第53話 領主様に報告
指輪には、小粒ながらも存在感のある宝石が2つはめ込まれ、周りには更に小さな宝石が散りばめられていた。
メインの宝石はルビーとエメラルド。
スクエアカットされた宝石は、透明度も高く綺麗な仕上がり。
フェイさんは暫く見惚れていたよ。
「お前さんはホントに規格外だな」
「レンさん、アクセサリーも売り出すんですか?」
「いや、アクセサリーは売らないよ、注文が多くなれば身動きが取れなくなるからね。作るのは贈答用でこれからの下準備」
「下準備?」
「上手くいくか判らないから、今は内緒w」
「それにしても、この指輪は一級品ですね」
「宝石を加工出来るとはな…」
「しかもアクセサリー作成まで…」
「因みに、侯爵様に贈ったネックレスは、これと同じだよ」
ネックレスを見せると、2人の目が大きく開いた。
「お前が冒険者をやっている意味が分からん」
「確かに、ネックレスだけでも遊んで暮らせますね」
「ガディさんに、豪邸が建つと言われたよw」
「この指輪2つでも豪邸が建つぞ」
「そんなに?」
「あぁ、宝石やデザインも良いが、一番はこの加工だ」
「見た事の無いカットで輝きが違います」
「ギルマスの奥さんに贈るかい?」
「絶対狙われるからいらん!」
「皆んな無欲だねぇ」
「「お前に言われたく無い(ありません)!」」
「領主様が頭を抱える未来が見えたわ」
恐縮されながらも、ブレスレットを受け取って貰い、ギルドを後にした。
さて、工房や自警団の様子を見に行きますか。
自警団では、順調に人数を増やせており、今では見習い含めて70人。
今の建物では手狭になってきたので、他の物件を探しているそうだ。
地域住民との交流も増え、魔物討伐も順調。
単独での運用が軌道に乗ったね。
明日領主様に物件を聞いてみる約束をして、少しお金を渡しておいた。
工房へ行くと、ミリーさんが出迎えてくれた。
開口一番「レンお帰り、お土産は?」に笑ってしまう。
水晶や素材を見せると、その量に驚いてはいたが、目は輝いたままだね。
[砂糖]と[ハイポーション]の作成は順調で、【錬金術】を覚えた人数も増えている。
近々領主様が砂糖工場を作るらしく、人員確保を優先していると聞いた。
「じゃあ、今は忙しいのかな?」
「作成量を調整して貰っているから大丈夫だよ」
「なら、コレを渡しても大丈夫だね」
オレはダンジョンでゲットした[メガポーション]を見せる。
「うはぁ、新しいポーションかい?[メガポーション]だって?直ぐ作ろう!今作ろう!!」
興奮するミリーを宥め、サンプルとして[メガポーション]を2つ渡す。
それを奪い、奥の部屋に行ってしまった為、他の報告はザザルさんから聞いた。
領主様の所では、[プリン][クッキー][ハイポーション]の効果が有りすぎ、コンスタントに注文を貰えるので資金も増えているね。
新規工場に向けて、人員育成も始まっているので、練習用に作る一般向けの[ポーション]も潤沢だとか。
新たに30名を育成しているが、分担出来ているので1人の負担は少なく進んでいるから問題無し。
[メガポーション]が出来れば、[砂糖]は無しにしても大丈夫そうだね。
そうなると、[ハイポーション]はギルドに卸せるかも。順調、順調!
まぁ、領主様と相談かな。
報告が終わった後は、奥の部屋で成分分析。
[メガポーション]に使われている素材を調べる事にした。
【分析】では、[ヒールマッシュ][魔力水][黃水晶][聖光草][プク草]が判明。
[プク草]は水辺に落とすと膨らむ草で、子供達が遊ぶ雑草だった。
【鑑定】で見てみると、効果を高める効能があるらしく、水を蓄えて膨らむ様だ。
「とりあえず、判明した素材を掛け合わせるか」
「[黃水晶]なんてどんな使い方をするのかな?」
「多分、光属性を加えるのに使うと思うんだけど…」
「このまま使う訳じゃあ無いよね…」
「[ヒールマッシュ][聖光草][プク草]は[魔力水]で煮込んでみるか」
「そうだね、色々試して見よう」
まぁ、直ぐには完成しないのはお約束。
次の日、必要な素材はミリーに預けて、領主邸に向う。
執事さんに応接室まで案内され、領主様を待つ事10分、領主様とギルマスが入ってきた。
開口一番、領主様から「またやらかしたらしいな」とのお声掛け。
「何の事かな?」と恍けるも、全てバレていた。
「行く先々で騒ぎを起こすのも、考えものだな」
「騒ぎと言っても、良い方の騒ぎだろ?」
「だから手に負えん。影響が大き過ぎる」
「レン、お前さんはギルドでも要注意人物だよ」
「ギルマスまで非道いなぁ。でも今日は何で居るの?」
「それは、私から説明しよう。[砂糖]と[ハイポーション]の販売及び、素材確保をギルドに依頼する」
「生産の目処がついたの?」
「管理人員は自警団とミリー工房で育成中だ。工場は空き屋敷の改装を行っておる。多くの作業員は、貧民街へ斡旋した」
「素材は?」
「〔アグリカ〕と連携してキビー畑の拡張。〔サーエンド〕には指導員を派遣して開拓中だよ。今は〔アグリカ〕の在庫を集約してる所だ。〔アグリカ〕も雇用拡大が出来るので、積極的に協力してくれたよ」
領主様から、遺跡発見の影響で、オレが関わっている事もプラスになっていると聞いた。
ギルマスからは、「[シロタケ]はギルドが常設依頼として受持つ。[キビー]運搬の護衛は、自警団とギルドが受持つ流れだな」と自警団の連携体制がありそうだ。
「[ハイポーション]はミリー工房に依頼となる。暫くは【錬金術】の熟練度アップが必要らしい」
「他に問題はありそう?」
「本格的に生産が始まらんと何とも言えんな」
「ギルドは自警団から、小さな子供や身体の不自由な者にも、仕事があったら教えてくれと言われたな」
「ん~~、小遣い稼ぎくらいなら[プク草]の採取かなぁ」
「[プク草]?子供が遊ぶ雑草だろう。何に使うんだ?」
「今試作している[メガポーション]の素材だよ。あっ、[聖光草]の常設依頼と、[黃水晶]の取り寄せも完成したらお願いするよ」
領主様が目を見開き、「[メガポーション]と言ったか?」と聞いてきた。
「ダンジョンでゲットしたから試作している所。1つ献上するよ」
領主様に渡すと、メイドを呼び、鑑定させる様申し付けた。
「どこで手に入れたんだ、ボスドロップか?」
「〔アルケラ〕ダンジョン70階層の隠し通路で、宝箱から出て来た」
「作れるのか?」
「今は素材が判っただけ。作り方はこれからだから、時間が掛かるかなぁ」
「お前と言う奴は…」
ギルマスが呆れていた時、ドアがノックされた。
「入れ」
メイドか鑑定結果を領主様に渡すと、「確かに[メガポーション]だな。効果は中か」と言い、頭を抱える。
「一応、ミリー工房にしか言ってないから、[ハイポーション]と同じ扱いにする?」
「レシピが完成したら、[ハイポーション]は侯爵様と共有する。〔アルケラ〕を巻き込んで南領地の特産品とするか。〔サーエンド〕だけでは賄い切れん」
「間違いなく、高ランク冒険者の必需品となるぞ」
「開拓が一気に進むやもしれんな。レン、暫く[メガポーション]の作成のみで大人しくしていてくれ」
「明日は魔道具の作成を見学する予定だけど」
「まだ、何かを覚えるつもりか!」
「〔クラフリ〕で、アクセサリーや食器の作成を覚えて来たから、趣味でやりたい事があってさ」
「クラフトも覚えたのか」
「そうだ、領主様にプレゼントがあったんだ!」
「受け取るのが怖いな」
「奥様とお揃いの指輪を作ったんだ、サイズ合わせを行うから、はめる指のサイズ測らせて」
色違いの指輪を出すと、領主様が固まった。
数秒後、「おまっ、ちょ、これ…」と我に返るも言葉になっていない。
「やはり領主様でも驚くか」
「ハッシュは知っていたのか?」
「昨日、見たからな。侯爵様に贈ったネックレスを見ると、更に驚くぞ」
ギルマスから目配せかあったので、ネックレスを取り出す。
「これと同じデザインのネックレスを、侯爵様に贈ったよ」
「……カットといい、彫金といい、国宝級だな」
「だよな〜、それを作り、無償で献上だとよ。更に[クリスタルウルフ]の完全体も献上したんだろ?」
「侯爵様も驚いていたねw」
「オレはブレスレットを貰ったよ、お土産だとさ」
「レン、その常識破りを何とかしろ!」
「え〜、喜ぶんなら良いじゃないか?」
「普通なら争い事が起きるな」
「そうなの?オレの手作りだよ」
「見た限り、どれも一級品だ!」
「で、サイズは測らして貰える?」
「はぁ~」と観念した様に、メイドに妻を呼びに行かせた。
数分後、奥様が入って来ると、すかさず領主様が注意を促す。
「いいかシャラ、決して大声を出すなよ」
「レンさん、お久し振りです。なんの事か判りませんが、ちょっと怖いですね」
「奥様、お久し振りです。今回、指輪を贈らせて貰いますので、はめる指のサイズを測らせて下さいませんか?」
「レンさんがお作りになるの?」
「後は御二方のサイズを調整するだけですよ」
指輪を見せると、"ヒック!"と言葉を詰まらせるが、すかさず「この指で!!」と教えてくれた。
サイズを測るサンプルのリングをはめて貰い、その場で調整を行う。
ものの数分で調整が終わり、改めて御二人に指輪を献上する。
指輪をはめて見惚れている妻を横目に、領主様からお礼を言われた。
改めて、アクセサリー作成は仕事として作らず、贈答用に留める説明をした。
「これだけの技術は勿体無いですが、レンさんが動け無くなるのは困りますものね」
「良くして下さるお礼ですよ。侯爵様にはネックレスを贈りましたから、献上する必要も有りませんよ」
「何とお礼を言ってよいのやら…もう社交会が楽しみですわ」
奥様は指輪を見ながら夢心地。
「ここ迄女性を虜にするとはな」
ギルマスからも「販売したら、数年分の予約が取れるなw」と笑われた。
(今度はお子様達にも作るかな)
自警団の詰所候補も相談し、領主様と別れ騎士団へ立ち寄る。
「さぁて、課題は進んだかな」




