天才魔法使いの全力
「流石にこの程度じゃ倒れないか」
視界が晴れたとき女が血を流しながら笑っているのが見えた。
「坊や強いわね。お姉さん死んじゃうかと思った」
普通血を流しながら笑うことなんてねえだろ。狂人め。
でも俺も少し高揚している。久しぶりだな。俺の魔法に耐えるやつなんて久しぶりだ。
「お姉さん冬なら温泉旅行に行きたいわ。寒いの苦手なのよね。」
女が妖しく微笑み呪文を唱える。
『叫喚地獄』
刹那俺の足元が温まるのを感じた。
「俺熱いの苦手なんだよ。」
すかさず俺は後ろに飛ぶ。
『至高凍土』
俺の魔法は地面を急激に冷やして凍らせた。女に余裕がなくなってきたか。魔力の限界が近いのだろう。
「ひどいわね。なんで貴方私の攻撃を受けてくれないの?普通の人より魔力を増大させて打ってるのに」
急に弱気になりだしたな。俺は魔力を使いすぎると欠乏するから抑えているし、そもそもの量も違う。
「教団にすがって私欲を肥やしてきたやつの魔法が俺に当たるかよ。勝ちたいなら真っ当に生きるべきだったな」
俺がそういったとき女の顔つきが変わった。そして彼女の胸元にある教団の紋章が激しく光を放ち始めた。
「違うわ……違うわ!このお方はいつでも私を救ってくださる!あの大罪人を殺し大罪女を捕らえたときこの世界はこのお方を唯一神として認めたの!光栄なことを侮辱するな!ガキの分際で……っ!」
そして女に凄まじい魔力が宿るのが見えた。逆鱗に触れたか。
でもなそれはこっちのセリフだよ。
前世の俺を大罪人呼ばわりした罪は重いぞ。誰が本当の黒幕かなんか知らねえがおもんねえやつはしばいていくのが俺のモットーだ。
女は今までのものとは比べ物にならないほど魔力を込めはじめた。
「私はシャンデルアという!神様からこの命授かった!ならば神侮辱罪でお前を殺す!」
叫びとともに女は今あるであろうすべての魔力を乗せて叫んだ。
『神罰代行・光の断頭台』
すると頭の上に空間を叩き割るほどの巨大な光の刃が現れた。
杖がないとか関係ない。神の裁きだが知らねえが俺の魔法に勝てる魔法を使えるやつなんかいない。
「勝負しようぜ。久しぶりに本気出してやるよ」
今まで魔力が尽きることがないように安全装置をつけていた。しかしその装置を焼き切り強引に魔力を流し込んだ。
そしてその魔力のすべてを指先に集中させる。
『天国道標』
その一撃は女のすべてをかけたギロチンを容赦なく粉々にした。激しい光と衝撃が収まったとき女は力なく倒れ込んでいた。
「悪かったな。来世では幸せな人生をおくれよ。もうお前は寝てろ」
女はかすれた声で「かみさま」とつぶやいている。俺は女に歩みを進めて静かに目を閉じさせた。
終わった。そう思って教団の深部へ歩みを進めようとしたその時だった。
「……あ?」
手の甲で拭うとそれは血だった。驚いて自分の脇腹を見ると赤黒く染まっていた。
最期に砕け散ったギロチンの破片を残った魔力で曲げて刺してきたのだろうか。気づかなかったな。
「最期に一撃決めるなんてすごい執念だった。褒めてやるよ」
体からギロチンの破片を引き抜き俺は苦笑する。危ないあと少しズレていたら結構深手だった。
俺は体に治癒魔法をかけた。
なんにせよ俺は教会の試練を一つ乗り越えた。さっさと姫様を助けないと。




