第65話 リベストへ
調査団から連絡があり、今日は財宝の引き渡し。
早速ガディさんと一緒に向かうと、領主様も来ていた。
「レン殿、お待たせしました」
「団長もお疲れ様」
「財宝は別室にご用意しています。こちらがリストになります」
リストには、ずらっと品名と個数が書かれている。
「総点数は2,000点以上です。半分以上は金貨ですがね」
リストは項目で別れていて、美術品・武器・防具・書籍・装飾品・その他となっていた。
ガディさんもリストを見るが、品数の多さに驚きを隠せなかった。
「凄い量ですな。価値は不明ですが、金貨だけでも一生遊んで暮らせますな」
確かに、金貨の他に白金貨もあり、3桁が記載されている。
「では、保管しているホールに案内致します」
宴会場の様な広い部屋に案内されると、所狭しと財宝が並べられていた。
見るやいなや、ガディさんが驚きの声が上がる。
「有名画家の絵が何点も…あの剣の色はミスリル…魔法書まで…こりゃあ、キチンと鑑定した方が良さそうですな」
領主様も驚きを隠せない。
「まさか、これ程の量だとは…」
固まる2人を他所に、団長は説明を続ける。
「ギルド証・紋章入・名前入は省いています。後日、侯爵様よりお礼の品が贈られると聞きました」
「ありがとう。何かサインは必要?」
「ここに署名をお願いします」
引き渡し証にサインをして、引き渡し完了。
「必要でしたら、指定の場所まで移動させますが」
「大丈夫だよ」
「ではこれで失礼させて頂きます」
団長が帰った後、領主様と打合せを行う。
一先ず領主邸に運び、専属の鑑定士に見てもらう事にした。
その間、展示場所・保管方法・警備体制・入館料・ツアーガイドを決めて行く。
勿論今は概略で、細かい運用は〔フィッシ〕の幹部にお任せする。
「領主様、領主様〜!」
突然ドアがノックされ、先程の鑑定士が興奮気味にやって来た。
「どうしました?」
「お願いです!時間を掛けて鑑定させて下さい。殆どの品に正式な鑑定書が必要です」
通常余り価値が無い品は、簡易鑑定書で充分なのだが。
「美術品や剣・防具には巨匠のサインが。しかも魔剣クラスです。魔法書は上級の【氷魔法】【雷魔法】、鉱物には[オリハルコン]がありました」
[はっ?]
「しかも、まだ1/3も見ていません!」
「レンさん、こりゃあやらかしましたな。下手をすると侯爵家の資産を上回りますぞ」
ガディさんが面白がる。
領主様は顔面蒼白だ。
「判りましたが、可能な限り急いで下さい。鑑定が済み次第、侯爵様と相談します」
どうやら領主様の手に余る品々だった。
ガディさん曰く、侯爵家所有として展示し、数点を王家に献上となるらしい。
あくまでも、歴史館目的の譲渡により、献上品は2〜3点に留まるのではと予想。
過度に押収されそうな場合は、譲渡を無効にしたら良いの助言。
まぁ、侯爵様にお任せしますか。
領主様と譲渡の契約書を交わし、再度財宝の部屋に戻る。
領主様もガディさんも、ワクワクしながら鑑定士に聞いている。
まるで少年みたいだよw
鑑定士もワクワクしてそうなのは、気の所為では無いだろう。
勿論、1日で終わるべくもなく、今日は終了となった。
2日後は〔フィッシ〕を出発するので、後は領主様にお任せ。
ガディさんも支店長に指示を出し、これからの運用を任せている。
こういった時も通信の魔道具は役に立ちそうだ。
以外と長く滞在した〔フィッシ〕だったが、気づけばあっという間だったよ。
出発の時には、領主様やギルマス、組合長が見送ってくれた。
過分に感謝されたが、やっぱり気恥ずかしいや。
今後の発展に期待しよう。
道すがら、ガディさんに〔リベスト〕の情報を聞いた。
畜産の街で有名なのが〔リベスト〕。
主に[エッグバード][ミルクカウ][ミートカウ][コットンシープ][コッコ]の繁殖を行い、輸出を行っているそうだ。
まだ冷蔵・冷凍の輸送技術がないので、生きたまま取引を行っている。
街の外には野生種もいるらしい。
「レンさんのレシピは〔リベスト〕でも人気ですよ」
「未だにレシピ代が振り込まれているんだよね〜」
「〔フィッシ〕でも分かる通り、味や調理法の変化は衝撃的でしたから」
「新しい肉料理はネオで出すべきだよね」
「魔道具を設置する時、領主様に聞いたら如何です?」
「そうするかな。でも、調理する専用の機械が無いんだよね~」
「複雑な作りなのですか?」
「説明が難しいのさ」
考えている料理は[ハンバーグ]と[ソーセージ]だ。
どちらも挽肉を使うので、ミートチョッパーが欲しい。
自分で作れるが、設計図に落とし込めない。
「現物があれば、職人にお任せしたらどうですか?」
「えっ、図面とかに出来るの!」
「腕の良い職人なら出来ますよ。〔リベスト〕にもいますから紹介しましょうか?」
「助かる、お願いしますだよ」
「わはは、変な言い方ですな。お任せ下さい」
(何とか挽肉の目処は付きそうだね。後は、羊の腸かな?肥料も出来そうだし、〔リベスト〕でもやりたい事いっぱいあるな〜)
「ガディさん、〔リベスト〕に着いたら、畜産業者も紹介出来る?」
「組合がありますのて、紹介は出来ますよ」
「助かる!紹介宜しく」
「〔リベスト〕でも一波乱有りそうですな」
「そんな事は無いさ……多分」
1日雨で足止めがあった他は、順調に〔リベスト〕到着。
早速魔道具を設置し、領主様と通信を行う。
〔フィッシ〕の件では小言を言われたが、被災後の状況を知っているので、お叱りは最小限で終了。
新メニューについても了承してくれたよ。
何でも、〔サーエンド〕ばかり発展して、他の領主様から嫌味を言われていたらしい。
「程々にしろよ」と釘を刺されたが、"ホッ"とした表情は見逃さなかったよ。
夕食に屋台を回ると、串焼き・[唐揚げ]が多い。
やはり調味料は[塩][胡椒]がメインだね。
素材は[ミートカウ][ボア][コッコ][ピグ]は定番。
魔物肉を扱っている屋台もあった。
食堂や酒場だと、[ステーキ]や炒め物もメニューにあるね。
やはり挽肉を使った料理ななかった。
翌日、早速鍛冶屋を紹介してもらう。
看板には〈鍛冶屋ガンテツ〉の文字。
いかにもな名前だよ。
「今日は〜誰かいるかい?」
「はいよ!今いくぜ」
出て来たのはガタイの良い男性。
「ガディさんに紹介されたんだが、聞いているかい?」
「おぅ、お前さんがレンか。おれは〈ガンテツ〉だ、宜しく!」
どうやら職人気質の頑固親父では無さそうだ。
「新しい道具を作りたいんだが、図面に落とせなくてね。頼めるかい?」
「大概の物は出来るが、実物を見てみないとな」
「すまない、これから作るんだが、鍛冶場を借りれないだろうか?」
「いいぜ、新しい道具も興味あるしな」
「助かるよ、2の鐘までには出来るかな」
「早いな、単純な構造か?」
「どうだろう、試行錯誤はすると思う」
「材料はどうする?」
「[鉄鉱石]のインゴットがあるから、試作はそれを使うよ」
「判った、好きに使え」
以前に習得した【精錬】と【鍛冶】を使い部品を作っていく。
こういった時に便利な【検索】スキル。
見た事のある物ならば、頭に浮かんでくるから、とても便利。
全て鉄だと重くなるから、初めは小さいスケールで作っていった。
「出来た!」
完成したのは小型の[ミートチョッパー]。
早速使ってみたが、挽肉ではなく細切れだった。
「ん~~、粗すぎるな」
「もっと細かくするなら、刃の数を増やすか、もう一枚増やすかだな」
親方のアドバイスで、刃の数を倍にし、二重に修正。
押し出す速度も遅くすると、挽肉が出来上がった。
親方に要望を伝え、図面に落とし込んで貰う。
「これの5倍の大きさじゃあ、鉄鉱石なら重すぎるな。肉を扱うなら駄目になるのも早い」
「良い素材ある?」
「[加工鉄]がオススメだ。軽くて耐久性も良い。加工もし易いしな。後、大きくなると回すのも大変だぞ」
「最終的には、【回転】の魔道具を取り付けようと考えてる」
「少し歯車を追加するぞ。どのみちこのままじゃ動かん」
「任せるよ。どの時間が必要?」
「図面には2日だな。制作の時は手伝ってくれ」
「了解、3日後にまた来るよ。代金は、前金で金貨10枚渡しておくよ。足りなかったら言ってね」
「初期費用としても多いぞ」
「まあ、改善費も含めてだから、気にしないでくれ」
ミートチョッパーの目処が付いたので、次は畜産業者へ向かう。
〔リベスト〕でも畜産組合があるらしく、副組合長を紹介して貰った。
副組合長の名前はタム、40代半ばの男性だ。
お互い挨拶を交わし、現場や加工品を見せて貰う。
基本は放牧での飼育だ。
魔物避けの魔道柵で囲った範囲が飼育場で、畜舎はあるが余り使われていないみたいだね。
解体はギルドか専属業者が行い、飼育がメイン。
なので、先ずはギルドと交渉かな。




