第70話 報奨
予定通り〔サウザリアン〕に到着。
領主様との約束は2日後なので、今日は観光しようかな。
とりあえずギルドに寄って、素材の査定と報告。
相変わらず、〔サウザリアン〕ギルドの依頼書は少ないな。
[薬草]採取の報酬が高くなってるね。
今から[ポーション]作りの準備だろう。
侯爵様へ[メガポーション]のレシピが献上されるから、材料となる[聖光草][黃水晶][魔力水]を集めておくかな。
どのみちレクチャーする羽目になりそう出しね。
久し振りに泉に行ってみるか。
〔アルケラ〕ダンジョンで[黃水晶]を確保し、泉に向かう。
道中[聖光草]を採取。
泉に近づくと、〈フェアリー〉が纏わりついてくる。
(相変わらず〈フェアリー〉に人気ですね)
振り向くと〈ピクシー〉が微笑んでいた。
「久し振り、泉の様子はどうだい?」
(レンのお陰で、徐々に戻りつつありますよ)
泉に着くと、以前と異なり水が澄んでいる。
「中心まではまだまだだけど、縁の部分は魔力水が濃くなってるね」
魔力の濃淡によって、水面のグラデーションが神秘的だ。
(散り散りになった同胞も集まり初めました)
「それは良かった。回復の途中で申し訳ないが、[魔力水]を少し貰っても良いかい?」
(勿論です。お望みのままに)
「ありがとう、お礼にまた[魔力草]を植えておくよ」
(感謝します)
満足したのか、纏わりついていた〈フェアリー〉も離れたので、[魔力水]を採取して泉を後にした。
森をそのまま移動して、水晶を取りにダンジョンへ向かう。
無事に[黃水晶]も採取出来たので、ポーションの素材も確保しながら〈サウザリアン〉に戻るとしよう。
〈サウザリアン〉の近くで侯爵様の馬車を見掛けた。
丁度良いので、護衛騎士に明日の来訪時間を聞いて貰った。
馬車に誘われたが断り、予定だけ教えて貰う。
だって、間違い無く説明しなきゃいけないし、お説教は明日で充分だよね。
予定は、明日の鐘1つに領主様の別邸で打合せを行い、鐘2つ過ぎに侯爵邸で表彰と聞いた。
ではでは、これからギルドに行って、薬草を買い取りして貰いますか。
翌日、鐘1つに領主様の別邸にいくと、即座に別室へ案内された。
程なく領主様が来るやいなや、顔を見るなり深い溜息を吐かれたよ。
「レン、目立ちたくないのではなかったのか?」
「そうなんだけどねぇ」
「今回、ネオの功績は私が呼ばれたが、実質全てレンの為の表彰だよ」
「辞退出来ないかなぁ」
「自業自得と諦めろ」
「それより、ネオは順調?」
「あぁ、順調過ぎるな。未だに客は増えている」
「何か問題は無い?」
「そうだな、強いて言えば今後生産量が足りなくなる可能性が高い」
「農地の拡大は出来そう?」
「限度があるな。人手の問題も出てくる」
「判った、考えがあるから試してみるよ」
「呆れたな、そんな直ぐに対策が浮かぶとは……」
「丁度〔アグリカ〕で試したい物があるのさ」
「試したい物?何だ?」
「肥料と言って判るかい?」
「初めて聞くな」
「植物の育成を促進させる物さ」
改めて肥料を説明し、領主様から試験の許可を貰った。
「まぁ、少し時間は掛かるケドね」
「構わんよ、結果的に効果があれば問題無しだ」
その後は、簡単に報奨時の流れとマナーを教えて貰い、打合せは終了。
時間となり侯爵邸へ向かう。
侯爵邸では、控室に案内され開始時間を待っていると、侯爵様がやって来た。
「この度は‥」
挨拶をしようとしたら、手で制された。
「堅苦しい挨拶は、式典の時にしろ。今は普通に話せ」
「お久し振りです。式典の前に来てどうしたんです?」
「なに、それぞれの処分が決まったので、教えておこうと思ったまでよ」
〔リベスト〕の処分は多岐に渡った。
領主、組合長、警邏隊長は降格。やむなく指示に従った部分は酌量の余地はあるも、実行していた罪はあり、奪爵までは行かず降爵に留まった。
罰金を科し被害者への補償に充てる事となる。
協力していた組合員、隊員、ギルド職員、冒険者は罰金と、社会奉仕。役職持ちは降格、冒険者は2ランクダウンが下された。
前監察官は、賄賂・脱税・虚偽報告として奪爵と私財没収し追放。
どうやら敵対派閥に組みしていたらしく、重い罪に問われた。
敵対勢力の伯爵は、賄賂・脱税・不当搾取・恐喝・反乱未遂 等々、盛られた罪状で奪爵が決まったそうだ。
「爵位の決定は陛下しか出来んからな、レンから献上された品が役に立ったぞ」
「それは良かったと言うべきか、容赦ないと言うべきか……」
「なに、良くある事よ。きっかけを作ってくれて感謝してるぞ」
「悪い笑みを浮かべて感謝されてもねぇ。まあ、不当搾取が無くなって良かったよ」
「被害者には、没収した財産から補填に充てる。レシピも登録者に返るだろう」
「後任者は?」
「領主はこちらの息がかかった貴族が就任する。組合長は、副組合長が昇進だな。警邏隊は副隊長も加担していたので、騎士団から派遣し鍛え直しだ」
「〈リベスト〉も良くなるといいね〜」
「なるさ、膿を一掃出来たからな」
「他に聞きたい事はあるか?」
「帰って良い?」
「却下だ!此処で帰ると、違う意味で話題に上がるし、往生際が悪い。自業自得だ!」
「まぁ、自分でもしつこいと思ったよw」
「さて、本題だ。褒美は何がいい?金貨、領土、爵位好きなのを選べ」
「どれも要らないな〜」
「功績には褒美が必要だ。無ければ勝手におしつけるぞ」
「それは困る。そうだ、森の一部を貰えるかい?」
「森の一部?何故だ?」
「[魔力草]の群生地があってね、保護したいのさ」
地図を取出し、印を付ける。
「構わんが、明確な区分けは出来んぞ」
「それはオレがやるよ。保護区として土地の権利を明確にしたいのさ」
「報酬としては不足だが、無いよりはマシだな…判った、了承しよう」
「ありがとう、区画が出来たら案内するよ」
その後は、軽い雑談で終了。
いよいよ開始時間となり、広間に案内される。
名前が呼ばれ室内に入ると、多くの貴族が集まっていた。
指定された位置迄進み、膝を折って挨拶をすると、進行役の宰相に従い報奨の儀がスタート。
立ち上がり、領主様が1歩前に出ると、功績が読み上げられた。
「〔サーエンド〕領主バルド・テルフォン辺境伯、貴殿は自国領に新しい商業施設を作り、自国領の発展のみならず、南領地全体に多大なる利益をもたらしました。その功績を称え、金の盾と白金貨50枚を報奨とします」
「ネオの経済効果は凄まじいな、他領からの頼領が既に昨年の2倍なのだそうだ。まだ年の半分を過ぎた所なのにな」
「過分なる御言葉と報酬、謹んでお受け致します」
「これからも我が南領地の発展に寄与してくれ」
「尽力を尽くします」
領主様は一礼し、元の位置に戻る。
周りから拍手が起きるも、全て好意的とはいかないね。
「成上りが…」「たまたま…」と言う声も聞こえてきた。
普通なら聞こえ無い音量でも、しっかりとオレの耳は捉えている。
後でどんな貴族か聞いてみよう。
拍手が収まった頃合いでオレの名前が呼ばれた。
1歩前に進み、宰相を見ると困惑していた。
一度深い深呼吸をし、読み上げに入る。
「〔サーエンド〕在住のレン。貴殿の行った行為は類を見ないものであり、この場をもって知らしめるものとします。
献上品の〈ゴールデンワイバーン〉〈クリスタルゴート〉は王家に寄贈され、国宝となっています。
不正の告発は、〔サーエンド〕の人身売買壊滅、〔リベスト〕の不当搾取摘発。貴殿が居なければ未だに続いていたでしょう。
観光では、〔アグリカ〕での遺跡発見と博物館の建設。〔フィッシ〕では、海賊の隠れ家発見及び、財宝の寄付と博物館の建設を行い、メイン街道外領地の観光客誘致に寄与されました。
商業では、新しい食のレシピを考案し、ネオの根幹を築いたと言えるでしょう。ネオのみならず、レシピの恩恵に預かった飲食店も少なくありません」
周りからどよめきが起こり、宰相は深い深呼吸で一呼吸置き報告を続ける。
「尚、今回〔サーエンド〕領主より献上された[メガポーション]は、貴殿が開発したレシピです。今後の魔物退治に大きく貢献するでしょう」
ここで、先程領主様を蔑んでいた貴族から「発言の許可を頂きたい!」と声が挙がった。
侯爵様に「許す」と許可を貰い、申立てを行う。
「有難き幸せ。今しがた聞いた功績は、1人が行える範囲を超えています。他人の功績を奪ったのでは?」
ラスター子爵の申立てに宰相が応える。
「ラスター子爵は、侯爵様が検証も無く報奨を与えると言いたいのですか?」
「い、いえ、決してその様な意味ではありません。余りにも現実味がなく……」
「まぁ、子爵の仰っしゃりたい事も判ります。個人の功績としては、余りにも規格外過ぎますしね」
「ラスター子爵よ、お主は近衛兵50人と戦って勝てるか?」
「我が私兵団を総動員すれば、勝機はあるかと」
「レンはな、1人で精鋭50人を圧倒しよった。俺の目の前でな」
侯爵様が遠い目をしてる。
子爵は驚き、言葉も出ない。
「それに、お主も恩恵に預かっておるぞ」
「私がですか……」
「[キビー]で儲けたらしいな。使っていない領地を畑に変えただろう」
「……ま、まさか」
「そのまさかだよ、[砂糖]のレシピを作ったのは、今目の前に居るレンだ!」
周りが一斉にざわめき立つ。
領主様がポツリと「内緒にする約束が…」
宰相も頭を抱えている。
後で説教確定だね。
「静まれ!ここに居る貴族に問う。今の地位でお主らはどんな功績をあげた?」
一堂がしずまる中、侯爵様の話は続く。
「親から受け継いだ地位に胡座をかいて、責務を疎かにしていないか?子供は選民主義になってはおらぬか?意義がある者は、今此処で申立てよ!」
静まる中、「では、これから励め。民無くして領地は発展せぬぞ」
「「…「「御意に」」…」」
「良し、宰相続けろ」
宰相は溜息をつき、読み上げを続けた。
「以上功績を称え、白金の盾と白金貨100枚、及び〔アグリカ〕を経由する森の一部を報奨とします」




