第49話 追加注文
今日は、鐘1つに工房前へ集合して採掘場に向う。
人数はオレを入れて5人。
大きな荷車に背負子と大きなバッグが用意されている。
どうやら、1人に大容量のバッグ2個。背中は背負子で支え、バランスをとる為、前にもバッグが必要みたいだね。
荷車は、採掘場の受付で預け、採掘後乗せて帰ると聞いた。
それぞれ採掘権を受付に渡し、採掘場に入る。
中は明かりが灯り、軽い下りの傾斜となっている。
【オートマッピング】で確認すると、中はアリの巣状態。
奥までは見えないから、かなり広範囲に掘り進んでいるね。
分かれ道には、出口方向の看板が設置されていた。
早速二組に分かれて進んで行く。
採掘場所と素材は決めているらしく、狙った場所で採掘すると聞いた。
オレは、2人に断りを入れて、自由に採掘させて貰う。
【サーチ】を使うと、多いのは鉄鉱石だね。
広い範囲で鉱脈が見て取れる。
適度に鉄・銅・ガラス用を採取しながら奥に進むと、銀鉱脈を発見。
まだ表面に出ていないので、掘り進める必要はあるが、それなりの範囲で採掘出来そうだ。
銀鉱石を自分用に半分程採掘した後、工房の人に教えたら、目の色が変わった。
案内の道中に話しを聞くと、この採掘場で銀が見つかるのは珍しく、採掘量によってはボーナスがあるらしい。
急かす彼らを採掘ポイントまで案内すると、話す事を止めて準備し始めた。
分岐点に2人残り、後の2人が採掘する様だ。
先程まで興奮していたとは思えない程の冷静さだ。
不思議に思い聞いてみると、小声で教えてくれた。
要するに、この場所を独占したいらしい。
騒ぐと他の人達が来てしまう為、分岐で鉄鉱石採掘をしている様に偽装するそうだ。
成る程、シビアだねw
それとなく誘導しながら掘り進め、銀鉱石を取り尽す。
他のバッグも一杯にして、今日の採掘を終了した。
今回の成果は予想以上のようだ。
銀鉱石はバッグ1.5個、鉄鉱石はバッグ3個、銅鉱石はバッグ1.5個、ガラス用はバッグ2個か採掘出来た。
しっかりと、銀鉱石はバッグの下側、上側に他の鉱石を入れてカモフラージュしていたよ。
帰りは足取りも軽く、ボーナスの使い道で話が盛り上がり、急いで帰りたい雰囲気が見て取れた。
全員からの感謝が止まらなかったのて、余程珍しかったのかな。
意気揚々と工房に帰ると、なにやら騒がしい。
「何かあったのかな?」
「もしかすると、貴族からの注文があったかもしれん。以前、細かな要望で対応に追われた時に似てるな。」
「大口なら嬉しいんじゃない」
「無理な注文じゃなけりゃな。納期が充分あれば良いんだが。まぁ、とりあえず採掘の報告をしに行くか」
仕舞う前に、デカルさんのチェックが必要らしいね。
3人が荷卸しを行い、1人が報告にむかう。
オレは一緒にデカルさんの部屋に向うと、食器のブースから声が掛かった。
「レンさん、丁度良かった。急ぎ相談がある」
「親方、そっちにいたのか、採掘のチェックしてくれ」
「判った、先ずはレンさんと話をさせてくれ」
「了解、倉庫で待ってるぞ」
「話が終わったら直ぐ行くよ。レンさんはこっちに来てくれないか」
デカルさんに呼ばれ近くに行くと、なにやら図面を広げ打ち合わせをしていたようだ。
「デカルさん、何かあったのかい?」
「レンさんが考案した取っ手付カップに、大口注文が入ったよ」
「良かったね、何個注文されたんだい」
「全部で500個、3カ所からの注文だよ。喫茶店が50個、子爵様が150個、伯爵様が300個さ」
「何か問題があったのかい?」
「同じ物だと不味いから、区別するのにどうするか考えていたのさ。何かいい案はないかい」
「手っ取り早いのは、色か図柄を変える事かな?」
「やはりそうだよな、でも同じ感じになっちゃわないかい?」
「お店なら看板やロゴを、貴族なら紋章を入れたら良いのでは。あとの余白は同じ柄でも差別化は出来るよ」
「口を付ける位置に、紋章を配置しなれりゃ大丈夫か……よし、その案貰った」
「余白の柄も数パターン用意して、選んで貰うとかね」
「それなら、ロゴや紋章が変わってもパターン化出来そうだ」
デカルさんは、職人に図柄のパターンを作るよう指示して、倉庫に向う。
「レン、助かった。カップの取分は後で相談させて貰うよ」
「役に立てて嬉しいよ。でも何で急に売れたのさ」
「子爵夫人が喫茶店の常連で、カップを大層気に入ったそうだよ。子爵夫人から伯爵夫人に話が伝わり、社交用に注文が入ったと言う訳さ。お茶会で使って貰うと、更に注文が入るかもしれないね」
新しい物好きも影響していそうだ。
倉庫に着くと、鉱石の仕分けが終了していた。
「デカルさん見て下さい、今回は銀鉱石が手に入りましたよ」
「本当かい、凄いじゃないか」
デカルさんは喜び勇んで確認して行く。
「でかした!こんなに大量の銀鉱石は大当たりだ」
「レンが見つけてくれたのさ」
「レン、良く見つけてくれたね、感謝するよ。採掘メンバーにはボーナスだ!」
「「「「いやっほーう」」」」
銀鉱石は貴重で、今回は大量の部類に入るらしい。
同じ量が【アイテムボックス】に入っているけど、内緒にしておこう。
「大量注文といい、銀鉱石といい、レンは幸運をもたらしてくれるね」
「偶然さ。まぁ、喜んでくれて嬉しいよ」
「お礼をしたいけど、何か欲しい物はあるかい?」
少し考ると、忘れていた事を思い出した。
「そうだ、元々は器を頼みに来たんだったw」
「そうだったね、ガディから聞いていたよw」
デカルさんに欲しいカップの形を教え、100個の注文を行う。
無料で作ると言われたが、妥協して貰い、半額での取引とした。
今回の取っ手付きカップはレシピ登録するらしい。
どうやらレシピは特許の役割も担っているので、工房の名前で登録して貰う。
オレの取分は売上の5%として話が纏まった。
「まぁ、直に真似されるけどね」とデカルさんは笑っていた。
翌日からは、大量注文の作成で皆んな忙しく、オレは大人しくスキルの熟練度を上げていた。
実は内緒で宝石のカットを練習中。
最初は力加減が分からず、割ったり削り過ぎたりもしたが、慣れた頃には【宝石加工】のスキルを覚えたよ。
採掘で手に入れた銀も使い、宝石をあしらったネックレス・髪飾り・指輪・ブレスレットを作成。
自分でもなかなかの出来栄えだと思う。
ガラス容器も、パフェ・アイス・アラモード・かき氷用の試作品を作ってみた。
これらは工房の人には内緒で作成。
【砂糖】の量産が可能になったら、注文するか自作する予定さ。
デカル工房は今日も活気に溢れ、一日が過ぎて行く。
〔クラフリ〕滞在の最終日、ギルドに立ち寄り査定の報告を聞き、ガディ商会で明日からの確認を行った。
昼からは街をみて回り、お土産や珍しい物が無いかを見て回る。
名物の食べ物をお土産にしようとしたが、[唐揚げ][エッグサンド][ポテサラサンド][ホットケーキ]が名物だったので諦めた。
代わりに髪飾りやブローチ・ベルトを購入。
置物は微妙な物ばかりだったのでパス。
残りの時間は市場へ行って食料を補充。
お肉は余り気味になってきたので、帰りの旅程で消化して行こう。
最後に教会へ行き、女神様へ挨拶をして行く。
今回のお供えはフルーツの盛り合わせ。
少し工夫して、飾り切りを行った。
人気が無いことを確認して、女神様にお祈りをする。
(女神様、お納め下さい)
(ありがとう。うわぁ、[アッポ]のラビットだ〜。可愛いね。他のフルーツもくり抜いて、器にしてるのが珍しい!)
(明日は帰るから、旅の無事を祈ろうと思ってね)
(無事を祈る必要あるの?レンと一緒が一番安全じゃんw)
(そうかい?じゃあ、お祈り必要無いからお供えも回収かな?)
(嘘、嘘、お祈りとお供えは必要だよね~)
(www 冗談はさておき、この前見つけた遺跡が気になってね、どうなってるか判る?)
(んとね、保護がどうとかって言ってた)
(じゃあ、荒らされたりはしてないね)
(それは大丈夫だよ。だけど、魔力の泉は内緒にしておいて欲しいかな)
(勿論さ、森の妖精に[森の雫]を貰ったからね。大事な場所は秘密にしておくよ)
(それを聞いて安心した。〈フェアリー〉や〈妖精〉にとっては大事な場所なんだ)
(魔力補充が出来る泉なんだってね)
(そう、だから感謝してるし、信頼もされたのさ。そうそう、これも貰っておくれ)
目の前に羽の形をしたアイテムが現れる。
(それは[風の羽]だよ。風の精霊が与える友好の証さ)
(良いのかい?)
(実は、[森の雫]を貰っただろう。あれでウチの精霊が機嫌悪くしちゃってさ)
(もしかしてシル?)
(もしかしなくてもシルw)
(嬉しいねぇ、でもどうして?)
(レンには精霊にして貰ってるから、お礼がしたいんだとさ)
(シルは元気にしてる?)
(元気だよ。今は格上げを頑張ってるね)
(そうか、ありがとうって伝えておいて)
(判った、伝えとく。いい旅になる様に祈ってるよ)
(ありがとう、美味しいお供え出来る様に頑張るから待っててね)
(なる早で!!)
(wwwなる早で!!)
相変わらず女神様は元気だなw




