第64話 面倒なのは押し付けるのが一番!
領主様がなかなか折れてくれないので、1つお願いをした。
「組合長、[ホウタ]の殻はどうしてる?」
「基本は廃棄ですぞ。綺麗な貝殻は装飾でも使いますな」
「じゃあ、それを細かく砕いて、貰うのは出来るね」
「それは出来ますが、何に使うのですかな?」
「肥料として使うのさ。一部の野菜は、貝殻の成分を好むからね」
phの概念が無いから、説明が難しい。
「レンさん、それは本当ですか?」
領主様が食い付いてきた。
「確か、[キャベー][ハクサー][トマー][レスター]が良かったハズだよ。肥料として使うのさ」
「肥料とは何ですか?」
「育ちを良くしたり、土壌の改良をする物だね」
「あぁ、落ち葉を混ぜると、育ちが良くなるアレですか」
ガディさんは、〔アグリカ〕の農家に聞いたのかな。
「そう、土の栄養を追加したり、バランスを整えたり出来るのさ」
「本当に、レンさんの頭の中を見てみたいですな。農業の知識もあるんですか?」
「聞きかじった程度だよ。本当の所は試してみないと判らないさ」
「上手く行けば、廃棄していた[ホウタ]の殻も使い道があると言う事ですよね」
「それも〔フィッシ〕の特産になるね」
領主様とガディさんの目が輝く。
「話しを戻すけど、砕いた殻が大量に欲しいのさ」
「了解しましたぞ。どんな状態が欲しいのか教えて下され」
「この後説明するよ。そのままだと使えないからね」
砕いた殻を報酬として貰う事に決まった後、領主様が"ボソッ"と呟いた。
「あれ?報酬になっていないのでは。ともすれば、こちらに利益があるような…」
聞こえていたがスルー。
深く考えないでいて貰おう。
領主様との面会を終えて、ガディ商会に向かう。
[ホウタ]の殻を処理して見せる。
作業は至極簡単。洗浄→乾燥→粉砕だ。
魔法を使えれば、あっと言う間に完成。
粉塵対策も説明済。
「これで肥料とやらになるんかい?」
「そうだよ。まぁ、肥料と言っても一部だけどね」
「レン殿、こいつは売れるのかな?」
「売れるとしても、まだ先の話しだね。作物で試してみないと判らないさ」
その後はレシピ作成や料理人育成に忙しく、気づけば更に7日が過ぎていた。
料理人や販売体制に目処がたった頃、洞窟調査の聞き取りが始まった。
まぁ、聞き取りと言っても、発見当時の説明だけだけどね。
調査でも、団員の日記が発見されて、当時の状況が判ったらしい。
根城にしていたのは、ラディック海賊団。
当時は〔フィッシ〕周辺の海域を縄張りとして、商船や客船を襲い、巷を賑わせていたようだ。
侯爵家や〔フィッシ〕ギルドも討伐隊を出したが、返り討ちに遭っている。
日記は船団の古参が書いたものらしい。
当時の状況が複数に渡って記録されていた。
一番新しい日記から、魔物に全滅させられたみたいだよ。
どうやら、岩礁地帯に大型魔物が複数体住み着き、根城から出れなくなり、食料と水が不足。
討伐を試みたが、全滅したらしい。
日記は討伐前日で途切れていた。
日記の日付から、当時の大型魔物の出没を調べると、〈ドラゴンホエール〉の2匹が記録に残っている。
奇しくも、海賊団が討伐を試みたお陰で、住処を変えたのだろう。
〈ドラゴンホエール〉の討伐記録は見当たらなかった。
押収した財宝は、調査が終了次第、オレに返されるみたいだね。
調査団の団長が、相談を持ちかけてきた。
「財宝は、第一発見者のレンさんが、権利を持っているので、調査が完了次第お返しします」
「判った、調査終了はいつ頃になりそうかな?」
「事件性が無いので、あと数日の予定です。日記から詳しい状況も判りましたし」
「この後呼ばれる事はある?」
「財宝の返却時ですね。その時に侯爵家からご相談がありまして」
「なんだろう」
「侯爵家の紋章が入った品は、侯爵家が買い取りたいそうです」
多分、海賊の戦利品に、侯爵家縁の品があるのは、都合が悪いのだろう。
「良いよ、遺族への返却と同じで、無償譲渡するよ」
「助かります。では、侯爵様にはこちらから報告致します」
「頼んだよ」
「今、リストを作成していますが、かなり価値のある物がありそうですね」
どうやら、有名画家の絵画や魔剣、貴重な魔法書があるらしい。
「遺族が判る物は、無償で返却OKだからね」
「お聞きしています。ギルド証・紋章入・名前入の返却は、ギルドと協力で返却にあたります」
「洞窟はどうなるの?」
「〔フィッシ〕の管理になりますね」
「教えてくれてありがとう」
「いえいえ。これで終了です。では返却の時にまた」
聞き取りを終えたその足で、領主邸に向かう。
既に面会の約束はしてあるので、直ぐに応接室へ通された。
「レンさんお待たせしました。何でも相談があるとの事で」
「忙しい中申し訳ないね。実は、受け取る財宝の使い道でお願いがあるのさ」
「財宝の使い道ですか?」
「そう、引き渡されてもめんど……管理出来ないから、〔フィッシ〕に寄贈しようかなと」
「今、面倒くさいと言いかけましたねw」
「問合せや寄付の無心が多そうだからねw」
面倒なのは押し付けるのが一番!
「でも宜しいので?一財産ですよ」
「ん~~、お金はレシピでどんどん入って来るから、使い切れないんだよね」
「贅沢な悩みですね」
「だから、〔フィッシ〕で利用した方が良いと思ってさ」
「と、言いますと?」
「歴史館を作らないかい。見つかった洞窟も利用して、歴史と夢を展示するのさ」
「歴史は判るのですが、夢とは?」
「財宝を陳列して、発見したら一攫千金の夢を見て貰おうかと。実際に財宝を見たら、冒険者は夢を見るよね」
「レンさん、貴方という人は……」
「初期費用は財宝の金貨を一部使用して、その後は入館料や洞窟ツアーで賄うと、観光の名所が増えるんじゃない?」
ふと見ると、領主様が震えていた。
話しを聞くと、災害から今迄、関係者は悩んでいたらしい。
領主様曰く、復興資金確保・漁獲量拡大・観光客の回復に加え、廃棄品の活用・観光名物、名所の追加。
「レンさんは、全員悩んでいた問題点を改善されただけでは無く、それ以上の効果をもたらしてくれたんです」
「それは、大袈裟では?」
「とんでもない!しかも、数日の内にですよ!!」
領主様の迫力に黙るしかない。
「感謝してもしきれないとはこの事です。ここ数日、街や漁港の様子を見ると、明らかに笑顔が増えました」
「この後の復興は上手く行きそうかい?」
「成功させて見せますよ。ここ迄お膳立てして頂いて、成功しない筈はありません」
それから、暫くは褒めちぎられて気恥ずかしかったね。
領主邸を出た後は、ガディ商会に向かった。
「レンさぁ~〜〜〜〜ん」
ガディ商会が見え始めた辺りで、遠くからガディさんが走って来た。
(オレにGHPを付けた?)と思う位、いつも遠くから見つけて走って来る。
「領主様との話は纏まりましたかな?」
「お陰様で話はついたよ。洞窟の調査も後数日で終わると聞いたさ」
「それは良かったですな」
「ガディさんには迷惑掛けるね。出発が遅れてすまない」
「とんでもない。今回はこちらとしても助かりました」
聞けば、かなり儲けたみたいだね。
「うちも例に漏れず、災害で利益が下がってたんですよ。それが、この10日間で黒字どころか、もう直ぐ年間を上回る利益ですな」
「そんなに売れたの?」
「バカ売れどころか、爆売れの状態です。店員に臨時報酬を渡しても、マイナスどころかプラスですよw」
「それなら良かった。数日で財宝の引き渡しがされるから、処理が終われば出発出来るよ」
「判りました、準備していきましょう。その前に、財宝の引き渡しの時、同行させて貰えませんかな?」
「良いよ、興味あるの?」
「勿論ですとも。見知らぬお宝に巡り会う。正に、誰もが夢見る物語ですからな」
「財宝を受け取った後、領主様に引き渡すから、それまで滞在をお願い」
「なんと!お宝を寄付するのですか?」
「〔フィッシ〕の復興に役立てて貰おうと思ってさ」
「貴方という人は……本当に欲がないのですね」
「面倒な方が嫌だからねw」
「まぁ、利益を得ているのは、ウチも同じですな」
「皆んな喜ぶなら良いんじゃない?」
「妬む人はいそうですな」
「それは領主様にお任せ!」
「非道い話ですw」
ガディさんと出発の打合せをして分かれる。
次の日は、観光も兼ねて海に出た。
案内は勿論ペレに頼んだよ。
〔サーエンド〕のお土産用だね。
魚・貝・甲殻類・[タウコ]・[イウカ]をゲットして、ついでに魔物も討伐。
豊かな漁場ともあって、お土産は充分確保出来た。
レア魔物も〈レインボーシェル〉2体と〈ミラースワン〉1体を更に確保した。
領主様に「1体置いとく?」と聞くと、「これ以上は申し訳なさ過ぎです」と断わられた。




