すべてを飲み込む天国の雪
ジルンとルキルが二人で町の中央へと向かっていく。
「俺も出発するとするか」
この二人は教会に追われている。だからもし見つかったもんなら教団の人は全力で二人を殺しに来るだろう。となれば警備が手薄になるに違いない。
この隙に教会、王城の地下牢などの思い当たるところを一つずつ探っていくという算段だ。
少しして街の外から信じられないくらい気の抜けた大きな声が聞こえてきた。
「どーも天使でーす!神様の使いだから殺さないでねー!」
ジルンが教団の奴らに大真面目に啖呵を切っているらしい。直後怒号が響く。兵士たちが集まってきたのだろう。
すぐに派手な戦闘音が響く。はっきり言って正面切った戦いでジルンに勝てるやつなんてそうはいない。今頃教団の連中は続々と討たれている頃だろう。
「よし頃合いか」
俺は背を向け、まずは手薄になっている教会へ向けて走り出した。
正面に到着したが普段立っているはずの見張りがいない。ジルンたちがうまく引きつけてくれたおかげで拍子抜けするほど簡単に中へ潜り込むことができた。
静まり返った礼拝堂に足を踏み入れ周囲を探ろうとしたその時だった。
「あらあら構ってくれる人がいなくて教会に入ってきちゃったの?」
背後から突然かけられた艶っぽい声に背筋が凍りつく。
(っち、主力中の主力はまだ行ってなかったか)
俺はすぐさま振り返り後ろを睨みつける。
「でも大丈夫よ。私が今から精一杯かわいがってあげるから」
すると女はいきなり容赦なく魔法を放ってくる。
すかさず俺は防御魔法を展開する。
「おいおい。自分から声をかけてきて俺の自己紹介は聞いてくれねえのかよ。せっかちな関西人でも挨拶の返事くらいは待ってくれるぞ」
間髪入れず指先に魔力を込める。
「一発は一発だ。――お返しだ、死ね」
できるだけ身軽に行動したかったら杖を置いてきてしまった。威力がちょっと落ちてしまう。
『銀の雪化粧』
その瞬間女の頭上で雪が爆発し美しい白い景色を生み出す。
それに覆われることは結界に閉じ込められることと同じだ。威力が下がってるんだからまずは有利な場所を作る必要がある。
だが女が怯む様子はない。今までのやつよりは骨がありそうだ。
「あらあら雪の中デート? 素敵ねぇ」
そういうと女は雪を鬱陶しそうに払った。
「でも私、デートするなら海が良いわぁ。『熱砂地獄』」
女は湯気の出るような砂浜を展開した。あたったら大怪我どころか消し炭になるな。
「教団の信者のくせになに教会を海にしてんだよ」
俺は再び魔力を指先に集める。杖がない状況では結界で相手を縛ることは難しいと分かった。ならば物理的に凍らせるまでだ。
『天国の白吹雪』
その大吹雪は凄まじい勢いで俺と女を巻き込んだ。




