最期の笑顔
「お前と出会う前、俺はなんの取り柄もなくてただ1人気に食わない奴らをぶっ飛ばしてたんだよ。 未来も見えなかったし何もかもがどうでも良かったんだよ」
ジルンは懐かしむように過去のことを語りだした。
「頭悪くて親がクズで頼れなかった俺は戦うことでしか生きれなかった。 だからお前に負けたとき悔しくて俺の生き様が否定された気がして、絶対に倒してやるって思った」
確かに出会ったときのジルンは今と違って一つも笑わなかったし本当に尖ってたな。だから何度も俺にリベンジを申し込んできたのか。
「でも勝てなかったな。 お前ガキの体になっても強すぎるんだよ」
そう言われると少し照れる。
「当たり前だ。 何回生まれ変わってもぶっ飛ばしてやる」
だから死なないでくれと言いたかった。でも思い出話をしたいという気持ちに俺の気持ち入れるべきじゃない。
「一緒に旅した仲間にクラリエスっていたろ。 旅が終わってお前と別れたあと結婚したんだ。 子どもだっている。 お前が死んだって理由で飛び出しちまったからな、あとで謝りに行ってくれ」
クラリエスはジルンとともに前衛を張っていた女剣士だ。魔王を旅したあと二人で旅を続けると話していたが結婚していたのか。
俺が死んだばかりに他の人のハッピーエンドを潰してしまっていたのか。
俺はジルンの手を握った。
「俺のせいで苦労させた。 すまなかった」
「気にすんな、お前の死で動いたのは俺の独断だ。 お前が謝る必要はない」
これも結局自己満足だ。お前は謝罪なんて望んでないと思う。でも言わないと気がすまない。
ジルンの体が少しづつ冷たくなっていく。
彼自身でもそれが分かっているのかジルンが少し真面目な顔になる。
「取り逃がしちまったが俺を襲ったガキの狙いはルキルだと言った。 しばらくルキルから離れるなよ。 こいつを守れるのはお前しかいない」
ルキルが狙いということに違和感を覚えるとともに俺は自分の過去の行いを深く悔いた。
ジルンを殺せるガキなんて俺と教会を襲ったガキ以外に存在しない。
俺の考えの甘さ、自滅を作戦だと捉えなかった俺の考えの甘さが大切な仲間を失うことにつながった。
「まぁいい。 ルキル、俺のナイフをやる。 強くなってルシードを助けれる人になれ」
そう言ってジルンはナイフを投げた。
「ルシードあとは任せる。 子どもとクラリエスを守ってくれ。 俺のとこに来るようなことがあるならあの世でボコボコにするからな」
「当たり前だ。 安心しろ」
ジルンは俺の目元を拭った。
そしていつも通り笑った。
この男は戦闘を楽しむ狂人だった。多くのひとに恐れられていた。
でもその本性は誰よりも情に厚く頼りになる男だった。
そんな最高の男の体から力が抜けた。目の前で死んだ。




