天才魔法使いだったのに何故か赤ん坊になっていた
――何が起きた?
俺は戦場の中心にいたはずだ。
今まで俺は天才魔法使いとして大暴れてしていたはず。
魔王も倒してかわいい姫様に告白されて幸せも絶頂だった。あと一歩でハッピーエンドだったのに。
――だがそこからの記憶がない。
それどころか俺の目が今捉えているのは――ぷにぷにとした赤ん坊の手だ。
いや、待て待て待て。流石に色々混乱している。
一回落ち着いて状況を整理するとしよう。
そもそもこういうことは初めてじゃない。
元々いた地球で一回死んで、この異世界に転生して天才魔法使いになった。
そのときも目が覚めたら赤ん坊になってた。つまり今回のこれって。
俺死んだの!?二段転生とか小説でしか聞いたことねえよ。転生自体も小説でしか見たことないが。
せっかく幸せだったのに。
でもおかしいな。死んだときの記憶が一切ない。
その他の記憶はすべて引き継がれているのにそこの記憶は一切ない。
ん、待てよ。記憶があるのなら喋れるのでは。喋れたら情報も収集できるだろう。
「だあ。んな。んまんま。」
…だめだった。頭の中では言葉がでるのに喉がついてこない。
喋って情報収集する方法は3秒で詰んでしまった。
――ならば別の方法を試してみるか。
魔法ならば言葉が喋れなくても俺の魂にある『魔法回路』はまだなくなっていないはず。
でも赤子の魔力は小さいからな。火花でもでたら上等だろう。
俺は指を天井に向けて『魔法回路』に魔力をほんの少し流して炎魔法を放った。
ズ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ッ !!!
刹那。凄まじい大爆発が起こった。
嘘だろ。花火を散らす程度の本当に少し程度の魔力しか流してなかったぞ。
出力がバグりすぎている。
俺の部屋の天井は跡形もなく吹き飛び、そこからは美しい青空がぽっかり覗いていた。
「ば、ばぶう。」
いや、加減ミスなんてレベルじゃねえぞこれ。
その時、この部屋に向かってドタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「何が起こった!?まさか刺客か!?」
部屋の扉が勢いよく開き、腰に剣を下げた父親らしき男が焦り狂って飛び込んできた。
その後ろには、母親らしき綺麗な女性と、メイド服を着た女性も息を切らせて立っている。
消し飛んだ天井と、ぽっかり覗いた青空。
男は部屋の中に敵がいないことを確認すると驚愕のあまり立ち尽くした。
そしてゆりかごの中で、無邪気にバブバブ言っている俺を、ただ呆然と見つめながら。
「まさか、この子がやったというのか。」
周囲の大人たちは怪物を見るような目で、ゆりかごの中の俺を凝視している。
そのドン引きっぷりを見て、俺はベッドの中でフッと口元を緩めた。
これだけの魔法が使えるなら前世の情報も集められる。何故か逃してしまったハッピーエンドも掴み取れるかもしれない。
「お前のおかげで助かったよ。ありがとう。」
ノイズ混じりに耳に響いた、聞いたこともない声。
それに俺は言葉にできない不快感を覚えた。
どうでしたか?
気に入っていただけたら幸いです




