第5話 あり得ない旅程
固まっていた2人を覚醒させ、食事を終わらせた後は、それぞれの戦闘スタイルを確認した。
ピックは数回、剣の型を披露し、近くの細い枝を切り払った。
ゲイルは、獲物の狙い方、水辺の見つけ方、音のしない歩行を見せてくれて、斥候の役目も担っていた。
オレは3人を少し下がらせると、前方の大きな木に【ウィンドカッター】を放った。
すると、木がゆっくり倒れ大きな音が響き渡る。
「すみません、倒す予定では無かったのですが、大きな音を立ててしまいましたね」
後の3人を見ると、目を見開き口を空けて固まっている。
(ポカンと音が聞こえそうだなw)
他に、【ウィンドニードル】を放ち精度を見てもらった。
突然ゲイルが「スンマセンでした!」と頭を下げる。
「ちょっと、どうしたんですか?」と戸惑っていると
他の2人も我に返った。
「結界の効果、料理の腕、魔法の威力・精度どれをとってもあり得ません」
「しかも無詠唱じゃなかったか?」
「今まで失礼な事言ってスンマセンでした〜」
ガディさん、ピック、ゲイルがそれぞれ口にした。
「無詠唱?普通は違うんですか?」
「普通は呪文を詠唱して魔法を放つので、時間がかかるのですよ」
「しかも低級の魔法使いは味方に当てやがる」
「あん時は酷い目にあったな」
ガディさんは、以前Fランクの護衛を雇い、詠唱は長く精度も悪い為、魔法使いの為に余計な護衛が必要になったとか…
「それから護衛はC・Dランクを指名してますね、Bランク以上は依頼料が高いですしね」
ピックとゲイルは、後から魔法を当てられ、あわや全滅の憂き目にあったとか…
「ホントにすまんかった。レンの腕は一流だな」
「それな、Dランクは詐欺でね?」
「ギルド登録も最近で、今までソロで活動だったから、比較しようがなかったな」
「この結界は朝まで持つのですか?」
「一度しか確認していませんが、朝まで持ちますよ」
「まあ、結界石があるから大丈夫だろう。ここら辺は強い魔物も出ないしな」
「では、明日も早いし寝ますか」
「あぁ、おやすみ」
次の日、朝食に[ホットケーキ]に[バター]をのせ[はちみつ]をかけて食べると、皆んなが寄ってきた。
少し笑いながら「食べますか?」と聞くと、全員無言で頷いた。
ガディさんは目が潤み、ピックとゲイルはお互いを見て固まり、御者さんは、一心不乱に食べていた。
デジャヴwww
ガディさんは「是非レシピを!」 と詰め寄って来たので、「機会がありましたら」と交わしておいた。 2人はまだ見つめ合っているよw
[スープ]を勧めて、固まっている2人を覚醒させた後、出発の準備を進め、朝の確認を行った。
「今日の2の鐘過ぎには森に入ると思いますので、魔物が出たら討伐お願いします。」
ピックが「討伐した魔物の素材はどうする?」と聞くと、「旅程は余裕を持っていますが、解体は最小限で行って下さい。又、必要な素材は私も買取りしますよ」
ゲイルに聞くと、護衛依頼の時は、基本倒した魔物は放置するそうだ。依頼主によっては解体させて貰える為、確認しているらしい。
「出発前に確認しないのかい?」
「護衛中順調な時や、依頼主の機嫌の良い時に聞くのさ。そうすりゃ解体させて貰える場合が多い。今日は朝からご機嫌だからなw」
出発後は順調に森まで到達。ここからは、魔物が襲って来る確率が高いらしい。
特に注意するのは〈ハンマーヘッドボア〉〈ロックアームベア〉で、荷馬車を壊されると評価も下がるらしい。
オレは【索敵】を使い、魔物の位置を確認した。
「前方に〈ゴブリン〉3匹、右斜め前に〈モールリザード〉1匹、左斜め前に〈ホーンラビット〉2匹。1番近くは〈ゴブリン〉だが、直ぐに接触は無しだ」
「魔物の位置か判るのか?オイラの仕事無くなっちまう」
「あぁ、運良く【索敵】を覚えてね。5キロメト位の範囲は判るよ」
「レンさんはとことん規格外ですね。【索敵】もレアスキルですし、1キロメト以上も凄いんですよ」
通常は【気配察知】で近くの気配が判る程度らしい。
以前シルに1km=1キロメトと教えて貰ったから、近くに何かいるな程度の感知なのだろう。
ちなみに重さは1kg=1キログラだよ。時間の単位が無いのはちょっと不便だね。
少し進むと〈ゴブリン〉が現れた。サクッと討伐し、討伐証明の耳だけ切り取り、道の外れに放置する。
なにやら、ガディさんが「・・・ディ・・し・す・」と言っていたけど、聞き取れなかった。
ゲイルからは、「ホントにいた〜、オイラの仕事が〜」と聞こえたが無視!
その日も特に問題無く野営地に着いた。
「レンさんの【索敵】は素晴らしいですね。いつもは、魔物が居ないか気を張って進むので、体力より精神的な疲労が多いのですよ」
「魔物の位置が判ると、こんなに順調なんだな」
「お陰でオイラ達も魔物の素材確保出来たしな」
道中、〈ホーンラビット〉〈ゴールデンフォックス〉〈フォレストウルフ〉を狩り素材を確保した。
〈ゴールデンフォックス〉の毛皮はガディさんが買取り、ホクホク顔になっていた。
「本当に分け前は3等分で良いのか?余りにも俺たちが得なんだが」
最初分け前は折半と聞き、3等分したらピックとゲイルから「いやいや、レンと俺たちで折半だよ」と言われた。
オレは色々教えて貰いたいので、3等分で了承して貰った。後でトラブルにならない様にね。
「正直助かる。護衛料の他に素材を換金出来るからな」
「武器や防具のメンテ代もバカにならんのよ」
「オレは特にメンテする武器も防具も無いしな。だから気にするなよ」
「ありがとう。ある意味羨ましいよw」
テントを張り結界を確認し、食事の準備を始めた時、視線を感じたのはお約束w
[唐揚げ][シチュー][フレンチトーストもどき]を出して食事をしたよ。
食事の後、全員から期間中の朝食と夕食のお願いをされた。
報酬は全員で銀貨8枚(8万円)。残りの日数を考えると多い気もするが、昨日・今日の分と、依頼中の温かい食事。しかも美味いときたら、これでも安くて申し訳無いと恐縮された。
少し食材を提供して貰い了承したよ。
だって、皆んなの目が血走っていたからねw
残りの日数は2〜3日で、とても順調らしい。
明日に森を抜け出れば、目的の街までは楽だと聞いた。
そこで、ガディさんからお願いをされた。
「レンさんの【索敵】で〈シルクディア〉を探せないでしょうか。」
「当然、護衛依頼外のお願いと、ギルド的には別依頼となりますので、皆さんには護衛依頼料に上乗せしてお支払いします」
急に真面目な顔でお願いされ、皆んなとまどったが、
「おれたはレンが良ければ受けるぞ」「レンの【索敵】頼りだしな」と、ピックとゲイルの決断は早かった。
オレは「何か理由があるのですね?」とガディさんに聞いた。
「実は、領主様から依頼を頂きまして、それが〈シルクディア〉の毛皮なのです」
「侯爵様が王都に呼ばれ、献上品として〈シルクディア〉の毛皮を確保出来ないかと、領主様に相談されたそうです」
「その依頼品を領主様からガディさんが頼まれたんですね」
「まだ、期間はあるものの、ギルドに依頼して10日間連絡が無く、【索敵】ならばと…」
「納品日までは後14日間ありますが、加工を含めると9日間以内に確保したく、お願い出来ませんでしょうか。勿論別途お礼はいたします。」
「良いですよ。協力しますね」
「ありがとうございます。明日は〈シルクディア〉の狩りもお願いします」
「それじゃあ、レア魔物は見つかり難いから、今日は早めに寝るか」
「夜明けに出発で良いんでね。朝早い方が見つかる可能性は高いな」
ピックとゲイルが提案し、ガディさんも頷いた。
「あのぅ、実は〈シルクディア〉を持っているんだよ」
「「「はっ?」」」
皆んなハモったね〜w
「レ、レ、レ、レンさん、今何と……」
「聞き間違いかな?毛皮を持っているとかなんとか…」
「オイラにも聞こえたような…」
「うん、〈シルクディア〉を持っているよ。」
オレが偽装した[マジックバッグ]から1体丸ごと出すと、「「「都合良すぎ!」」」とハモられた。
以前狩った時に、貴重そうだからギルドへ売らずに持っていて良かったね。
ガディさんから「ありがとうございます」と何度も感謝されたよ。
「解体して毛皮のみ渡すかい?」
「状態は凄く良いですね。角も立派だ。出来ればこのまま買い取らせて頂けますか」
「良いよ。では、ガディさんの[マジックバッグ]に入れるかい?」
ガディさんがちょっと困った顔をしていた。
「もしかして、レンさんの[マジックバッグ]は時間経過無しですか?」
「ええ、そうですが」
「そのままレさんのバッグに入れて頂いて、目的地の街で受け取っても良いですか?」
ガディさんの[マジックバッグ]には、時間経過があるみたいだね。
「よく時間経過が無いの判りましたね」
「食事を温かいまま出したり、数日前に狩った〈シルクディア〉が劣化していないので、もしやと思いまして」
「食事の時は、魔法で温めたのかな?と思っていましたが、〈シルクディア〉の状態が良すぎでした」
「えっ!時間経過無しの[マジックバッグ]は国宝級じゃん」とゲイルが驚いた。
「そうです。しかも、レさんの[マジックバッグ]は容量も大きそうですな」
「限界まで試した事は無いが、大型魔物10体以上は入るね」
「それって、伝説級じゃん。ありえね〜」
「どこで手に入れたのですか?」
「盗賊を退治した時、運良く手に入れたんですよ」
嘘をついてしまったが、説明が出来ないので誤魔化した。




