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第73話 魔物討伐遠征

〔サウザリアン〕から出発して約30日が過ぎた頃、領主様から魔物討伐遠征の知らせを聞いた。

10日後に始まるようだ。

領主様の受け持ちは、〔アルケラ〕付近の森から〔リベスト〕と〔フィッシ〕の間なんだとか。

勿論全ての魔物を討伐出来る訳も無く、間引きと増減、種類を確認するのが目的みたいだね。

毎年領主様は侯爵様の援軍を断り、自軍で参加していると聞いた。

良い訓練になるんだとか。

早速領主様と打合せ。


「レンの見立てはどうだ?」

「ん~~、この範囲なら5日もあれば網羅出来るかな」

「短いな、可能なのか?」

「多分、1人だと3日あれば足りるよ。今回は人数が居るんで、行軍に時間がかかるのさ。地図を用意してくれたら、大まかな分布も調べられる」

「はぁぁ、1人で騎士団以上の働きか…」

「勿論、全滅は出来ないからね」

「当たり前だ!全滅までされたら騎士団が無能扱いされるわ」


「数が多かったり、危険そうな魔物を討伐で良いのかな?」

「それと、レアな魔物もな」

「素材は?」

「可能な限り回収してくれ。遠征費も馬鹿にならないからな」

「了解」

「目的地到着後、何も無ければ終了だ。要請があれば応援となる」

「騎士に報酬はあるのかい?」

「遠征手当ての他に、討伐した素材の半分が報酬だ」


後方支援者もいるから、一度集めて均等割にするらしい。

「では、張り切って討伐しますか」

「1人で討伐し過ぎるなよ、騎士団の訓練も兼ねているんだからな」

「善処するよw」


魔物討伐初日、天気は快晴。

絶好の討伐日和だね。

〔アルケラ〕までの街道半ばから森へ入る。

早速【索敵】を使い、周りの状況を確認。

「判る範囲は此処までだよ。〈ゴブリン〉〈ホーンラビット〉〈ハンマーヘッドボア〉がいるね」

地図に印を付け、魔物の位置を教える。

「こりゃあ便利だ、実入りは少ないが初戦の肩慣らしに丁度良い」

騎士総長のゼフが喜んでいる。

「部隊の振り分けは任せたぞ」

領主様も感心する中、討伐がスタートした。


騎士団と魔法師団の混成部隊を向かわせ、本隊は【索敵】の境界付近まで進む。

【索敵】範囲外は【身体強化】でひとっ走り。

初日は被害も無く終了した。


「マジで魔物の位置が判ると有利だな」

「先手を取れるからね」

野営地で報告の際に、ゼフが感心している。

「なあレン、【索敵】は覚えられるスキルなのか?」

「どうだろうねぇ、気配に敏感なら可能かな。明日試してみるかい?」

「どうやるんだ」

「方向だけ教えるから、魔物の気配を意識しながら進むのさ」

「察知出来ない場合は?」

「今迄通りじゃない?意識して気配を感じるのが大事だと思うよ。繰り返しが必要だね」

「そりやあそうかw 良し、明日から試してみよう、このままじゃ訓練にならん」


【オートマッピング】が無いから【索敵】は察知のみとなるだろうが、覚えると便利なスキルには違いない。

魔法師団なら【魔力探知】も覚えられるかな。

「イメージは波紋かな?」

「波紋って水に石を投げた時のか?」

「そうだよ、探知の輪が広がっていく感じ。探すを意識して輪を広げるイメージだね」


報告も終わり、食後に付近をフルーツで【サーチ】してみると、[???]が表示された。

探してみると数本の高い木を見つける。

梢は密集した木の枝や葉っぱで見えない。

幹から枝が生えておらず、丸太が直立している様な木だ。

【鑑定】してみると[バッナ]と出た。

しかし、実や葉っぱは見当たらない。

「こういう時はっと」

周りの木を利用して木登りを開始。


予想通り、木の先端に葉が見えた。

放射状に葉が伸びていてヤシの木みたいだ。

葉の根元に房状の[バッナ]が生っている。

【鑑定】すると食用可能と出た。

どうやら赤くなれば食べ頃らしい。

「向こうの世界との違いが面白いな」

完熟を過ぎた物は皮が開いていて、中の実が乾燥している。

「風で飛ばされて遠くに落ちるから、今迄見つからなかったのかな?」


市場に出回っていないので、初めてなのか取るのが難しいのだろう。

試しに数房確保し野営地に戻った。

料理担当に見せると、驚いた表情を見せる。

「こ、これを何処で見つけたんだ?」

「森の木に生っていたよ。珍しいのかい?」

「あぁ、採取が難しくて、出回っても少量なのさ。なんせ木を切り倒して無事な実を採取するしかないからな。こんな大きな房状は初めて見るぞ」


「夕食のデザートにはビッタリだね」

「はぁ、気は確かか?侯爵様でも滅多に食べられないんだぞ」

「領主様に確認して、許しが出たら食べようぜ」

「マジか…この一房で一財産作れるんだがな…」


早速、領主様に確認したら溜息を吐かれた。

「まさか完全な房の状態で採取出来るとは…」

領主様は少し考えて相談を持ちかける。

「レン、二房を確保出来ないか?」

「献上品に?」

「そうだ、侯爵様と王家にな。渡さず耳に入れば面倒だからな。勿論買い取る」

「良いよ、八房有るけど幾つ残す?」

「はああっ?…………二房で良い」

「了解!仕舞っとく。お代は要らないよ、その代わり皆んなで食べるのを了承してね」

領主様は何度かの溜息を吐いた。

夕食時、騒ぎとなったが、全員喜んだので良しとしよう。


翌朝、まだ薄暗い内に数名で結界罠の様子を見に行く。

「これか、ガディから聞いていた理不尽な罠は…」

「領主様、理不尽は非道いなぁ。せめて効率的と言って欲しい!」

周りを見ると騎士団長も固まっている。

「レンよ、お主しか出来ん罠は効率的とは言わん」

「…何か納得w」


「しかし、聞くと見るとでは全く違うな。見張りも要らず、起きたら素材と経験値が手に入るとは…」

「一応、寝る前に居た魔物の分布は控えているよ」

「今日はかなりの距離を移動出来そうだ」

「さあ、さっさと仕留めますか。後3カ所あるからね」

領主様は幾度とも知れない溜息を吐いた。


遠征が始まって4日目、順調に討伐は進み、今日で目的地に到着出来そうだ。

「過去1番早い討伐遠征だな。例年倍以上の日数がかかっておるのに。しかも魔物の分布調査も完ぺきとは……」

「受け持ちの範囲は異常無さそうだね」

「あぁ、問題無しだ。今、伝令を走らせ他の状況を確認している。異常が無ければ終了だな」

「じゃあ、今日は【索敵】の習得をメインに進みますか」


何人かは感覚を掴みかけていて、発見迄の距離が延びている。

まだ自力では難しく、方向を教える段階だ。

水辺で休憩中、もう一度イメージを固めてみた。

魔力を一方向に放出するのでは無く、波紋の様に広げ感覚をリンクさせる必要がある。

【魔力操作】と【魔力探知】の熟練を上げるのが近道かな?

最終野営地に到着したが、スキル習得迄は出来なかったので、今後の課題だね。


設営後、領主様から集合が掛かる。

伝令の報告だ。

「報告申し上げます。[アグリカ]方面は現状問題無し。半分まで行軍が進んでいます。[リベスト]から[クラフリ]が遅延気味。どうやら〈ゴブリン〉の集落があった模様で、応援要請が有りました」

「場所は判るか?」

「はい、此処とこの2ヶ所です」

「意外と街に近いな」

「他にも集落がある可能性が高い為、応援要請を出したそうです」

「余りにも多いと〈ジェネラ〉〈キング〉もあり得るか」

「もしくは、強い魔物に追い立てられた可能性も」


「よし、判った。我が軍は要請を受ける。2日後出発とし、明日は休んで英気を養え。レン、すまぬがもう少し付き合ってくれ」

「了解。じゃあ今夜は宴会だね、料理を作るの手伝うよ」

「助かる、食料は好きなのを使って構わん、皆に美味いもの作ってくれ」


〈リベスト〉が近いので、早速[ミートチョッパー]と[ソーセージメーカー]を追加し、調味料も調達。

野菜は少ないが、肉は豊富にあるので、[唐揚げ][ステーキ][ハンバーグ][ソーセージ][焼き肉]を出すと争奪戦になった。

「魔物討伐より真剣だな……」と領主様も呆れた程だ。

お酒も解禁になったので、夜遅くまで宴会は続いた。


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