第66話 話にならない
翌日ギルドに行くと、お約束の解体場。
今回も野営時の狩りだったが、以外と収穫は多かった。
毛皮類はガディさんが買い取ったので、素材は爪や牙、角がメイン。
肉は売らずに取って置いた。
査定が終わる迄の間、解体の職員に話を聞くと、〈コットンシープ〉の解体もあるらしい。
食用で解体する事は少ないが、怪我や寿命近くの個体はコストが合わない為、解体に出て来るそうだ。
肉は臭いに癖があるので、食べる人も少ないんだとか。
勿論、内蔵は全て廃棄になるとの事。
「オレからギルドに依頼を出すのは可能だよね?」
「勿論可能さ」
「じゃあ、〈コットンシープ〉の解体があったら、腸を売ってくれないか?」
「売る事は出来るが、何に使うんだ?」
「今は何とも言えないかな。強いて言えば、新しい料理に使えるかの確認だね」
「食えるとは思えんが、2の鐘過ぎに解体はあるぞ」
「ラッキー、直ぐに受付してくるよ」
受付でも不思議がられたが、料理に使うと言えば驚かれるので、誤魔化しておいた。
一度工房へ行き、ソーセージメーカーを作る。
ガンテツさんに断りを入れて、工房を使わせて貰う。
ソーセージメーカーは、円筒形の下側から挽肉が出て来る、押し出し式を作成。
ミートチョッパーも、小型を1台作り準備万端。
昼過ぎに依頼品を受け取り、試作を作ってみた。
ガディさんに料理人を依頼すると、喜んで集めてくれたよw
4種類の挽肉を使い、味比べを行おう。
[ミートカウ][コッコ][ピグ]の他に、[ミートカウ]と[ピグ]の合挽きを使用。
調味料や[卵]を使って、[ハンバーグ]と[ソーセージ]を作った。
勿論[コットンシープ]の腸は、洗浄と【クリーン】で処理済さ。
[ソーセージ]は焼きと茹でを試してみる。
ガディさんは、一口食べるやいなや「直にレシピを作成いまします!」と言い、料理人を連れて行った。
ちゃっかり、自分用の[ハンバーグ]と[ソーセージ]は持っていったねw
さてさて、成功したから夕食にギルマスとガンテツさんを呼んで試食して貰いますか。
打合せを兼ねた夕食を行った所、ギルマスとガンテツさんが興味を示し、話はどんどん進んで行った。
「まさか、[コットンシープ]の腸にこんな使い道があったとはね」
ギルマスが[ソーセージ]を頬張りながら感心している。
「[ハンバーグ]も歯が弱い年寄りや、子供も食べれるな。切った途端に肉汁がすげぇ、旨味が閉じこめられてる感じだ」
「お酒ともあいますね〜、つける調味料で味が変わって、幾らでも食べれますな」
[ソーセージ]につける調味料は、[マヨネーズ][ケチャップ][ソイ]と、[トウガラー]と[ソイ]を混ぜた[マヨネーズ]を用意した。
[塩][胡椒]で味付けしてあるので、そのままでも美味しい。
「では、レシピはギルドで販売するよ。料理のレシピ代はレンが20%、ガディが10%の権利で良いのかい?」
「オレは良いよ。ガディさんは?」
「私は10%でも濡れ手に粟ですな。しかも腸とミートチョッパー、ソーセージメーカーが販売出来るおまけ付きですからね」
「ミートチョッパーとソーセージメーカーの作成は任せろ。レシピ代の権利は、おれが30%も貰って良いのか?」
「良いよ、図面に落とし込んでくれたお礼だからね」
他にも[ピグ]の腸を使った[フランクフルト]、[ミートカウ]の腸を使った[ボローニャ]を教えておいた。
「腸の処理は一緒。太さが違うから、[ボローニャ]は切って焼くと良いよ。腸の保存は塩漬けにして、販売する時塩抜きしてから使う事を教るのが必要かな」
暫くは腸の名前を[ソーセージフィルム][フランクフルトフィルム][ボローニャフィルム]として素材を隠し、独占出来る様にした。
残念ながら、機械は直に真似されるので、取分を30%で高くしたよ。
腸の確保はギルドに依頼。
解体業者も巻き込むそうだ。
バレても処理が不十分だと臭みが残る為、直ぐには真似されないと思う。
なるべく秘匿しようとするのには訳があった。
事前に「レシピを出すなら注意しな、真似出来ない部品を作る事だね」とギルマスから忠告を受けていたんだ。
「ここの領主はお金に汚くてね、権利を奪い取ってしまうのさ」
「畜産組合長もグルだぞ。畜産の仕入れをストップすると仲間内から聞いた」
「だから、レシピを出す時は、別の街で申請するのが普通になってる」
「じゃあ、このレシピも可能性があるね」
「可能性どころか100%食い付くよ」
「成る程、面白そうだねw」
「呆れた、面白がるのはアンタだけだよw」
その後、料理やデザートを追加して、打合せと言う宴会は夜中まで続いた。
販売スタートは大型の[ミートチョッパー]が出来てからとし、その間は材料集め。
ギルドに協力を仰ぎ、可能な限り腸を集めて貰う。
料理人を増やし、料理の指導を行えば、販売準備完了。
オレは!ガンテツさんと[ミートチョッパー][ソーセージメーカー]の組み立て。
明日は全員で仕込みだよ。
挽肉を冷やすのを悩んだが、氷室を用意して解決。
冷蔵庫と冷凍庫を作りたいね。
さて、〔リベスト〕でも食の発展を促しましょうかね。
〔リベスト〕でも朝市で屋台を設置し販売。
[ソーセージ][フランクフルト][ボローニャ]は大鍋で茹でて、売る直前に焼いて提供。
[マヨネーズ]を添えて完成だ。
[ハンバーグ]は[フライドポテト]を添えて、[ケチャップ]をかければ完成。
早速売り込みを行う。
「さあさあ、新しい料理を食べてみないかい、本日初めてお目見えだ。一度食べると、やみつき間違い無し!無くなり次第終了だから、早めに食べるのをオススメするよ!!」
威勢の良い掛け声で販売スタート。
数人が遠巻きに見ているので、ダメ押しの一声を掛ける。
「本日のみ特別価格!初日サービスで割引価格だ。今日を逃すと後悔するよ!!」
その言葉に釣られたのか、若い冒険者の3人組パーティーが食い付いてきた。
「どの街でも見た事の無い形だ。[ハンバーグ]とやらは[ステーキ]とは違うのかい?」
「子供や歯の弱い老人でも食べられる料理さ、[ステーキ]の様な噛み応えは無いが、旨さは引けを取らないぜ」
悩んでいる若者に最後の一押し。
「全種類買ってくれたら、第1号の客のみ半額だ!!」
「買った!」
勢いで買ってくれたが、周りは味の評価が気になっているね。様子を見ている。
「うまっ、何だこの食感、"パリッ"とした皮の後に"ジュワッ"とした肉汁が溢れてくる」
「[フランクフルト]も同じだ、大きいから食べ応えがある!」
「[ボローニャ]は[ステーキ]みたいだ。柔らかさと輪切りで食べやすい」
「[ハンバーグ]も肉汁が凄い。柔らかいのに、肉を食べた満足感があるよ。[ケチャップ]が程よい酸味で[フライドポテト]との相性も良いね」
「「「どれも美味い!」」」
サクラかと思う位、声を揃えて宣伝してくれたよw
最初の客をゲット出来れば、後は簡単。
以降、食べた人から口コミで広がり、直ぐに行列となった。
途中で"お一人様一品づつ"にする程だ。
2の鐘が近づき、もう直ぐ食材が無くなろうとした時、行列の奥から怒鳴り声が聞こえてくる。
「どげ、どけ、どけぇ〜。列の先頭は何処だ!」
近づいてきたのは、小太りの中年男性。
屋台に来るやいなや、「誰の許可を得て屋台を出している!」と怒鳴り声をあげた。
料理人が耳打ちして、領主だと教えてくれる。
「ギルドに屋台の許可を貰っているが」
「〔リベスト〕では、領主に許可を取るのを知らんのか」
「知りないね、そんなルール聞いた事が無い。ギルドでも説明が無かったしさ」
「さては、この街の者では無いな。ここでは私の許可無くして営業は認めん。罰として、今日の売上と料理のレシピを差し出せ!」
ドヤ顔して無茶を言い出す領主を見て、「話にならない」と突っぱねる。
ギルマスの忠告通り、レシピを取り上げに来たよ。
「何だ、領主の名を騙った物乞いか?普通の領主ならあり得ないと判るだろうに。本当に領主なら厚顔無恥ものだね、盗人と変わりない。それともイカれてるのか?」
盛大に煽りをかます。
領主は見る見る顔を真っ赤にさせ、益々声を荒くして行く。
「貴様、いい度胸だが後悔するぞ」
「頭の悪いおっちゃんが何を言う。ほら、鉄貨一枚恵んでやるからどっか行きな、商売の邪魔だ」
周りから笑いが溢れる。
「おのれ〜、その言葉後悔するなよ」
捨て台詞を残し、領主は去って行った。
しっかり鉄貨を持ってね。
騒ぎの後、食材を売り切って店じまい。
「明日もここで売るから、また買ってくれよ」
何人かの客に「明日は気をつけろよ」と声をかけられた。
まぁ、ここの住人なら見慣れた光景なんだろうな。




