびりと馬車に揺られて、王都への道を進む。
そしてついに、シーザリオが教えてくれた秘湯に近づいてきた。
「ハヤト様、今日は温泉の近くで一泊します。のんびりと旅の疲れを癒しましょう」
「お、おうっ!!」
俺は『ついに、ついに待ちわびた温泉………混浴!!』と、期待に胸を膨らませる。
「リバティたちもいるから、大人数で楽しそう!!」
「!?」
俺はアレグリアの言葉を聞いて愕然とする。
(あぁ…忘れてた。黒影猫族のみんながいるんだった。ストームさんの奥さんたちもいるし、混浴は無理か………)
俺のテンションはガタ落ちになる。
「ハヤト、どうしたの?あんなに温泉に入りたいって言ってたのに………」
「いや、なんでもない」
俺は『ストームさんたち、黒影猫族の男たちと温泉に浸かり、親交を深める事も大切!!』と、無理やり自分を納得させる。
「黒影猫族は川に入って水に濡れるのを嫌がっていたし、温泉に入らないんじゃないかな?」
「あっ!?確かに…凄く嫌がってた気がする!!」
シーザリオの言葉にアレグリアが反応する。
当然、俺も即座に反応する。
「嫌がる人たちを、無理やり温泉に入れる事はしてはいけない。温泉には俺たちだけで入る事にしよう」
「そうですね。無理やりは良くありません」
メサイアも俺の意見に賛同する。
「そっかあ~、文化の違いっていうの?仕方ないわね。大人数で楽しそうだけど、諦めるわ」
アレグリアが残念そうに言う。
「ふふふっ、アレグリア。温泉は大人数ではしゃいで楽しむものではなく、のんびりと静かにお湯に浸かって、疲れを取ったり、精神的にリラックスをするものなのよ」
「確かにその通り。ジュリア、分かってるね!!静かにお湯に浸かり、じんわりと温泉の成分が体の中に浸透する。そして体の中の余計なものが排出され、心と体がリフレッシュする。これが温泉の効果なんだよ。たまらんなぁ~!!」
「………ハヤト、ジジくさい」
俺は『確かにジジくさいな。いい加減、前世の事は忘れないとな』と、苦笑いをする。
そうしているうちに『さあ、着きましたよ』と、シーザリオが言った。
「着いたか!!やっほ~う!!」
「なに!?結局、ハヤトが一番浮かれてるじゃない!!」
俺はアレグリアの言葉を無視し、真っ先に馬車から飛び出したのだった。
馬車から飛び出すと、そこは単なる雑木林で、温泉などは見当たらない。
「はははっ、ハヤト様。一見何もないように見えますが、温泉はここから少し歩いたところにあります」
シーザリオが後ろから声をかける。
「ストームさんたちも温泉に入りますか?」
「私たちは体を濡らしたくは無いので、申し訳ありませんが遠慮します。馬車が襲われないように見張っていますから、のんびりと温泉で休んできてください」
「そうですか!!無理強いはしませんよ!!申し訳ありませんが、そうさせてもらうね。ありがとう」
俺たちは黒影猫族のみんなに手を振って、獣道を通って雑木林の中へと進んでいく。しばらく歩くと、ごつごつした岩が目立ち始める。さらに歩いて行くと大きな岩が転がっており、湯気が立ち上るのが見えてきた。
(やった!!大自然の中、美女たちとの混浴!!最高や!!)
俺はウキウキした気持ちを無理やり抑え込み平常心を装うが、すでに旅の疲れなど忘れ、いろんなところが元気いっぱいになっていた。
「ハヤト様」
「は、はい!!」
メサイアが俺に声をかけてきた。
俺は『混浴になりますが、恥ずかしいのであまりジロジロ見ないでくださいね』と、顔を赤らめ言われるのかと思いきや…『ハヤト様、男風呂はここからもう少し歩いたところにありますので、よろしくお願いします』と無情な言葉を投げかけられた。
「お、おうっ………」
俺は呆然として言葉を絞り出し、アレグリアのほうを見る。
アレグリアは俺からの視線に気づき『大丈夫よ。ハヤトにはバリアがあるから、魔物が出ても心配ないわよ!!』と笑顔で言った。
俺はがっくりと肩を落とし、脇道を一人で歩いて行く。
「別に本当に混浴できるとは思わなかったよ。でも…嘘でも『ハヤト、一緒に入ろうよ!!』とか、『ハヤト様、お背中をお流しいたしますので、私の体も洗っていただけますか?』とか言ってくれてもいいんじゃないか?それで俺が『俺たちはまだ結婚していないんだから、そんな事はできないよ』と断って、『もう、ハヤトは堅いんだから!!』とかのやり取りくらいあってもいいだろうに………」
俺は一人ボヤキながら、林の中を進んでいく。
巨大な岩が見え、湯気が立ち上っている。
俺は駆け出し大きく飛び上がる。一瞬で全裸になり岩の上で仁王立ちになる。
沈みゆく太陽の光を全身で受け止めて気持ちを切り替える。
心地よい風が吹き抜け、俺の下半身を『ぶらぶら』と揺らす。立ちのぼる湯気が風に流されていくと、そこには巨大な狼らしき獣が、俺を睨みつけていたのだった。
【アレグリア視点】
「うわっ!?ウオッカさん、超胸大きい!!」
隣で服を脱いでいるウオッカさんの胸を見て、私は思わず大きな声を出してしまう。
「アレグリア、そんなに近くで見つめないでよ。恥ずかしいじゃないか。それに、私は体が大きいから自然と胸も大きいだけで、別に特別大きいわけじゃ…」
「いやいやいや!!大きいよ。形もきれいだし乳首も可愛い!!」
「だから、そんな事、大きな声で言わないでって!!」
ウオッカさんは大きな体をタオルで隠し、逃げるように湯船に向かう。
私は自分の胸を見てため息を付く。
最近成長してきてはいるが、まだサイズが80㎝にも満たない。
口を尖らせながら胸を下から持ち上げていると『アレグリアさん、胸が小さくても気にする事はありません。世の中には巨乳よりちっぱいが好きという男性もいると聞きます』と、リスグラシューから慰められる。
「リスグラシュー、あなたの胸は私よりも小さいじゃない。なぜ、上から目線なのよ!?」
「私の母はかなりの大きさでしたから、いずれ私の胸も…」
リスグラシューがそう言って、小ぶりの胸を愛おしそうに見つめている。
「それを言うなら…見なさい。あれをっ!!」
私は全裸でアパパネとブエナの世話をしているお母さんを指さす。
「!?………あ、あれっ?お、お母さん、30歳後半にもなると胸が垂れ気味になるって言ってたのに…張りが増して…重力に逆らってる!!なんでっ!?」
「うふふふっ、これもハヤト君の美肌ポーションの効果の一つだと思うわ。私もびっくりするくらい張りが戻って上向きに…」
お母さんが自慢げに、娘の私に巨乳を見せつける。
「………良かったわね」
私が無表情で言うと『あなたもすぐに大きくなるわよ。でも、あなたの場合、あまり大きくなりすぎると動きずらくなって、かえって困ってしまうかもしれないわよ」と返してきた。
「…確かに。メサイア様!!胸が大きくて困る事、ありますか?」
「全くありません。たいして大きくもないからね!!」
なぜかシーザリオ様が答える。
「わ、わたしは日々稽古を重ね鍛えているから…脂肪を燃焼してしまうんです。本来ならもう少し大きくても…。大体、シーザリオだってあまり変わらないじゃないですか!!」
「まあ、確かに私たちの胸の大きさは並み、と言わざるを得ないですね。でも、メサイア。ハヤト様の美肌ポーションを飲んでから、乳首の色が薄紅色に変化したと思いませんか?」
「それは実感しています。黒みがかった赤色だったというのに、今はこんなに綺麗な薄紅色をしています」
私の前でシーザリオ様とメサイア様、それにファレノプシスさんの20代前半の三人が、乳首自慢を始めだした。
「私は元からピンク色だよ!!アパパネちゃん、温泉に入ろう!!」
ブエナとアパパネが手を繋いで温泉へ入っていった。
「アレグリア、あなたの持ち味はスピードを生かした速攻。あまり大きくなりすぎるとスピードが落ちる可能性があります。ほどほどに大きいくらいがいいと思うわよ」
「少し複雑な気持ちですが…そう思います」
私は無理やり納得をする。
「でも…ハヤト君は胸よりお尻が好きなんじゃないかしら…」
『!?』
お母さんの一言に全員が反応する。
「ハヤト君の視線が、みんなのお尻に向かっている気がする事が多いのよね。これは私の勘なんだけど…間違いないと思うわ!!」
みんなが一斉に自分のお尻を確認する。
当然私も…。
「ヤ、ヤバイ!!最近、稽古ばかりしていて、以前よりも一回り、いえ、二回りも大きくなってるわ!!」
「それは仕方が無いわよ」
「でも。シーザリオ様は小尻じゃないですか?」
「私は魔法使いで、あまり鍛えて筋肉を付けるような事はしていないから…。でも、お尻も胸と同じで、大きいお尻が好きか、小さいお尻が好きかは分からないわよ。どっちも好きという場合も考えられるし…」
「う~ん。ハヤトはどっちだろう?」
『気になるわね!!』
私たちはこんな会話を楽しみながら、みんなで温泉に向かうのでした。




