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第68話 リベストの悪事

 急ぎ警邏隊の詰所に行くと、窓の一部が焦げていた。

 隊長が居たので、状況を聞いてみる。

「油断した。目を離した隙に証拠品を燃やされた」

 どうやら他で騒ぎがあり、対応している間に火を付けられたようだね。


「犯人は捕まえたの?」

「まだだ、今調査している」

「証拠品は全滅?」

「ああ、使え無いだろう」

「身内の仕業?」

「可能性は高いが、断定は出来ない」

「怪我人は?」

「幸いな事にいない」

「証拠品は残念だけど、怪我人が居なくて幸いだよ」

「ああ、奥の部屋だったから、閉じ込められずにすんだらしい」


 軽く現場を見せて貰い、ガディ商会に戻る。

「レンさん、どうでした?」

「渡した証拠品は燃えて全滅だったよ」

「せっかく手に入れた証拠品でしたのに、残念ですな」

「まあ、これで確信出来た事もあったから、良しとするかな」

「確信ですか」

「まだ、警邏隊に領主側が残っているのさ」

「この街の闇は深そうですかな?」

「そうでもないさ、以外と浅いと思うよ。一度〔サーエンド〕に戻るかい?」

 ガディさんは少し考えた後、「レンさんの好きにして宜しいですよ」と言ってくれた。


 理由を聞くと、「何が変わるのか見てみたい」だって。

 他に、「大きな変化の時は、販売チャンスも転がっている」と笑っていた。

 では、御言葉に甘えて、変化をもたらしますか。


 〔サウザリアン〕のガディ商会に通信で、3日後侯爵様の面会を取次いで貰い、〔リベスト〕を出発。

【身体強化】を使い、2日で〔サウザリアン〕に到着した。

 予定通り翌日の朝一番で面会を行う事が出来た。


「この度、貴重なお時間を頂きありがとう御座います」

「今更畏まるな、普通に話せ」

「一応対面を気にしたのに」

「皆、お主の功績を知っているので、不敬とは思わんさ。〔フィッシ〕での礼も出来ておらぬので、不義理はこちら側だ」

「オレにとって、関係者や遺族に返すのは、当たり前なんだけどね」

「今回は、その非常識な当たり前に感謝だな。一族の遺族から、感謝の言葉が多数届いたぞ」

「それは嬉しい報告だね」


「して、今回はどんな厄介事を持ち込んだ?」

「心外だなぁ、厄介事じゃあないとは言い切れないけど」

「皆に話せる事か?」

「出来れば、宰相さん迄にして欲しいかな」

「あい判った。宰相を残し全員退席せよ」

「しかしながら、警備の問題が…」

「ほぅ、レンを押さえる自信があるのだな」

「いゃ、それは…」

「レンに関しては全面的に信用せよ。それが一番安全だ」

 予想外の言葉にオレも驚いた。

 では、期待に応えましょうかね。


 宰相を除いて退席した後、本題をきり出す。

「〔リベスト〕の不正証拠品を持って来たよ」

「やはり、厄介事だったか…」

 証拠品をその場に出すと宰相も驚いていた。

「こんなにか、何故見つかっておらぬ」

「査察官も抱き込まれているね」

 関係者のリストに査察官の名前も記載されていた。

「一部は燃やされたよ」

「協力者が多いのだな。よし、調査団を派遣するぞ」

「その前に証拠品の精査だね。宰相さん、信頼出来る人員を借りれる?」

「判りました。何人必要ですかな」

「出来れば2日で精査を終わらせたい」

「了解しました。2の鐘過ぎには用意しましょう」

「助かるよ」


 面会を終了させ、宰相は準備に取り掛かる。

 オレはそれまで待機となったので、暇つぶしに厨房へ向かった。

 料理長に挨拶すると、成果を見てくれとせがまれたよ。

 確かに焼き方・素材・配分は改善されているが、[シュークリーム]の域を出ていなかった。

 なので、派生系のヒントを教えてあげよう。


 シュー生地を横に半分切り、クリームをたっぷり盛ったマリトッツォ風や、フルーツのカットをそのまま入れたフルーツシュー。

 プリンを皿に乗せ、周りをクリームとフルーツでデコレーションしたアラモードを作ってみせた。

 料理長は項垂れるも、直にやる気を見せて、作り方を聞いてきた。


 余談として、奥様とお子様がいつの間にか食べる準備をしていたり、メイドさんが獲物を見つけた目になっていたのは、どこでも一瞬だねw


 昼食後、部屋に案内されると、20人程の人が待機していた。

 宰相様も加わり証拠品の検証を行う。

 隠し部屋とチンピラから押収した証拠品を出すと、直ぐに分類が始まった。

 実は、燃えた証拠品は1/3程度で、残りは出さずに保管していたよ。

 奪われる可能性を考えていたが、まさか燃やすとは思わなかったさ。


 開始から数時間で判明したのは、横領・脱税・横流し・賄賂・不当搾取・恐喝示唆。

 かなり好き勝手してそうだ。

 賄賂の人数も金額もえげつない。

 人気レシピの不当搾取は3桁を超える。

 排除リストのトップはギルマスだった。

 先代の査察官も賄賂を受け取ってるね。

 アグー商会やポケ子爵の様に、懐かしい名前もあったよ。


 証拠品は充分と判断して、査察の打合せを行う。

 本来ならば、段階を踏んで侯爵様の了承が必要だが、今回は直接侯爵様から指示が出た。

 多分、侯爵様も判っていたが、証拠が不十分で動けなかったんだろうな。

 査察官に捏造されてれば仕方ないか。


 監察官の口座に直接振り込まれていたのでは無く、奥さんの旧姓口座に振り込まれていたのが判明。

 隠すのも念の入れようだ。

 直ぐに拘束され尋問が始まった。


 〔リベスト〕の査察は7日後に決まり、査察官3人と護衛団で編成される。

 オレは先に戻り、主要人物の監視を請け負った。

 ちょっと気になる点もあったからね。


 早速〔リベスト〕に戻り、ギルマスに話を聞いた。

「通信で査察の連絡が来たよ。領主にも通達済さ」

「どうやら、侯爵様も本腰らしく、態と日程より3日後にずらし油断を誘うと聞いたよ」

「本当かい?」

「あっ、今のは無しで!内緒だったw」

「何の意味があるんだい?」

「来ないんじゃないかと錯覚させたいんじゃない?」

「よく判らんが、準備はしておこうかね」

「くれぐれも今の話は内緒でw」

「www判ったよ。領主の悪事が明るみに出るのを、期待しないで待っているさ」


 ギルドの後には、警邏隊の隊長にも話を聞き、査察官を待つ事にした。

 屋台への嫌がらせは続いたが、その度に返り討ちにしたので問題無し。

 領主も今迄通りと高を括っているのだろう。

 慌てた様子は見られなかった。

 マークした主要人物も目立った動きは無く、逃げられる心配は無さそうだよ。


 査察官が来る予定日に門へ行くと、案の定誰も出迎えに来ていなかった。

 鐘2つを少し過ぎた頃に査察官は到着。

「査察官お疲れ様です」

「レンさん自らお出迎えありがとうございます。やはり予想通りの反応でしたな」

「ここ迄油断しているのは予想外ですよw」

「さて、早速答え合わせに行きますか」

 そう言って、査察官は領主邸に向かった。


 領主邸の門番は大慌てで領主を呼びに行く。

 出て来た領主は、明らかに不機嫌そうな顔を隠そうともせず、監察官に向かって横柄な態度を見せている。

「なんだなんだ、監察官の来訪は2日後だろう。何で今日来ているんだ!」

 使用人を怒鳴りながら門にやって来ると、今迄と違う査察官を見て目を見開いた。

「告知した予定日に来訪したのが驚きか?」

「連絡にいき違いがあった様ですな、2日後に来ると聞いていたもので…」


 しどろもどろとなった領主を見据え、「まぁ、普通に運営していれば問題あるまい。案内せよ」と屋敷に向かって歩き出した。

「ちょ、ちょっとお待ちを、今案内しますので…」

 狼狽えながら領主が追って行ったのを見届け、オレは警邏隊に向かう。


 警邏隊ではミーティングを行っていた。

 巡回ルートや人員配置の修正みたいだね。

「レンさん、非道いじゃないですか」

 少し気分を害した顔をし、隊長がやって来る。

「オレもびっくりだよ。だけど、予定通りだから問題は無いよね」

「それはそうですけど、誤情報は困ります」

「すまなかったね。査察官はさっき領主邸に入ったよ」

「判りました。巡回を強化します」


「それと、査察官から伝言」

「警邏隊にですか?」

「隊長にだよ。燃やされた時の状況の聞き取りだってさ」

「了解です。ミーティングが終了したら向います」

「宜しく」


 警邏隊を出て、次に向かうのは畜産組合。

 受付で組合長を呼んでもらうと、最初は断わられた。

「すみません、組合長は予定が詰まっており、約束のない方とはお会い出来ません」

「判りました。査察官からの用事だったのですが、出直します。査察官には、予約を入れるように伝えておきますね」

「ちょっとお待ち下さい。もう一度確認いたします」

 受付嬢は顔を青ざめ、奥に走って行った。


 少し待つと、奥から気怠そうに組合長がやって来る。「何の用だ」

「査察官から伝言だ。聞き取り調査するから、領主邸に来てくれだとさ」

「何を聞き取りするんだ?」

「さあね、内容は知らんよ。伝言は以上だ」

 畜産組合を早々に出て、最後はギルドに向かう。


 ギルマスに伝言をして、準備は完了。

 さて、皆んな素直に領主邸へ向かうかな?

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