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別人  作者: 乾 優弥


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第39話 事件の真相

目が覚めると、白い天井と昼白色の蛍光灯が眩しくて反射的に目を細めてしまう。


「おおっ。三島、やっと目が覚めたか」


左側から羽山さんの声が聞こえてきて顔を横に倒す。隣には椅子に座っている羽山さんが居た。


「あれ……俺、晴香と話してて……」


「その様子じゃあの後の記憶が無いんだろ?ぶっすりと刺されたんだ。無理もねぇよ」


「確か、晴香に刺されたんだっけか……それからどうなったんですか?」


頭がぼーっとしてよく思い出せない。


「お前を刺した白峰晴香は現行犯逮捕。

刺されたお前はこの病院に搬送されて手術をして一命を取り留めた。それが二日前の話」


「ふ、二日前!?」病室のベッドから起きあがろうとするが身体を襲う強烈な痛みに悶える三島


「おい、無理をするな。それからどうなったか教えてやるから落ち着け」


起きあがろうする三島の身体をゆっくりと抑えてベッドに寝かす。


「白峰晴香の事が気になるだろうが、まずはタクシーの運転手、宮田雅之の話からしよう」


椅子に腰掛けた羽山がひと息ついた後、全ての真相を話始めた。


* * *


※※※警察署の取調室に羽山と山田、そして宮田容疑者が顔を突き合わせていた。


「宮田雅之。お前は何故、黒田修一が殺害された日のドライブレコーダーの映像をすり替えたのか。

そして、黒田皐月と白峰晴香が行ったお店にいた人達を殺して回ってたのか教えてくれないか。"動機だけ"がどうも納得いかないんだよな」


「動機だけ??」不貞腐れたように座る宮田が反応する。


「おん、動機だけだよ。お前が細工した手口は知ってる。でもそれをする理由が分からない」


羽山は飄々とした顔つきで机を指でトントンと叩く。

山田は、宮田が黒だとしか聞かされておらず、細かいことまでははっきりとは知らない。

宮田が乗るタクシーを敢えて手配して、白峰達を乗せたのも全て羽山の指示だった。


「お前の車に付いてる外付けのドライブレコーダー。中々年季が入ってるよな、まぁ車もだけど。俺は昔のデザインの方がしっくりくるのよ。日産のレパードとかもう……」


「羽山さん。話が脱線してますよ」山田が羽山の話を遮って注意する。


「悪い悪い、事件当日にお前は黒田と白峰を客として乗せた。そしてその時の映像はこのSDカードに記録されている。あぁ、これ?家宅捜索してゲットしたんだよ」


宮田の自宅から回収したSDカードを見せる。


「記録されている日付と俺達に提出した日付は同じ。つまり、事件当日の映像が記録されているSDカードを抜いて、次の日に新しいSDカードを取り付けた。

その際にドライブレコーダーの日付を一日前にずらしたんだろ?

外付けの上に旧タイプのドライブレコーダーでシステムの同期が無いアナログタイプだからな。

その後に白峰晴香を乗せて同じシチュエーションを録画すれば同じ日付で黒田皐月が映っているものと、映っていない二つの映像が出来上がり」


宮田はなにか付け加えるわけでも、否定することもなく、黙ってただじっと羽山を見つめている。


「ただ、腑に落ちないのは動機だ。お前と白峰は繋がっていない。そうだろ?」


「……どうして、そう思うんだ?」


「お前と白峰が組んで黒田皐月に夫殺しの罪を被せたにしては二人の行動がバラバラ過ぎる。

それに、白峰は俺の目を見ながら真犯人を捕まえると言った。あの目は嘘じゃない」


「嘘じゃないって、なにを見てそう言ってんだよ。アンタおめでたいね〜」


ニヤリと汚い笑みを浮かべる。


「っていうか……誘導尋問に引っかかったな。俺は白峰が黒田修一を殺したとは一言も言ってないぞ?普通はそのワードに引っかかるだろ。

なのにお前は白峰が殺した前程で話をしてる。

……白峰も一緒に捕まったぞ。俺の仲間をぶっ刺して殺人未遂の現行犯逮捕だ。黒田の件の余罪もあるから確実に起訴される」


白峰の逮捕の知らせを受けて、宮田の全身から力が抜けていくのは誰の目から見ても明らかであった。


「なんでお前がそこまで白峰を庇うのかは知らんが、そろそろなにがあったか教えてくれないか」


「ひとつだけ、答えてくれ。あの子は……白峰晴香は豚箱行きなのか?」


「豚箱って失礼な」羽山がツッコむ。


「その答えを知ってるのは裁判官だけだが、刑務所のお世話になるのは目に見えてるな」


少し薄くなった頭皮から出た脂汗を手で拭いながら、目を瞑ってなにかを諦めたように深呼吸してから口を開く。


「まず、俺とあの子は全くの無関係。

そして、あの子が躍起になって探していた犯人は俺だ。きっと驚くだろうし、疑問に思うだろうな」


「うん?どういうことだ??」


今まで大人しく話を聞いていた山田が思わず声を漏らす。


「あの子にお前ら警察の魔の手が来ないように手を尽くしてたんだよ。全部俺が勝手にやったことだ」


羽山と山田は、宮田と白峰が一体どういった関係なのか全く想像がつかず、なにから紐解いていけば良いのか困惑せざるを得なかった。

取調室に渇いた冷たい空気が漂う。

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