黒焦げの街と男
「姫様はここにいてください。 もし貴女の身に何かあれば取り返しのつきません」
ルキルの焦り様からいかに今厳しい戦いが続いているのか分かる。姫様を巻き込むわけにはいかない。姫様はカリスマ性があり賢い方だが自分で戦うことはできない。
俺が言うと姫様は笑った。
「君少しルシードに似てますね。 でも私もジルンが心配です。 ついて行ってはダメですか?」
姫様がこう言うなんて分かっていた。でも死んでしまったらどうする、もう取り返せない。
「申し訳ありませんが姫様はここで死なれてはなりません。 貴女の恋人のルシード様は貴女にはまだ自分と同じ世に来てほしくないと思いますよ」
まぁ事実俺と同じように転生されて永遠の別れみたいになるのもやだしあの世に行かれてさようならというのも嫌だから分かってくれ。
するとルキルが急に前に出てきた。
「あんたがいなくなってこの国はひどいのよ! 私も戦火に巻き込まれて母さんと父さんを失って大変だったんだから! だからお願い、貴女はここに残って生きてこの国を救って」
おいおい、それじゃまるで俺達が死ぬみたいじゃないか、死ぬ予定はないぞ。
でもこれはルキルの覚悟だ。家族を失い友人を失い、それでも希望を持ち続けた彼女の叫びだ。姫様ならきっと分かってくれるだろう。
「きっとどこかで再会いたしましょう。 私を救った英雄方」
姫様は納得してくれた。
「ルキル、怪我は大丈夫か。 回復したとはいえ魔力がいつもより少ないのは確かだ。 治癒魔法をかけてはやれない」
「当たり前よ。 あんたにもう手は煩わせないから」
ルキルの大剣を握っている手から血が滴っている。
失礼なことか、ここまで来て今更こんな心配をするのは。
そして俺達は姫様を置いて教会を出た。
出たらすぐ街の中心部へ向かった。
そこは黒焦げだった。建物もいつもの賑わいもなかった。あるのはいくつかの焼死体のみだった。
中には教団の人、一般人もいた。「誰がこんなことを」と頭に血が上った。
「嘘でしょ! ジルン!」
だがそんな考えていたのを俺は放棄した。このルキルの叫びで。
ナイフをもって黒焦げになっている男がそこにあったのだ。
「ルキル、良かった」
男はルキルを優しくなでた。
「ジルン……ごめんなさい。 私が弱いばっかりに」
ルキルは顔をグシャグシャに濡らしながら謝罪した。
「気にすんな子どもを守るために大人っているんだろ」
男は見慣れた笑みを浮かべながらこういった。
俺も男に話しかける。これがジルンと思いたくない。でも命をかけてくれたんだから話さないなんてこいつがあまりに報われない。
「大丈夫か? 治癒魔法を」
俺は指先に魔力を込める。でもそれをジルンは手で静止した。
「いい、どうせ治っても戦えない。 お前の魔法はすごいがすべてを救えるわけじゃないんだ」
そしてジルンは一呼吸置いてこういった。
「最期くらい思い出話に付き合ってくれないか。 お前と話したいこといっぱいあんだわ」




