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第69話 決着と答え合わせ

 領主邸に戻ると、査察はほぼ終えていた。

 領主も証拠を突き付けられ、観念したようだ。

 どうやら裏帳簿から隠し口座が見つかったみたい。

 しきりに否定していたが、しどろもどろになっている。


 少し経つと、ギルマスが最初にやって来た。

 査察官は別室で聞き取りを行なったが、ギルマスは問題無し。

 領主と繋がりがある冒険者の処分と、再発防止の注意で終わった。


 次に来たのは組合長だ。

 こちらは直接領主に加担した為、降格処分となった。

 抵抗したが、販売店への圧力と卸の不当停止は、ガディ商会も被害者だから現行犯だよね。

 横流しの損害賠償は、畜産組合に支払わせる予定だ。

 関わった職員も処分対象となる。


 それからかなり遅れて警邏隊の隊長がやって来た。

「遅れて申し訳ない。業務の引継ぎに手間取った」

「いえいえ、ご足労いただいて申し訳無い。早速だが、証拠品を燃やされた時の事を教えてくれ」

「了解しました」

 2人が別室に入ったのを確認して、オレはある場所へ向かった。


 向かった先は、警邏隊の隊長室。

 事前に査察官から捜査状を貰っている。

「さて、答え合わせをしますか」


 連絡をしてから様子を伺っていた時、隊長だけが直ぐに向かわず、隊長室に留まっていた。

 遅れた理由は引継ぎだが、隊員とは接触していない。


 隊長室に入ると、机の配置に違和感を覚えた。

 ほぼ部屋の中央に配置されていて、壁までの空間が広い。

「こういう場合は机か壁、横の本棚が怪しいよね〜」

 調べてみると、仕掛けがあったのは絨毯だった。

 机の下にスイッチがあり、押すと後ろの絨毯がめくれ上がる。

「地下室の隠し扉はっけ〜ん」

 蓋のような扉を開くと梯子があり、降りると通信施設の様な部屋があった。


 机に置かれた通信装置に、棚には書類のシンプルな部屋だ。

 書類は指示書・報告書が多く、帳簿も見受けられる。

「とりあえず、証拠品確保っと」

 精査は専門に任せる事にして、【アイテムボックス】に全部突っ込み領主邸に戻る。


 丁度休憩に入っていたので、押収した書類を見せると、査察官が青ざめた。

「まさかとは思いましたが、悪い予感が当たりましたか…」

「予想はしてた?」

「ええ、誰かの資金源になっている可能性はありました」

「お貴族様?」

「侯爵様に敵対する勢力の伯爵です」

「良く判るね」

「指示書に紋章がありましたよ。なんて不用意な…」

「焼却の指示を無視してたみたいだ」

「まあ、こちらとしては助かりますがねw」

「違いないw」


 休憩後は聞き取りでは無く、尋問に変わった。

 今日は、領主・組合長・警邏隊長を拘束し、侯爵様の指示を仰ぐそうだ。

 オレの関与はここ迄。

 後で結果を教えてもらおう。


 翌日、畜産組合に行き、副組合長に畜産農家を紹介して貰った。

 組合長が拘束されたので、混乱してると思ったが、以外と普通。

「組合長は実務に携わっていませんでしたし、承認も私が出来ますからね」

 案内の道すがら聞いてみると、納得の返答だったよw

「逆に、組合員は余計な業務が無くなると喜んでいますよw」

 かなりストレスがあったのかな?色々愚痴…じゃなく内情を教えてくれた。


「最初は[コッコ]の飼育場です。ここでは[エッグバード]も飼育してますよ」

 鶏舎と放牧場があり、通常は放し飼いかな。

「ありがとう、これなら肥料が作れそうだ」

「肥料とは?初めて聞きますね」

「作物を育てる栄養みたいな物だよ」

「それがここで出来るのですか?」

「まあ、初めてだから試行錯誤は必要だけどね」


 牧場主を紹介して貰い、肥料の説明を行う。

 牧場主と副組合長は半信半疑だったが、失敗しても買い取りする約束で、肥料作りを請け負ってくれた。

 成功すれば、捨てていた物がお金になると聞いて、決断してくれたよ。

 この世界は魔法があるので、発酵も短期間で済みそうだ。

 貝殻同様、結果が出るのはもう少し先だけどね。


 [ミルクカウ][ミートカウ]の牧場主にも依頼し、肥料確保は終了。

 後は肥料が出来たら、〔アグリカ〕で効果を試してみよう。


 数日、肥料作りに滞在していると、〔サーエンド〕の領主様から連絡が入った。

「レンよ、すまないが侯爵様に[メガポーション]のレシピを公開させて欲しい」

「それは構わないし、オレに許可は必要ないよ。領主様判断でオッケーさ」

「助かる」


 理由を聞くと、ネオの人気に伴い南領地全体が好景気となり、侯爵様から表彰されるんだとさ。

 その際、献上品に悩んだ結果、[メガポーション]のレシピが候補になったそうだ。


「侯爵領では、毎年定期的に魔物退治を行っていてな、その際大量の[ポーション]が必要なんだが…」

「[メガポーション]だと数を減らせるね」

「それによって、[ポーション]不足が解消出来る」

「良いと思うよ。元々、独占するつもりもないしね」

「レンならそう言うと思ったよ。それと、レンも侯爵様に呼ばれてるぞ」

「えっ?何で?」

「〔リベスト〕健全化の功労者だろ」

「辞退して良い?」

「無理だな、10日後〔サウザリアン〕で合流だ」

「献上品用意するの面倒くさい」

「心配するな、[メガポーション]で充分だ。元々レンのレシピだからな」


「〈ミラースワン〉でも良いか」

「…何色だ?」

「レインボー」

「頼むから止めておけ、目立ち過ぎる」

「判った、10日後にまた」

 通信を切った後、ガディさんに事情を話し、一度〔サーエンド〕に戻る事にした。

 護衛依頼を終わらせてから、〔サウザリアン〕に向かおう。

 ガディさんには申し訳ないので、[チーズインハンバーグ]のレシピを渡しておいた。

 恐縮していたが、目が金貨になっていたのは笑ったよw


 翌日の早朝、ギルドに立ち寄ると、侯爵様からの連絡とお礼を伝えられた。

「ありがとう。レンのお陰で、〔リベスト〕は救われたよ」

「大した事はしてないさ」

「大した事だから、侯爵様に呼ばれたんだろ」

「行きたくないんですがね」

「諦めな、お褒めの言葉と嫌味の1つでも聞いて来たら良いさw」

「でもまあ、今後〔リベスト〕がどう変わるのか楽しみだ」

「期待していてくれ、次に来たら見違えてるよ」

「期待してるよ」


 ギルドを出て、ガディ商会と待ち合わせ、〔リベスト〕を出発。

 道すがら、ガディさんには肥料の目処が立ったら、輸送の協力をお願いした。

「結果が楽しみですな」

「上手く行けば、生産量が増えるよ」

「〔アグリカ〕で試すのですか?」

「協力者が居ればね」

「紹介しますか?」

「それは助かる。是非お願いするよ」

「お任せ下さい」


「報酬は毛皮で良いかな?」

「珍しく、魔物が現れましたね。〈フォレストウルフ〉の群れですか」

「何かに追われている?」

「ここらへんでは〈ジャイアントスネーク〉か〈ロックアームベア〉ですかね」

「まあ、危険には変わりないから、討伐しておくか」

「毛皮を宜しくお願いしますね」

「任せて!」


 〈フォレストウルフ〉を討伐し、周りを確認してみると、〈ゴブリン〉の集落を発見。

 その集落を〈ジャイアントスネーク〉が狙っているね。

 〈フォレストウルフ〉を追っていたのは〈ロックアームベア〉みたい。

 今は〈コットンディア〉を追っている。

「〈シルクディア〉も交じっているから、ついでに確保しますか」


 狩り終えて馬車に戻ると、ガディさんが待ち構えていた。

「いつもながら見事ですな。この短時間でこれ程とは…」

「ちょっと魔物の数が多いかな?後で領主様に報告しておくか」

「ネオの人気で、街道沿いの討伐に偏っているかもしれませんな。奥まで手が回っていないのかも知れません」

「そうかもね。では、毛皮と皮は紹介の報酬で良いかな?」

「貰い過ぎですよ」

「じゃあ、〈ジャイアントスネーク〉の皮と、〈シルクディア〉を抜かしますか」

「それは譲れません。後生ですから勘弁して下さい」

「じゃあ、全部持っていって」

「貴方という人は……ありがとうございます。責任を持って紹介させて頂きますよ」


 その後は問題無く〔サーエンド〕に到着。

 野営で確保した素材をギルドに持っていくと、ギルマスに呼ばれた。


「レン、〔フィッシ〕と〔リベスト〕から連絡があった。随分とやらかしたみたいだなw」

「やらかしたなんて非道いな。まぁ、否定はしないけど。お陰で侯爵様から呼び出しだよ」

「領主様も巻き込んでな」

「それも否定出来ないねw」


「レンの功績は計り知れん。ネオの人気、〔フィッシ〕の復興、〔リベスト〕の健全化どれをとっても勲章ものだ」

「たまたまだけどね」

「たまたまねぇ…自業自得は変わらんか」

「そう言えば、〔リベスト〕と〔アルケラ〕の道中、魔物が増えている感じだったよ」

「そうなのか?判った、調査してみる」

「宜しく!お礼に[ソーセージ]は如何?」

「要ります!!」


 おおっと、フェイさんが参戦w

「良いタイミングだねw」

「覗いてたんじゃないだろうな」

「偶然ですよ偶然。査定が終わったので、金額を教えに来たんです」

「丁度良いや、食べて感想を聞かせてよ」

「任せて下さい!」


 感想の第一声が「酒が飲みてぇ」だったw

 ギルマスが駄々をこね出したので、晩酌用に少し渡してギルドを後にした。

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