71話 依頼と言う名の強制
「レンよ、見事だ。功績に見合った報奨とは言えぬが受け取ってくれ」
「過分なる御言葉と報酬、謹んでお受け致します」
「すまぬが、[メガポーション]の指導も頼む」
「承知しました」
宰相が終わりを宣言しようとした時、別の貴族から声が掛かる。
「レン殿、腕に覚えがあるのなら、魔物討伐に参加しては如何かな?」
突然の提案に会場がどよめく。
「侯爵様、無作法と承知で引き続き発言をお許し願いたい」
「許可しよう」
「先程、レン殿は騎士団50名以上の強さを持つと聞いた。ならば指名依頼を出し、魔物討伐に貢献して頂くのが宜しいのでは?勿論、愛国心があれば、無償で参加されるかも知れませんがな」
隣にいる貴族も「愛国心が試される訳ですな」と煽ってくる。
「愛国心ですか…確かに愛国心があれば参加しなくてはなりませんね」
「そうですとも、参加しなければ愛国心が無いと思われますぞ」
「判りました、愛国心を試して貰いましょう」
「侯爵様、お聞きしましたか、レン殿が参加なさるそうです」
侯爵様が「レン良いのか」とニヤけて問いかけてくる。
流石侯爵様、オレの意図を察したみたいだね。
「では愛国心を試して貰うのに、皆様も一緒に参加しましょう。勿論部下に丸投げでは無く、本人参加で」
「な、な、何を仰る」
一層会場がどよめく。
「ふむ、愛国心を試す良い機会だな。ガライド伯爵の言う通り、愛国心があれば本人参加も可能か…」
焦る伯爵を他所に、侯爵様が追い打ちを掛けてくる。
「よく部下に任せて放置する方もいると聞きます。此処に居る皆様は違うと思いますので、一緒に愛国心を試しましょう」
「あい判った。此度の遠征は党首参加で行う。皆準備を怠るなよ、油断すると大怪我をするからな」
「ち、ち、ちょっとお待ち下さい。党首が参加するなど聞いた事がありませんぞ」
「ん?ガライド伯爵が言い出した事だろう?」
「い、いえ、それは…」
「よもやレンに参加させる為の方便ではないのだろうな」
「け、決してその様な事は無く……」
「では愛国心を示せ」
汗の止まらないのは伯爵だけでは無さそうだね。
そろそろ、決着をつけますか。
「侯爵様、党首全員が不在では支障をきたすかも知れませんし、体調不良ややむを得ない理由が有るかも知れませんよ」
「ふむ、そうだな」
「ですので、参加出来ない方は遠征費の補助金を出して貰うのは如何ですか?勿論、どうしてもやむを得ない方はですが」
「ではそうしよう。此度の遠征は党首参加とする。やむを得ない場合は理由を示し、遠征費援助を以て免除とする。異論があるならこの場で示せ」
静まる会場の中、厳しい視線だけがガライド伯爵に向けられる。
「異議が無い様ですので、これにて終了致します」
騎士に案内され、控室に戻ると、領主様が笑い出した。
「レン、会場で笑いを堪えるのが大変だったぞw」
「売られた喧嘩は買わないとねw なんせ、依頼と言う名の強制だったしさ」
「今頃〔サウザリアン〕の貴族は理由を考えるのに必死だろうさ」
「何人参加するかな?」
「補助金の金額によるな。一体幾らになるのやら」
「領主様は参加?」
「毎年参加してるぞ、辺境伯だしな。魔物退治が出来んと務まらんよ。レンはどうするんだ?」
「ん~~参加してみるかな、面白そうだし」
「魔物退治を面白いと言うのはレンだけだぞ」
領主様が呆れていると、ドアがノックされ宰相が入って来た。
「レン殿、先程は申し訳ありませんでした」
「宰相が悪い訳ではないので、気にしないでよ」
「そう言って頂けると有り難い。それとお礼を」
「お礼?」
「今回の遠征費は黒字になりそうですw」
「補助金ですか?」
「それと[メガポーション]もです」
軽く計算してみた所、貴族の半分欠席でも、昨年の支出に近いんだとか。更に[ポーション]の支出が少なくなるので、黒字は確定だね。
「侯爵様も併せてくれたからスムースだったよw」
「えぇ、戻った瞬間大笑いでした。毎年無視を決め込む貴族が大半でしたからね」
「今回の遠征はオレも参加するよ。日程が判ったら教えて」
「それは助かります!是非お願いしますね」
その後、終始ご機嫌な宰相に案内され、錬金室に行くと、既に準備が整っていた。
責任者と挨拶し、早速[メガポーション]を作成して行く。
「素材はオレが用意したので、先ずはレシピ通り作成してみますか」
5名の錬金術師は興味津々でレシピを試して行く。
品質がバラバラな[メガポーション]に対し、注意点や改善点を教えて行くスタイルとした。
流石に責任者の品質は問題無しだね。
問題は魔力操作なので、訓練方法を教えて終了。
後は努力して貰おう。
錬金室を出た後は、メイドさんに囲まれて食堂に拉致されたよw
(デザートの新作あったかなぁ)
とりあえず、料理長に[ソーセージ]を教えて誤魔化した。
だって、新作デザートのレシピはネオ専用だから、まだ公開出来ないんだよね。
帰りは侯爵家の馬車で、ギルドに送ってもらった。
泊まりを勧められたが、用事があると言って断わった。
領主様は先に帰り、後は別行動。
ギルドで素材を査定して貰い、本日は終了。
翌日、早速森に向い、泉を中心とした半径3キロルに壁を作り、私有地とした。
壁は【ロックウォール】で、高さ2メト。
侵入者にはイタズラして良いよと、〈フェアリー〉や〈ピクシー〉にお願いしておく。
更に翌日、宰相に私有地の許可を貰う為、査察を要請。
無事7日後に承認された。
侯爵様からは、「予想より狭い範囲だが良いのか?」と聞かれたが、管理可能な範囲として納得して貰う。
さて、久し振りに女神様へ報告しようかな。
教会へ行き、寄付を行うと祭壇を貸切にしてくれた。
〔サウザリアン〕では礼拝が多く、小祭壇が複数設けられていて、1番奥の小祭壇を貸切にして貰い、お供えを置き祈る。
(アウイラ様、ご無沙汰しています。お供えをお納め下さい)
すると、一瞬でお供えが消え、歓喜の声が上がる。
しかも複数人w
(ち、ちょっと待つのだ、そのお供えはわたしのだ!)
(もう、ケチね!アウイラ1人で食べたら太るわよ)
(そうだぞ、こんな美味いもんを独り占めするなよ)
(確かに、レンさんのお供えは美味いし、珍しい物ばかりですものね)
(わたしの楽しみが減る〜〜)
姦しい会話が響き、ちょっと驚いたが、気を取り直し声を掛けて見る。
(何柱かの女神様がいるんだね)
(レン久し振り。そうなんだ、以前宴会をした時、レンのお供えは当たり判定されてしまった)
(それは嬉しいね、神様のお墨付きだw)
(初めましてレン、わたしは光の女神【エオスィ】よ)
(オレは火の女神【ヘスティ】だ)
(初めまして、レンです。お供えを気に入ってくれて嬉しいよ)
(レンからも頼んでくれよ、独り占めしないで分けてくれって)
(な、何を言っている、レンはわたしにお供えしているのだぞ)
どうやらお供えされた神様に権利が有りそうだね。
暫く待っていたが、収まりそうもないので、溜息をついて話しかける。
(気に入ってくれるのは良いんだけど、騒ぎの元になるならお供え無しにするよ)
すると、騒ぎが"ピタッ"と止まる。
(そ、それは困る…)
(あ、争ってなんかないぜ…)
(そ、そうよ、皆んな仲良しよ…)
(……)
(((ごめんなさい)))
(追加してあげるから、皆んなで仲良くね)
(((ありがと〜〜〜)))
息がビッタリだことw
(やっと本題に入れる。アウイラ様、デメテラ様は居ますか?)
(ん?居るよ。お〜いデメテラ、レンが用事だって)
(あら、丁度良かった、私もレンさんにお礼が言いたかったの)
(お礼?)
(そう、泉を私有地にしてくれたでしょう、あの子達の居場所を守ってくれてありがとう)
(いやいや、[魔力水]が手に入る場所だからね、オレにメリットがあるのさ)
(うふふ、そういう事にしておきましょう。結果的にはあの子達の安全な場所が出来たんですもの、お礼をさせてね)
(ありがとう、素直に受け取るよ。オレの用事も私有地の報告だったから丁度よかった)
(では、あの場所に祝福を)
(うわぁ!レン、凄いよ。あの場所がサンクチュアリになったよ)
(アウイラ様、本当かい?デメテラ様ありがとう)
(どういたしまして。あの場所では、魔力の回復がアップしますよ)
(感謝の気持ちとして、お供えを受け取って下さい)
(ありがとう、これは[チョコ]ですね)
(なに!こっちのお供えには無いお菓子だ!レン、ズルいぞ)
(アウイラ様には沢山あげたでしょう、欲張り過ぎです)
(そんなぁ)
(アウイラ、分けてあげるから、そんなにがっかりしないの)
(デメテラ大好き!こっちのも分けるから、一緒に食べよう)
歓声が上がる中、(オレもレンと話しをさせてくれ)と声が掛かる。
誰だろう?




