姫様の現在
前世の俺、ルシードが住んでいた国の名前はオルタリア。かつては活気に満ち溢れた賑やかな国だった。
ここでの思い出は小さい頃、姫様と時間を忘れて遊んでいたことだろうか。名産の酒がめっちゃ美味くてジルン含めてなにかいいことがあるたびに仲間と宴会を開いたものだ。
ここはルキルの故郷でもある。少し懐かしそうな顔をしてる。
でも俺のここに来た主な目的は2つある。
1つ目は俺に告白してくれた姫様の無事を確認することだ。ジルンや父さん、ルキルの話を聞く限りルシードは”神”に殺されたらしい。
となると俺と婚約をしていた姫様にも下手したら危害が加わっているかもしれない。
2つ目は前世の俺の家に行くことだ。家につけば色々と分かることもあるかもしれない。抜けてる記憶のところだけでも分かれば十分だ。
「ルシード。 ちょっといいか」
そんな旅の目的を共有したときジルンが重々しく口を開いた。顔が暗い。俺は少し嫌な予感がした。
「オルタリアはお前の死後、完全に教団の手に落ちている。 姫様も監禁されているらしい。 大罪人としてな。 お前が行くってんならついてくが俺はあまり行くべきではないと思う。」
ジルンの言葉に一瞬フリーズした。監禁されているだと?
俺は教団の人が姫に何をしているか嫌な想像が脳裏をよぎる。
姫様が人質になっている、というところまでなら理解できた。その程度で済んでいればまだ良い。
だがあの卑劣で外道を極めたような教団だ。今まで俺を襲ってきたやつもルキルを捨て駒程度にしか見ることができない。神の言うことだけが真実だとしてそれを遂行して自分を満たすクズどもだ。
……最悪の場合、姫はすでに、凌辱の対象にされているかもしれない。
この結論が出るのにそう時間はかからなかった。
「セレス! そのお姫様絶対にひどい目を見てるわ! 勝てないじゃなくて助けに行くべきよ! こんな狂人の見解なんて取り入れる必要はないわ!」
ルキル、お前の言うとおりだ。分かってる。助けに行くべきだ。
でもジルンの言うことも決して間違ってはいない、と思ってしまう。
それはきっと転生して7年もの歳月を経たから前世の怒りも未練も薄れてきたからだろう。
ルシードなら後先考えず救っただろうに
ールシード時代の回想ー
「私はすごく弱いです。 人間族でもなければ、ずっとあなたに守られてばかりでした。 でもこれからは夫婦になって協力して生きてゆきませんか?」
「いつまでも俺はあなたを支えます。 もう二度とあなたが傷つかないように。
俺は知っている。姫様は彼女自身が俺に救われたと言ったが本当は誰よりも民のことを考えて誰よりも必死に人を助けてきたことを。
皆が彼女を聖女のように崇めている。
――でも、本当は。
誰よりも弱く守られるべき年相応の少女であることを俺は知っている。
ジルンもやめるべきだと言った。姫の家臣も今じゃ命惜しさに逃げる老人ばっかだろう。誰もあいつを助けてやらない。
か弱い少女の味方を俺がせず誰がするんだ!




