第67話 チンピラホイホイ
早速、領主の嫌がらせが始まったよ。
明日の食材を買いに行くと、どの店でも断わられた。
ギルドにも、食材を売るなとお達しがあったそうだ。
まぁ、ギルドは関係無いと突っぱねたらしいが。
予想通りなので、明日は【アイテムボックス】に確保していた食材を使う。
仕込みを任せ、オレは食材を狩りに行く。
野生種をゲット出来れば、肉や腸は問題無し。
【自動解体】でギルドを通さずに済むしね。
他の嫌がらせは、屋台破損・ゴミの撒き散らし・チンピラの恐喝かな?
夜中に動くかもしれないので、【結界】の罠を張っておく。
一般の人を巻き込まない様に、立ち入り禁止の看板と柵を設置。
翌朝、3匹のチンピラが罠に掛かっていたw
喚き散らすのに疲れたのか、グッタリしているよ。
近づくと元気を取り戻したのか、盛んに怒鳴っているらしいが、こっちからは聞こえ無い。
そのまま無視して開店準備を行う。
「レンさん、ありゃどうなっているんだい?」
「オレのスキルで閉じ込めているだけさ」
「便利だな、夜の見張りが必要無いと聞いた時は半、信半疑だったが」
「野営の時と同じですか」
「ガディさんはお馴染みだよね」
「して、討伐は?w」
「暫く放置w 仲間ホイホイになって貰う予定」
「わはは、直ぐに掛かりそうですなw」
そんな軽口を交わしながら、開店準備を進めて行く。
開店時間となり客が並ぶ中、【結界】に捕らえられたチンピラは見世物になっていた。
周りに柵を張っておく。"近づくと同じ目に遭うので注意"の看板付き。
販売が進む中、【結界】中は10匹迄に増えている。
周りの客は、笑いながらその光景を見ていた。
仲間が助けに来ても声が届かず、状況が判らないので自分から入ってしまう。
新しいチンピラが来る度、周りの客はワクワクしながら見ているので、正に見世物だよね。
2の鐘近くで食材が無くなり販売終了。
並んでいる客から文句が出たが、食材購入を止められてる事を伝えると、怒りの矛先が変わった。
「また、組合長と領主の仕業か。兄ちゃんめげずに頑張りな」と励ましてくれる。
撤収準備をしていると、料理人の1人が「こいつらどうするんで?」と聞いてきた。
「このまま放置しておくよ。また来られたら面倒だからねw」
「何気にエゲツねぇw」
柵を二重にして撤収した。
翌朝、【結界】は30匹以上のチンピラで溢れかえっていた。
開店準備を進めていると、頭らしき人物が怒鳴り込んできたが、煩いので【結界】に押し込んでおいたよ。
どうやら全員捕らえられたらしく、それ以上は掛かる事は無かった。
開店から暫くすると、行列の奥から防具を着た3名が近づいて来る。
「警邏隊のお出ましだ。あそこの副隊長は領主の子飼いたぜ」
どうやら、この街の警察みたいな組織らしい。
「不当に市民を拘束しているのはお前らか!」
「とんでも無い、注意書きを無視して、彼らが勝手に入っているのさ」
「そんな事はどうでもいい、直ぐに解放せよ」
「出来ればそうしたいんだがね、解除の方法が判らないんだ」
「お前がやったんだろうが」
「旅の商人に貰った防犯の魔道具だったんだが、効果や解除方法が判らなかったんで、注意書きをしたのさ。だから、好きにして良いよ」
「その魔道具は何処だ!」
「使ったら消えちまったよ。あっ、近づいたら同じ目に合うから気をつけな」
警邏隊もどうして言い方分からず、その場に立ち尽くす。
「こうなったら、お前等を拘束する」
「良いけど、食事や水はあんたらがやってくれるのかい?近づき過ぎると捕まるから気を付けな」
「チッ、一度戻って副隊長の指示を仰ぐ。行くぞ」
なす術もなく警邏隊が去ると、周りから歓声が上がる。
「兄ちゃん、良くやってくれた」
「ざまあみろだw」
「スカッとした、いい気味だ」
と声を掛けられた。
余程嫌われているんだな。
間もなく鐘2つ頃、件の副隊長が数名を引き連れてやって来た。
「ここか?不敬な輩がいる店は」
オレは態と煽ってみる。
「誰だアンタ、チンピラの元締めか?」
「なっ、オレは警邏隊の副隊長だ」
「ああ、領主の腰巾着か。あれ?領主の犬だったか?」
「貴様、言った事を後悔するなよ」
「喚き散らすだけで何も出来ないんだろ?其処に捕まっている奴等も助けず、見てるだけだろ?」
「何だと!こんなトラップ簡単に破壊してやる」
そう言って剣を振り被ると、【結界】に叩き付ける。
剣が弾かれ、バランスを崩し、そのまま【結界】にイン。
周りが唖然としてる中、当の本人は中で喚いているが、何も聞こえ無い。
丁度その時、警邏隊の隊長がやって来た。
騒ぎを収める為にやって来きたらしい。
料理人から隊長は、領主に逆らっていると耳打ちされた。
ならばと、【結界】の効果を変更する。
外からの声を聞こえなくして、中の声を聞こえる様にしてみる。
「この間抜け野郎、自分から入りやがって」
「それはお前等もだろう。一般人一人も脅せず何をやってる」
「まさか、こんなトラップがあると誰が思う。領主様からは簡単な仕事だと聞かされていたんだよ」
「お陰で領主様はお怒りだ。こっちまでとばっちりが来る程にな」
「それで捕まってたら、ザマァねえや。充分間抜けだよ」
こちらに聞こえて無いと思っているので、罵り合いの暴露大会が始まった。
隊長は部下に会話を記録させ、副隊長の部下を、気づかれ無い様に拘束して行く。
罪状は、不当な恐喝と不正取引だ。
罵り合いが続く中、隊長がこっちにやって来た。
「迷惑を掛けて申し訳無い。警邏隊隊長のザジだ」
「冒険者のレンだ。コメディは楽しめてるかいw」
「あぁ、頭が痛い程楽しめてるよ」
「まさか自供してくれるとはね…」
「まぁ、判ってはいる事だがな」
「暫くこのまま放置するから、調べるならチャンスだよね」
「恩に着る」
そう言って、隊長は戻って行った。
2日後、流石に折れたのか、助けを懇願して来た。
特に切羽詰まっていたのは副隊長だ。
多分、バレたら不味い証拠品があるのかな?
多分手遅れだけどね。
夜に期限切れを装い【結界】を解くと、一目散に逃げて行った。
勿論全員マーキングをしてるけど。
チンピラ達はアジトに、副隊長は警邏隊の隊舎に戻る。
その後、街を出て小屋みたいな所に入った。
更に移動して何も無い所で止まったよ。
地下かな?隠し部屋だろうね。
翌日、隊長を連れてそこに行くと、小さな小屋があった。
調べると、床から地下に通じる隠し通路発見。
奥の隠し部屋には書類がわんさか。
何年分の悪事なんだろうね。
隊長に口止めをお願いして【アイテムボックス】にしまい撤収したよ。
「まさかこれ程とは……」
隊長は驚いていたので、予想以上の悪さなのだろう。
証拠品の精査は隊長に任せて、次はチンピラのアジトに向かう。
「お邪魔するよ〜」
緩い調子でアジトに入ると、チンピラ達が色めき立つ。
元締めらしき人物が周りを諌め、「何しに来やがった」と質問してきた。
「誰に頼まれたか教えて貰いに来たよ」
「……だ、誰が教えるか!」
元締めは、一瞬呆気に取られて我に返る。
「そお?反省してない様だから、同じ罠を設置して行くか。引っ掛からない様注意しなね」
出て行こうとすると、「ま、待て!」
高圧な態度を崩さないので、"チラッ"と一瞥してドアに向かう。
元締めは慌てた様子で「待ってくれ」と言い換える。
"ボソッ"と「今度は誰が食事をくれるんだろうか…」と言うと、周りのチンピラも青ざめた。
「まぁ、他で証拠品は集めたから、此処はどうなってもいいか。邪魔したな」
態と入口に罠を仕掛けたように見せかけると、「判った、依頼主はいえねぇが、証拠品を渡すんで勘弁してくれ」
手下に合図を送り、持って来るよう指示を出す。
「証拠品が有るのかい?」
「証拠隠しの場所にされているのさ」
「成る程ね、警邏隊の副隊長はグルだし、侯爵様の査察があっても、此処迄は来ないか」
「そう言うこった。特に脱税の帳簿が揃っているぜ」
「急に協力的になったな」
「依頼主が駄目になると、此処での旨みが無くなるからな、お前の手が伸びない街に移動だ」
「見逃すとでも?」
「加担している役人も載っているから、小銭稼ぎの小物ぐらいは見逃せよ」
手下が持って来た証拠品は、20個以上の木箱にぎっしりと詰まっていた。
脱税だけでは無く、貴族との裏取引もやっていたらしい。
「次は真っ当に生きる事を勧めるよ」
「今更性根は変えられんさ、腕っぷしで生きてくしかないからな」
「南領地はオレの手が伸びるから気を付けな」
「了解、できる限り遠くに逃げるさ」
証拠品を【アイテムボックス】に入れ、ガディ商会に戻ると、ガディさんが慌てて近づいて来る。
「レンさん、大変です。警邏隊詰所で火事があったみたいです」
さて、そうきたか。




