第60話 話題の街サーエンド
「いや〜レンさん、連日凄い盛況ですな」
「ガディさんも素材集め、ありがとうだよ」
「私も充分稼がせて貰いホクホクです」
ガディさんが声を掛けてきた。
「今日はガディさんも領主様に呼ばれたんだって?」
「何でも相談があるとの事で。レンさん何か聞いています?」
「いいや、最近店舗のフォローばかりで、領主様とは会っていないよ。」
「そうですか。まぁ、行けば判りますか」
ネオが正式にオープンして、間もなく30日が経過するも、客足は増える一方だ。
北門の警備人数を増やしたが、長蛇の列は途切れる事は無い。
急遽東門を貴族用、西門を商人用に分けて対応を行っている。
まぁ、スパイやチンピラ、盗賊も増えたケドねw
スパイを派遣した貴族や商人は、寄子含めて門前払い。
侯爵様からも警告があったのを無視しているから、自業自得でしかないね。
チンピラや盗賊は自警団と騎士団で対応。
尋問すると、他領から来た盗賊も多く、盗賊ホイホイの状況だ。
捕まえた後は強制労働となり、労働力確保と治安向上で一石二鳥だよw
領主邸に着き、ガディさんと共に応接室に案内された。
程なくして領主様を交えて、オレから報告を行う。
「スパイ、盗賊の対応は一段落したかな。それぞれの店は好調だよ。特にテコ入れする必要は無いかな。今は作れば、ほぼ完売だね」
「数名招待しただけで、この効果か。宣伝が必要無いと言った時は疑問だったが」
「影響力のある人の口コミは、下手な宣伝より効果的さ」
「商人の間でも、話題の街サーエンドですよ」
ガディさんも、知り合いの商人から問合せがあるらしい。
「生産では、[砂糖]とお酒がキツいかな?3交代制の1日フル稼働でギリギリだよ」
「素材が間に合わなくなりそうか?」
「そっちは少し余裕はあるけど、備蓄は少ないね。特に果物は長期保存がきかないから。それと、アレが完成したよ」
すると領主様はガディさんに向かって、本題を切り出した。
「ガディに来て貰ったのは、買い付けの依頼だ」
「と、言いますと?」
「街道の安全に目処がついたのて、大型キャラバンを新設する。ガディ商会の支店で買い付けをして貰い、キャラバンが回収する流れだ」
「商会のメリットは?」
「通常手数料の他に、専用倉庫の無償提供、高級宿の年4回優待、専用人員の人件費補填、手数料の上乗せ及び、通信魔道具設置だ」
「通信魔道具とは、ギルドで使用しているアレですか?」
「ギルドとは違うが、レンが開発した魔道具だ」
「レンさんが!貴方という人は……」
「完成したばかりだから、信頼出来るガディ商会で、運用テストをして欲しいのさ」
「これだけの好条件を、断わる商人は居ませんな」
「よし、決まりだな。細かい内容は後日確認するぞ」
「レンさん、本当に通信魔道具を作ったのですか?」
「今、確認する事は可能か?」
「出来るよ、試しにどこかに設置する?」
応接室と別室に魔道具を設置し、使い方を教える。
別室は執事長が受け持ち、モニターを立ち上げると、全員から驚きの声があがった。
「声だけでなく、顔も映るんですか!」
「確かにギルドの魔道具とは違うな」
「旦那様、聞こえるでしょうか?こちらは明瞭に見えますし、聞こえています」
「こっちも映っているぞ、試しに指を何本立ててるか判るか?」
「四本ですね」
「……素晴らしい!今迄ギルドの通信魔道具さえも原理が分からなく、新しく作れなかったですのに」
「しかも映像付きときた」
「危険な技術にもなりましょう」
確かに、遠く離れた情報を瞬時に把握出来るのは、戦争や謀に活用出来る。
暫くは運用に注意が必要だね。
「レン、距離はどのくらいだ?」
「サーエンドの街中は問題無し。ガディ商会の支店に設置して距離の限界を試したいのさ。上手く行くと、南領地の端から端まで可能かも」
「よし、早速試してみてくれ。ガディ、次の行商はいつだ?」
「明後日ですな」
「レン、同行して設置を頼む」
「了解!今は1箇所の通信しか出来ないから、7台置設置するよ」
予定する設置場所は、〔アルケラ〕〔アグリカ〕〔ブラクス〕〔サウザリアン〕〔クラフリ〕〔フィッシ〕〔リベスト〕の主要都市。
〔クラフリ〕との通信が可能なら、防衛にも活用出来るからだ。
先ずは南領地の範囲を確認する。
ゆくゆくは1台で複数箇所との通信が可能にしたいね。
今回の遠征は、魔道具確認がメインにより、最短移動で進行。
野営時の討伐でも素材は充分確保出来るからね。
ルートは〔アルケラ〕→〔アグリカ〕→〔ブラクス〕→〔クラフリ〕→〔サウザリアン〕→〔フィッシ〕→〔リベスト〕で決定。
今回、〔クラフリ〕が上手く行けば、〔フィッシ〕と〔リベスト〕で長めの滞在を希望した。
初めての街なので、新商品に繋がる素材を探してみたい。
特に海産物は干物しか見ていない。
旅程は順調に進み、〔アルケラ〕〔アグリカ〕〔ブラクス〕は成功。
支店長と副支店長限定として、操作を教えていった。
次はいよいよ〔クラフリ〕だけど、余り心配していない。
ギルドの魔法陣を参考としていて、ギルドでは王都まて使えていたからね。
予想通り問題無く通信可能。
〔クラフリ〕を中継すれば、王都〔セントラ〕も通信圏内だね。
もしかすると、中継しなくても〔セントラ〕と通信出来るかもしれないケド、今回はそこまでの検証はパス。
領主様は少し興奮気味なのは、魔道具の有用性に気づいているんだろうな。
まあ、戦争や変な野心がなければ大丈夫かな。
次は〔サウザリアン〕だから、侯爵様や貴族に気づかれ無い様に注意しないとね。
〔クラフリ〕では、デカル工房にブランデーグラスを200個注文。
取っ手付きカップが人気らしく、立ち寄った際にお礼を言われたよ。
今回も特殊注文により用途を聞かれたが、ブランデーは〔サーエンド〕の高級宿限定なので、〔クラフリ〕での販売は難しいと伝えた。
数日後〔サウザリアン〕に到着し、門で審査を受けていると、兵士から声を掛けられた。
「お久し振りですレン殿。何時ぞやは指導ありかとうございました」
「こっちこそ、やり過ぎたと反省してるよ」
「私達は舐めてかかってましたからね、良い教訓ですたよw」
「笑ってくれると有り難いw」
「〔サウザリアン〕には長期滞在ですか?」
「ガディ商会の護衛依頼だから短期だよ」
「わかりました。また、指導お願いします」
「侯爵様にも宜しく」
声を掛けられた時は"ヒヤッ"としたが、無事支店に到着。
通信の魔道具を設置し、説明を終えた頃に侯爵様から晩餐の招待が掛かる。
「やっぱりスルー出来ないか〜」
「行ってらっしゃい。まぁ、これも想定内ですからね」
夕刻、迎えの馬車に乗り込み、侯爵邸に向う。
応接室に通され、侯爵様の探り合いがスタート。
「侯爵様ご無沙汰です。今日は晩餐の招待ありかとう」
「ネオの時以来だな。見事な街作りだ、驚きの連続だったぞ」
「楽しんでもらえたら幸いだよ」
「危うく家族別居になりそうだったがなw」
「レシピは役にたったみたいだねw」
「料理長もアレンジの柔軟さに驚いていたな」
「なるべく同じ材料の方が、コスト削減出来るからね」
「1つだけ不満があったわ」
「お酒?」
「正解だ。小売りして無いのは残念だったな。早く増産して売ってくれ」
「善処するよ。どうしても熟成に時間が掛かるからさ」
「そうか、残念だよ」
「急なお呼ばれで、手土産を用意出来なかったから、試作品で良ければ、新商品を試してみるかい?」
「何の新商品だ?」
「ブランデーだよ。[ブッド]の他に[モッモ]と[アッポ]で作ったやつ」
「早速試飲するぞ!」
「毒見は?」
「いらん!」
「良ければこのグラスで飲んでみて」
「変わったグラスだな」
「ブランデー専用のグラスだよ。今回、ガディ商会の護衛依頼に合わせて、〔クラフリ〕に依頼してきたものさ。試作で数点作って貰った」
執事長も呼んで、2人に新商品を披露。
[ブッド]のブランデーも出して、味の比較をして貰う。
「成る程、グラス内に香りが留まって、一層香りを楽しめる」
「ブランデーを初めて嗜みましたが、美味しいですな」
「確かに専用のグラスは必要だな」
「〔クラフリ〕のデカル工房は気心が知れてるからね。細かい注文は、直接伝えなきゃ判らないから、ガディ商会の護衛依頼を受けたのさ」
「そうか、直ぐに発つのか?」
「ガディ商会の荷卸と積み込み次第だね。次は〔フィッシ〕で、初めて行くから楽しみだよ」
「〔フィッシ〕でもやらかしそうだな」
「そんなに色々ある訳ないさ。何か珍しい食材は探すケドね」
「また、新しい料理を作るのか?」
「考えはあるけど、作れるかは疑問」
「まぁいい、やり過ぎるなよ」
「了解!ブランデーはもう1本づつ置いてくね」
「頼む!グラスも2個欲しい」
「良いよ、晩餐時奥様にも感想を聞きたいな。お子様には[シュークリーム]で良いかな?」
「喜ぶよ」
何とか誤魔化せたみたいだね。
晩餐でブランデーを出すと、奥様からは賛辞が止まらなかった。
[シュークリーム]も[イッチゴ]と[アッポ]の果汁を混ぜ込んだ新商品。
食べた瞬間に、大きく目を見開いた時は嬉しいね。
またもや別荘の話が出たので、クリームと果汁の配分レシピを渡したよ。
侯爵様は、「もう、呼ばん方が良さそうだ…」とぼやいていた。




