基礎の炎の球魔法だったはず
俺が天井をぶっ飛ばしてから早くも4年が経った。
4年前、急に聞こえて来た声が不快で、頭に残って仕方がない。
外で情報を集め、前世の俺がどうなっているのか探るためにも、早く実力を認められなければならない。
「セリス! 特訓の時間だぞー!」
そう叫んだのは俺の今世での父親だ。そして俺はセリスと名付けられた。女の子みたいな名前だな。
俺は最近騎士団部隊長である父さん直々に特訓をしてもらっている。
まあその内容はすごく基礎的なもので俺にとってはそこまで辛いものではないが。
「今日は父さんが手本を見せてやろう。」
そう言うと父さんの杖に魔力が集中するのが見えた。
――その瞬間、凄まじいスピードで炎の球が飛んでいった。
おおこれはすごいな。炎の球を飛ばす魔法はいくつもあるがここまで洗練されているのはあまりない。
「どうだ? セリス! 父さんの魔法はすごいだろう! お前もいつかできるようになるさ! ハハハ!」
父さんは俺に向かってそうドヤった。そうえば基礎的な炎の球魔法なんて前世使ったことなかったな。
やってみるか。俺は指先に魔力を集中させた。
ズ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ッ ! ! !
あ、出力ミスった。
父さんは失神しかけていた。ほんのちょっと手加減を間違えただけなのになんでそんな震えているんだ。
父さんがガタガタと震える手で後ろを指差している。何があるんだよ。俺は後ろを振り向いた。
――って家燃えてる。
やばいやばい!これは本格的にまずい。
黒煙を上げる屋敷の中から、母さんとメイドが血相を変えて飛び出してきた。
「あなた! 子どもに格好つけたいからってなんてことしてくれるのよ!」
母さんが怒髪天を衝く勢いで父さんに詰め寄った。
父さんは白目をむく勢いで謝っていた。
ちょいちょいちょい、俺がやったのになんで父さんのせいになっているんだ。
これじゃあ俺のために特訓してくれた父さんがあまりにも可哀想だ。
いくら子どもとはいえ家くらいなら簡単に直せる。俺は指先に再び微量の魔力を込めた。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ッ ! ! !
その時大地が激しく激震する。
次の瞬間火に包まれていた家が光に覆われ消し飛んだ家は見たこともないような豪邸に生まれ変わった。
やりすぎた感じはあるが。
「……は?」
さっきまで怒鳴っていた母さんも、メイドも、白目をむいていた父さんも、目の前に出現した謎の超近代的建造物を見上げて、完全に常識のキャパシティを超えてその場に卒倒した。
よし、これで誰も怒られずに済むな。
そういえば前世でもこういう事があったな。
「君は人を救うんだ。どうだ?素敵なことだろ?」
俺はそびえ立つ大豪邸を見ながら、あの時と同じ不快な声を聞いた。
一体この声の正体はなんだろうか。言っていることは素敵なのに何故ここまで不快なのだろうか。
俺の耳に響く声はどこまでも不快なものであった。




