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72話 アグリカでお試し

(レン、久し振りだな。以前〔フィッシ〕の件で世話になったパンドゥだ)

(厄神様でしたか、お久し振りです)

(オレもお礼が言いたくてな)

(何かしましたか?)

(厄災で被害があった〔フィッシ〕の復興だよ。レンのお陰で以前より活気に満ち溢れている)

(偶々ですよ)

(謙遜するな、その偶々がオレの憂いを全て取り払ってくれた。ありがとう)

(お役に立てて良かったです)

(オレからもお礼を受け取ってくれ)


 厄神様から、まさかのお礼だ。

(レンの私有地にネクタルの木と苗木を数本植えておいた、今度確認してくれ)

(あら、ネクタルの木ですって?良いわね、フェアリー達にお世話させましょう)

(おいおい、良いのかい?曰く付きの木じゃないか)

(アウイラ様、曰く付きの木って?)

(昔、ネクタルの実で戦争が起きかけた事があるんだよ)


(ネクタルの実は、とあるレシピの素材でもあるぞ。レシピは教えられんがな)

(神の果実として希少性が高く、寿命が延びると言われてたんだ)

(それを真に受けた王族や貴族が独占しようとして、国同士の争いになる所だったのよねぇ)

(結局、無茶な乱獲をして絶滅させてしまったんだよね)

(まぁ、今の時代に覚えている者はいないし、レンなら大丈夫だろう)


(ありがとう。凄く貴重な物だとは伝わったよ)

(成熟した[ネクタル]は精霊達の糧にもなるのよ。だから、お世話させる代わりに、少しあの子達にも分けてあげて良いかしら)

(デメテラ様、勿論良いですよ。市場に出すのは止めておくね)

(信頼出来る者にしか、教えない方が良いだろう)


(寿命が延びるのは嘘?)

(そのままではな。神々が制限を掛けたレシピがあって、その一つ不老不死レシピの素材だよ)

(あながち間違いでは無いんだ)

(特定条件で育つ木でな、神の恩恵がある場所でしか育たんのさ。今回のサンクチュアリの様な場所がそうだ)

(今ではそんな場所も少ないですもんねぇ)

(レン、今度[ネクタル]で何か作って欲しいな)

(直ぐにとはいかないけど、デメテラ様のご要望とあれば)

(やったぁ、期待してるね)

(但し、独占は駄目だよ。喧嘩になるからね)

(判ってるよぅ)


(貴重なお礼をありがとう。オレからは、新作の[ハンバーグ]と[ソーセージ]を納めるんで、皆んなで食べて下さい)

 料理が消えた途端に歓声が聞こえたねw


 教会を出た後ガディ商会に行き、ガディさんと通信。

 〔アグリカ〕の協力農家を教えて貰い、紹介状をお願いした。


 教えて貰ったのは、農業組合長のリフトルさん。

 〔アグリカ〕発展の第一人者なのだそうだ。

「農業に関する新しい知識は、彼が1番食い付きますよw」と笑っていた。

 一応、ギルドに報告してから〔サウザリアン〕を出発。

 道中狩りをしながら〔アグリカ〕に向かった。


 前回〔アグリカ〕は通信機で立ち寄り、慌ただしかったので今回はゆっくり見て回ろう。

 街を散策していると、行列が出来ているお店が目に入る。

 看板を見てみると〈ヒヨのとまり木〉だ。

 並んでいる人に聞いてみると、デザートが人気で路地から移転したみたいだね。

 店の大きさも倍以上となり、人気の店になっていた。


 市場の横では、[唐揚げパン]の幟が乱立w

 "元祖""発祥""初代""オリジナル""老舗"と様々。

 1年も経ってないのに"老舗"ってw


 ギルドに立ち寄り、到着の報告と素材の買い取り。

 不足素材を必要量だけ買取りして貰うと喜ばれた。

 ガディ商会に立ち寄り、お願いしていた肥料を受取る。

 〔フィッシ〕と〔リベスト〕から定期的に購入して貰っている。

 最後に農業組合に行き、組合長のアポを取る。

「今直ぐにでも!」と言われたが、日も傾いているので、明日の鐘1つ過ぎで約束。

 凄い食付きだったw


 夕飯は客足の落ち着いた〈ヒヨのとまり木〉に行ってみる。

 中に入ると「「「いらっしゃいませ」」」の元気な声。

 従業員も増えているね。

 席に座ると、カウンターの奥で椅子の倒れる音がして、「あなた、レンさんよ!」とヒヨリさんの声が聞こえた。


 慌てて駆け出してくるザイルさんとヒヨリさん。

「レンさんお久し振りです」

「ザイルさん、お久し振りです。お店移ったんだね」

「レンさんのお陰だよ。あれから路地の店では捌ききれず、断わる客が多くなってしまって」

「お客様に申し訳ないので、店を大きくしたの」

「それは良かった?のか悪かったのか。忙しくなりすぎた?」

「いやいや、逆に従業員も増やせて、休ませて貰ってるよ」

「それは良かった。ピラルちゃんも元気?」

「あぁ、すこぶる元気さ。偶に店の手伝いもしてくれる」


「でも凄いね、こんな一等地に移るなんて」

「実は、領主様から頼まれたんだよ。住民から「通れない」「食べられない」みたいな嘆願書が多く、場所を提供するから移転してくれと」

「だから、一等地でも格安で借りられてるの。私達の住まいは元の家よ」

「そうだったんだ、成功おめでとう」

「「レンさんとの出会いに感謝を」」

「成功のお祝いにこれをどうぞ、ピラルちゃんと食べてね」

 [シュークリーム]を渡したら更に感謝された。

 勿論従業員にも配ったよ。

 だって、凝視されていたからねw

 食事が終わって、会計は要らないと言われたが、それは断わった。

 最後まで感謝され、見送りまでしてくれたよ。


 翌日、組合長に肥料の説明をすると、目を輝かせて聞いている。

「組合で勧めているのは、落ち葉を利用した土作りだな」

「腐葉土だね。肥料と言うよりは土壌改良がメインかな」

「肥料とやらは違うのか?」

「植物に必要な栄養を与えるイメージだね。勿論、与え過ぎると害になる事もある」

「検証が必要だな」

「品種や量の検証に、時間はかかると思う」

「ん?適正量ならスキルで判るぞ」


 聞けば組合長のスキルが【育成】で、掛け合わせの相性や必要量の把握が出来るそうだ。

 早速、小スペースで検証を行う。

 肥料有りと、肥料無しで比較。

 結果は後日教えてもらう事とした。


 その後、連作障害や休耕の確認をすると、"ポカン"としていたので、収穫量の話しをしてみる。

 予想通り、品種によって収穫量が安定しないようだ。

「土の栄養や微生物か…今迄考えた事が無かった」

「腐葉土を使っているから、同じ考えだよ」

「それはスキルで偶然判ったからな、知識が無きゃ考えもつかん」

「オレも専門じゃ無いから、知ってる事だけでしかないケドね」

「それでも助かる!知らなきゃ先に進めん」


 可能な限り知ってる事を話し、【育成】スキルで検証して貰う。

「上手くいけば収穫が安定しそうだな」

「収穫量も増えると思うよ」

「そりゃあ有り難いな。なんせ出荷が間に合わん」

「そうなのかい?」

「誰かさんが、人気レシピを乱発したからな」

「誰だろうねぇ(汗)」

「冗談だ、嬉しい悲鳴さw」

「そう言ってくれると助かるw」


「それじゃあ色々試してみよう。肥料の追加はガディ商会で良いのか?」

「あぁ、定期的に依頼している。大量に必要の場合は、時間が掛かるよ。肥料作りも始まったばかりだからね」

「了解した。検証結果を楽しみにしていてくれ」

「良い結果が出る事を祈るよ」


 朝訪れたのにもう夕方だよ。

 組合長と別れ果物を仕入れてから宿に戻る。

(明日は久し振りに足を伸ばして[ワイバーン]の肉を調達しようかな。ネオで期間か数量限定で出すのも良いね)

 そうと決まれば明日は[ワイバーン]狩りに決定!

 カラードも狩れればお土産にしよう。

(久し振りに〔アル〕の村で宴会も良いね)


 後日、宴会が凄く盛り上がったのは言うまでもないw

 勿論、領主様には赤の[ワイバーン]を献上。

 飾れるようはく製にしておいたのに溜息をつかれた。

 解せぬ!

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