第106話 盗賊は皆殺しにすべし!!
王都へ出発する。
「ブロディさん、改修工事、よろしくお願いします」
「おうっ!!任せておけ。ハヤト、わしからの依頼も忘れるんじゃないぞ」
「任せてください!!」
なぜか、アレグリアが元気よく答える。
御者はウオッカが務めてくれる。商会でこき使われていた頃に、やらされていたという話。
「ここで役に立つとは思いませんでした」
そう言って、快く引き受けてくれた。
「じゃあ、護衛という役割もあるので、私とアレグリアが交代でウオッカさんの横に座ろう」
「リーダー、了解であります!!」
アレグリアが少しコミカルに敬礼をする。初の依頼という事で、テンションが上がっている様だった。まだまだ子供である。
俺たちはブロディさんに頭を下げ、馬車に乗り込む。
ゆっくりと馬車が動き出す。好奇心が強いほうでは無いが、異世界という未知の世界での旅という事で、さすがに俺のテンションも上がってきた。
(この世界に転移してきて以来、アーキュリー王国の地方都市リーズ以外の土地の事を俺は知らない。王都の規模は?王都に着くまでの町や村はどうなっている?シーザリオたちに話を聞いてはいるが、一度、この目で確かめてみたいと思う。それに…魔物や魔獣にも興味がある。戦いたいわけではないが、恐いもの見たさというか、一度は見てみたいと思う。今回は心強い護衛がいるから、危険も無さそうだし…)
俺はそんな事を考えながら、窓の外を眺める。
ふっと気づくと、リーズの街の人達が、俺たちの乗っている馬車を避けているような感じがした。
気になってメサイアに聞いてみると…
「この馬車にはエアディドール家の家紋が描かれています。黒塗りで威圧感もありますから、近寄りがたい雰囲気がありますね。そんなつもりは無いのですが…」
メサイアは苦笑しながら答える。
「おそらく普通の人達は、エアディドール家の馬車を止めたら、切り捨てられるとでも思っているんじゃないの?」
シーザリオがメサイアを茶化す。
思い当たる節があるのだろうか、メサイアがそれを聞いて顔をしかめる。
「一応、公爵家ですし、武闘派でもありますから…。でも、お母様は領民に対して威圧的な態度を取ったり、理不尽な事をしたりはしない………と、思います。ですが、他の貴族が前を横切った時などは…」
「よ、横切った時などは!?」
「……………」
俺の質問に対して、メサイアは無言になった。
「後には無残に破壊された馬車が残るだけ…」
シーザリオがポツリっと呟いた。
その話を聞いて、庶民のジュリアやアパパネ、ブエナなどはドン引きしている。
「私もグルーヴ様の噂を聞いた事はありますが………納得です!!」
リスグラシューはそう言って深く頷いていた。
「でしょう?もしリスグラシュー、あなたを追放した実家、アングラード家がエアディドール家の馬車の前を横切ったとしたら…分かるな?」
「はい、戦争ですね」
「戦争にはならない。なぜなら、一方的にボコられるだけだからだ」
「………そうですね」
リスグラシューは何とも複雑な顔をする。
「あと、王都に着くまで一、二回は盗賊に襲われる事でしょう」
「えっ!?それは確定してるのか?」
「はい」
「エアディドール家の家紋が付いていてもか?」
「付いているから襲われると思ってもらって構いません。基本、盗賊など頭が悪いですから、目先の事にしか頭が回らないのですよ」
「捕らえるとなると、面倒だな…」
「心配はありません。全員、皆殺しにしますから!!」
メサイアが『シレッ』と、恐ろしい事を言う。
「皆殺し!?」
「はい。何か?」
「大丈夫なのか?」
「盗賊など、所詮は烏合の衆。私たちが五人もいれば、アリを踏み潰すように蹂躙して見せますよ!!」
「俺は戦力の心配をしてるわけではないのだが…」
「捕らえてもいいのですが、基本奴らは街から離れたところで襲ってきます。盗賊たちを捕らえた状態での移動となると、面倒ではないですか。あっ!?一応、お尋ね者なら首だけ持っていけば、報奨金はもらえるとは思います」
「…首だけ。それは止めておこう」
「ハヤト様、盗賊は虫けらのように人を殺し、女を犯します。命乞いされて逃がしても、別の土地に移動して、同じように人を殺し女を犯し、金目の物を奪うだけです。一人残らず根絶やしにするのが一番なのです」
メサイアが『皆殺しは当たり前!!』という顔をして爽やかに言うと、シーザリオもサムズアップで答える。ファレノプシスも頷いているが、アレグリアはやや緊張した顔つきになっていた。
(まあ、この世界にはこの世界の価値観がある。俺も早く慣れる必要があるな。それにしても人の命が軽いんだよな。まあ、盗賊には同情はしないけどね)
そんな会話をしているうちに、馬車はリーズの城門を通過して城外に出る。
俺は話を聞いて、テンションがだだ下がりになる。
しかし、気持ちを切り替え、初めての王都への旅へと出発するのであった。
【アレグリア視点】
(盗賊………皆殺し…)
私はメサイア様の言葉を聞いて、自然に槍を握り締める力が強くなる。覚悟はしているつもりだが、実際に人を殺した事はない。いくら盗賊とはいえ、平然と殺せるとは思わない。
お母さんやアパパネ、ブエナの顔を見る。
(私がやらなければ、大切な人が殺される。それだけは許せない。許せるわけが無い!!私は………すべてを背負って生きていく)
私は自分に言い聞かせ、気合を入れる。
「どうしたの?そんな怖い顔をして…」
お母さんが心配そうな顔をして私を見た。
「お母さん、安心して!!盗賊に襲われても、私が守ってあげるからね!!」
「…アレグリア。まだまだ子供っぽいところもあるけれど、成長しているのね。お母さん、とても嬉しいわ」
お母さんは、私の言葉に優し気な笑顔を見せて言った。
しかし…
「大丈夫よ!!盗賊が現れたら、シーザリオ様かメサイア様の後ろに隠れるから、アレグリアは心配しないで。ねっ、アパパネ!!」
「はい、ジュリアさん!!」
「…ちょっと!!私を頼ってよ!!」
私はお母さんに文句を言う…が…
「アレグリア、あなたはついこの前まで、薬草集めとかの依頼しか受けてこなかったでしょ…。それが今回、いきなり護衛の仕事なんて…お母さん……心配なのよ…。今回は自分の事だけを考えて戦いなさい。足手まといには、なりたくないのよ」
「…お母さん」
私はお母さんの言葉に何も言い返せなかった。
「娘を思う母親の気持ち…。私は幼い時に母親を亡くした。アレグリア、私はあなたが羨ましい。正直、実戦と稽古では全く違う。今回はジュリアさんの事は私に任せなさい」
シーザリオ様が諭すように言ってくれた。
「分かりました。お母さんをお願いします!!」
私は少しだけ悔しい思いがあったが、素直にシーザリオ様にお礼を言い、頭を下げるのであった。




