かつての仲間に正体がバレた魔法使い
ジルンは前世俺と一緒に魔王を討伐したパーティーの仲間の1人だった。そして接近戦を得意としていて戦闘を楽しむ狂人だが俺を幾度となく助けてくれた。
「おい坊主。 その子から目を離すんじゃねえぞ。 彼奴等は俺がぶち殺す。」
そういうとジルンは凄まじい踏み込みを見せた。
ジルンが最初の標的にしたのはルキルを狙った女の方だった。
はっきり言ってこいつに正面から勝てるやつはいない。
女は構える暇もなく、喉元をジルンの短刀によってえぐられた。
男は震えている。「近づくなあ!」と叫んでいるがジルンは容赦なく男に短刀を突き立てた。
「来世も今世も天国に行けると思うなよ。 バカ野郎が。」
ジルンは吐き捨てた。
そうしてジルンがこっちに歩みを進めたその時だった。
「教団の、ために、お前の、首は持って、いく。」
――ガハッ、と血を吐きながら、死んだはずの男が不気味に笑った。
最期の抵抗などという生易しいレベルじゃない。男の体内から、俺たちの肌を焼き焦がすほどの強大な魔力が、一瞬で練り上げられ──そして、放たれた。
「しまっ――」
ジルンが目を見開く。流石のあいつの超反応でも、密着距離からの自爆めいた一撃はかわせない。
悪いがやらせねえよ。守りながら戦う必要がなければこの程度、簡単に打ち砕ける。
『軌跡の白光』
──瞬間、視界が真っ白に染まった。
俺の指先から放たれた容赦のない光が、男の放った強大な魔力を正面から完全に圧殺し、その肉体ごと根こそぎ吹き飛ばした。
男の姿は跡形もなく消え去り、ただ抉れた地面と、焦げ付いた空気の匂いだけが残されていた。
「……は?」
静寂のなか、ジルンが間の抜けた声を漏らす。そして信じられないといった様子で誰かと重ね合わせるように俺の方を見た。
「おい、坊主……。お前、今の魔法、まさか──」
バレてしまったかもしれないな。ここまで来たら自ら正体を明かすべきか。
でも、ただ僕はルシードですって言っても信じてくれないよな。
どうしよう。そうえばこいつどこで出会ったけ。
俺は必死に記憶を探る。
確か俺達が初めて出会ったのは小さな居酒屋だったな。魔族が来たと依頼された俺等が向かった先にこいつはいたんだ。
魔族にボロボロにされながらも魔族を全滅させていたこいつは俺に挑んできたんだ。当然ボコボコにしてやったが。
そのあと俺にリベンジするとかなんとか言ってついて来たんだよな。
──そこまで思い出した時、ジルンがガシガシと自分の頭を掻きむしり、吠えるように言った。
「いや、ありえねえ! ルシードは死んだんだ! でもあの魔法は絶対ルシードだ!」
詰め寄ってくるジルンの眼光は、いつになく真剣だった。
ルキルを守るためとはいえ、少しハデにやりすぎたか。覚悟を決めるしかない。隠し通すには、こいつは俺のことを知りすぎている。
「……相変わらず、せっかちな奴だな」
俺はふっと息を漏らし、前世のときと同じ顔で笑った。
「リベンジしてくんだろ? お前にボコボコにされるまで俺はくたばらねえよ。」




