唐突な話
「7歳になったらお前は旅立て。」
それはあまりに唐突な話であった。
明日には俺は7歳を迎える。家を全焼させてからもう3年近く経っていた。
「本気なんだね。父さん。」
俺のその問いかけに父さんは静かに頷いた。
そもそもこんな子どもを送り出すことなど普通は絶対にしないことだ。
それでも送り出さなければならない理由でもあるのだろう。
父さんの顔からはそんな苦労や悲しさが見られた。
――ああ、そういうことか。
父親の引き裂かれるような表情を見て、俺はひとつの仮説に行き着いた。
それは前世の俺の死後、世界の構造は急速に崩れて来ているということだ。
となれば本来絶対にしないことであるが強列な魔法を放てる俺を前線へと送りだすことにも辻褄が合う。
「分かったよ。 父さん。 俺は明日旅に出る。」
そう答えた俺の声は、自分でも驚くほどに小さく震えていた。
前世の謎を解くチャンスだなどと割り切れるわけがないだろう。
中身がいくら最強の魔法使いだろうと、俺はこの世界で『セレス』として、7年もの時をこの父と過ごしたのだ。
毎日つきっきりで特訓してくれたあの大きな手の温もりが今になって心を締め付けてくる。
でも今度は俺の番だ。父さんに自分の力を必要とされたんだ。
(…だったら俺が行くしかねえだろ。)
こんな小さい頃から強すぎる魔法を使って怪物と言われた俺を優しく受け入れてくれた家族に恩を返ために。
そして、俺の死因を探るためにも。
俺は込み上げてくる感情を抑えて父さんの目を真っ直ぐに捉えた。
「父さん大丈夫だよ。 俺は強いから。 だから安心してよ。」
「…セレス。 ああ、そうだな。 お前は本当に強い子だ。」
父さんは赤くなった目元をぐっと拭うと、今度はいつもの優しい笑顔に戻った。
「セレス、最後にいいか? お前が規格外の力を秘めているのは分かっている。 だがこれほど小さなわが子を外の世界に出すのは親としてどうしても不安なんだ」
父さんが腰の剣にゆっくりと手をかける。
「俺と一騎打ちをしてくれ。 お前のその強さ、この肌で確かめさせろ。」
どうでしたか?
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