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祐季は目の前の、腕を組んで傲慢ともいえる態度で、自分を見下している慎一郎に
ひるみそうになりながらも、どう説明すべきか、何から話すべきか、決められずに思わずうつむく。
「君はだれだ?」
グイッと顎をわしづかみに持ち上げられ、今日、何度も繰り返されている質問に、
慎一郎の視線を外す事ができない。
掴まれた指からも彼の怒りが伝わってくる。
「痛い!離して。説明するから、離して下さい」
「これでも、穏やかにお願いしているつもりなんだが・・・」
慎一郎は平然と顎からゆつくりと指を滑らし手を離した。
「・・・・・」
「俺の貴重な時間を君が無駄にしていると、分かっているのか?
そして、信じ切っている人を騙しているという罪の意識はあるのか?」
祐季は目をはっと見開いたあと大きく深呼吸して、できるだけ震えないように話す。
「ごめんなさい。・・・・私・・・・・佐伯祐希です」
「佐伯?というと。。。」
「えぇ、由紀子の従姉妹です」
慎一郎は、一瞬頭をめぐらし、問いかけた。
「由紀子と一緒に住んでいる本好きで引っ込み思案の?」
何かを思いだそうとするように慎一郎は目を細めている。
祐季は、ため息をぐっと押しとどめた。
由紀子が、自分の事をそんな風に言っている事は知っていた。
地味で、暗くて、いつも本ばかり読んでいる引っ込み思案な冴えない従姉妹。
両親が早くに他界したから、一緒住んてあげて面倒を見てあげている可哀そうな従姉妹。
分かっていたが、この男から聞かされると
腹が立つと同時に、なぜだか悔しさがつのる。
「本が好きなのは、確かですが」
「引っ込み思案かどうかは、考えものだな?」
真実だけを肯定するつもりでいたのに、
慎一郎のかぶせるように言う言葉に、今日、何度目かのカチンがきた。
そんな祐季の表情に気付いていただろうに、
どうでもいいといわんばかりで、先を続けるように顎をグイッと促した。
「それで?」
祐季は、あの日のリビングでの由紀子との会話を思い出し、
慎一郎にどのように伝えるか迷っていた。
目の前で、自分を睨んでいる、この男に何と説明しよう・・・・・
できるだけ穏便に済ませたい。
意を決して口を開こうとしたまさにその時、耳に馴染んだ優しい声が聞こえた。
「ユキちゃん!」
慎一郎の背後から手を大きく手を振りながら、笑顔で近寄ってくる浩二が見える。
「浩二さん!」
助かったとばかりに、明るい声を上げた。
一時でもいいから、この苦境から助けてもらえるならとばかりに、祐季は、気づかないまま、大きな明るい声で浩二の名前を呼んだ。
慎一郎は、その祐季の声の中に、浩二とは、ここに来てはじめて会ったはずなのに親密さがふくまれていることを感じ取り、面白くない思いで、ゆっくりと振り向く。
近寄ってくる浩二の足が振り向いた人物に気付き、急に止まった。
「・・・・・慎一郎さん」
「やぁ、久しぶりだな」
「・・・・・本当に・・・お久しぶりです」
このタイミングで・・・・・
思わぬ乱入者に、中々進みませんね・・・・。
すみません。




