第45話 いつもながら
今日はガディさんと共に〔クラフリ〕へ向う。
今回は3人旅。オレ、ガディさん、御者さんだ。
ガディ商会で合流し、軽く打合せを行う。
通常ルートを使わず、南首都の〔サウザリアン〕を迂回して、〔クラフリ〕に向う。
理由は、侯爵様や貴族を避けるのと、素材確保をガディさんにお願いされたからだ。
お互いの利害が一致して、迂回する事となった。
元々森に沿って旧道があり、昔はメインで使われていた。
今の主要路が整備され、森に近く魔物の遭遇も多い旧道は、主要路が使えない場合の迂回路となった。
旅の日程は約15日間。
主に毛皮と肉を確保予定で、レア魔物は問答無用に確保となる。
出発した馬車の中で、ガディさんからお礼を言われた。
「レンさん、ありがとうございます。私の所にも〈クリスタルゴート〉の代金が振り込まれましたよ」
「五等分でも結構な金額が振り込まれたね」
「そりゃあそうでしょう。聞く所によると、オークション会場では大騒ぎになったそうですよw」
「珍しくて?」
「はい、完全な状態でしたから、事前展示も凄い警備だったとか」
「そうなんだ、今回も探してみる?」
「いるかも知れませんが、中々遭遇しませんよw」
「そりゃそうか、まぁ遭遇したらラッキーだよね」
「レンさんの【索敵】があれば、可能性はありますな」
「ゲット出来たら欲しい?」
「無理ですね、扱える気がしません。私は毛皮で充分ですよw」
「欲がないねぇ」
「その言葉、そのままお返ししますよw」
和やかな会話の中、初日は順調に進んでいった。
数日後、〔アルケラ〕から右手に伸びる旧道に入り、素材確保を行う。
予め狩りを行う場所を決め、狩りの日を決めている。
それ以外は基本スルーで進んで行く。
まぁ、【結界】で確保した素材でも、ガディさんは喜んでいたけどね。
〔アルケラ〕を出発してから3日後、今日は狩りの日となった。
予定より1日早く、旅程も順調だ。
ガディさんと御者さんは野営地で待機。
【結界】を張って安全確保を行い狩りに出た。
森の中では、〈フォレストウルフ〉〈ハンマーヘッドボア〉〈コットンディア〉〈シルクディア〉〈ダブルホーンラビット〉〈ゴールデンフォックス〉〈ロックアームベア〉を狩りの対象として、その他の魔物はスルー。
採取は[薬草][シロタケ][魔力草][毒消し草]があれば確保して行く。
【索敵】を使用し魔物を探していると、早速反応が現れる。
旧道を通る人が少ないせいか、魔物の数は多いみたいだな。
対象となる魔物を狩りながら進むと、少し離れた所に50匹程の群れの反応があった。
確認すると〈ゴブリン〉なので集落が出来ているらしい。上位種の〈ゴブリンジェネラル〉も確認出来た。
単独は見逃していたが、集落が出来ていた場合は討伐優先となる。
放置していると集落が拡大し、〈ゴブリンキング〉や〈ゴブリンクイーン〉が発生した場合、被害が大きくなるからだ。
状況を把握する為に近づくと、人工物の様な物に集落を作っているようだ。
(神殿?)
植物に侵食され分かり難くなっているが、大きな入口や建物の大きさから、神殿又は教会が連想された。
よく見ると、オレの周りにも苔むした柱が見て取れる。
(ちょっと興味をそそられるね!)
ちょっとした浪漫を感じ、建物を壊さず〈ゴブリン〉を討伐する事に決めた。
〈ゴブリン〉をおびき出し、討伐証明部位を切り取った後は、【結界】で囲い燃やして終了。
周りに危険な魔物が居ないかを確認しながら建物を調査する。
(やはり神殿みたいだね。遺跡の類かな?)
中に入ると、広いフロアに数本の柱が立ち並び、奥には大きな像が祀られていた。
長年放置されていたので苔むしている。
【ウォーター】と【クリーン】を唱え像を綺麗にすると、女神像が顕になった。
(何の女神様かな?)
アウイラ様なら分かるかな?と思い、[プリン]をお供えして祈ってみる。
(アウイラ様聞こえますか?)
速攻で[プリン]が消えたw
(あれ、此処は何処だい?)
女神様に経緯を話し、此処が何かを聞いてみた。
(此処は豊穣の女神の神殿だね)
(〔アグリカ〕と同じ女神様?)
(そう、昔はこの周辺も開拓されていたけど、魔物が多くて放棄されたみたいだね。しかもかなり古いから原住民の建てた神殿かも。ちょっと聞いてみるね、おーいデメテラ〜)
(なあに、呼んだ?)
(初めましてデメテラ様、レンと申します)
(あらレンさん、以前はお供えありがとう。美味しく頂きましたわ)
(あのね、レンがこの神殿について聞きたいんだってさ)
(あら、懐かしい。たしか、現地の人が建てた神殿でしたね。今は開拓した〔アグリカ〕に移り、此処は放棄された神殿です)
(現地人が居たんですか?)
(彼らはここで私を祀り、集落を営んでいました。その内、開拓民がやって来て交流を持ち始めたのです)
(現地人と開拓民の違いはあったのですか?)
(彼らは全員私の恩恵があり、族長は加護を与えていました)
(今も居るんですか?)
(交流が進み、血が薄まり分からなくなってますね。〔アグリカ〕の領主は族長の子孫ですが、加護はありません)
(此処を放棄した理由は?)
(魔物の脅威により、土地を広げられなかったのですよ。開拓民が来て新たな土地が必要になり、魔物の少ない土地に移住し、此処を放棄したのです)
(判りました、ありがとうございます。お礼にお供えをどうぞ)
[プリン]を1つ置き、立ち去ろうとした時、女神様の言葉が頭に響く。
(お供のお礼に、1つ情報をあげるわ。像の後ろを確認してご覧なさい。そして、像を綺麗にしてくれてありがとう)
女神様との交信が終わり、女神像の後ろに回り込んだ。
一見何も無い様にみえるが、魔力の流れを感じた。
【魔力感知】を行うと、不自然な魔力溜まりが見て取れる。
その場所に手を触れると、手首が女神像に埋もれた。
調べてみると、地下への階段があり、幻影で入口を隠していたみたいだね。
階段を降りると部屋があり、中に入ると書物や種が保管されていた。
部屋全体に保存の魔法が掛けられているのか、保管された品は劣化が進んでいない。
どうした物かと考えたが、一度ガディさんの元に戻る事にしよう。
ガディさんに経緯を話すと、目を輝かせ案内して欲しいと頼まれる。
遺跡に入ると、ガディさんはまるで少年の様にはしゃぎ、興奮した様子だ。
「レンさん、これは凄い発見ですよ。〔アグリカ〕の成り立ちも書かれているみたいですな。貴重な資料となるでしょう」
「これをどうしたら良いんですかね」
「一度〔サウザリアン〕に行き、ギルド経由で領主様の指示を仰ぎますか。どちらにせよ侯爵様扱いになりますがね」
「はぁ、そうですよね〜」
「わはは、盛大な溜息ですなw」
「なるべく貴族様には関わりたく無いんだよね~」
「まぁ、レンさんの行いでは無理でしょうな」
「オレは静かに暮らしたいんだけどね〜」
「またまた、ご冗談をw いつもながらレンさんと旅をすると驚きの連続ですよ」
「いつもながら?」
「はい、いつもながらw」
「はぁ、気が重い。そうだ!ガディさんが見つけた事にすれば…」
「誰も信用しませんな。商人がこんな森深くに行くわけ無いですぞ」
「だよね~」
「諦めなされ、立派な偉業ですぞ」
ガディさんは予定を変更して〔サウザリアン〕へ向かう。
2日後〔サウザリアン〕のギルドで〔サーエンド〕のギルマスに通信を繋いで貰い、話しをすると軽い小言を言われた。
ハッシュ曰く、「お前は自重を知らんのか!」だそうだ。
領主様の返答を待つ間、侯爵様との面会の予約を取る。
確認が取れた領主様からの返答は、「お前は自重を知らんのか!侯爵様に指示を仰げ」だそうだ。
両方のギルマスから笑い声が聞こえた。
翌日、侯爵様と面会が可能になり、ガディさんと赴いた。
「対応が早いですな、それだけレンさんに会ってみたいのですかな」
「オレは避けたいんですケドね〜」
以前購入しておいた礼服に着換え、馬車で領主邸へ向う。
門に着くと連絡がされていたのか、ギルド証提示で簡単に通過。
広い中庭を通り、館の前に着くと執事がオレ達を待っていた。
「レン様、ガディ様、ご案内致します」
軽く会釈を交わし、豪華な応接室に案内される。
暫くすると、護衛を連れて侯爵様が部屋に入って来た。
立ち上がりお辞儀をしようとすると、「堅苦しい挨拶と言葉は無用だ」と言われ、手で制された。
「他の貴族が居る訳でもないので、楽にさせて貰おう」
予想外のフランクさに、オレとガディさんは驚きをかくせなかった。




