第44話 圧が凄いね
「教えるスキルは【シールドバッシュ】だよ」
「盾を使うスキルか?」
「当たり、盾で相手の攻撃をはね返し、隙をつくる事が出来るよ」
「どうやるんだ?」
「ゼフも【身体強化】は覚えたよね」
「あぁ、使えるスキルだよな」
「その応用で、盾の前面にも魔力の層を作れるかい?」
「こ、こうか?」
「そう、ここからがスキルに繋がるよ。相手の攻撃が層に触れたタイミングで、層を押し出すのさ」
「層を押し出すのが難しいな」
魔力を放つ事に慣れていないから、踏ん張るだけになってるね。
「最初は盾ごと前に出して、タイミングとイメージを掴むとやり易いかも」
「うりゃ!」
ゼフは戦闘の経験があるので、弾くタイミングはバッチシだ。
ギルは少し怖がって及び腰かな?
まぁ仕方ないか、ゼフの攻撃を受けているから迫力が違うよねw
「大事なのは、魔力の強度と弾くタイミングだからね」
何回か練習していると、ギルの攻撃が大きく弾かれる。
「そう、そのタイミングは完璧だね」
「確かに盾で受ける時は、止めるか逸らすかだからな、大きく弾くと隙だらけだ」
「今は盾ごと動かしてるけど、盾を動かさず魔力を放てると、予備動作が無い分相手の意表を突けるよ」
「レンさん、他にコツは?」
「反復あるのみw 2人いれば交互に練習出来るから頑張ってね」
「おぅ、まかせとけ!」
それから5日後にゼフが、7日後にギルが【シールドバッシュ】を覚えたと、後日聞く事になる。
「それじゃあ、魔道師団に行ってくるよ」
キャロを探していると、隊員達が居場所を教えてくれた。
どうやら奥で魔力循環を行っているらしい。
覗いてみると、身体の周りに淀みない魔力が見えた。
まるで水の中にいるみたいだな。
暫く見ていると、目が開いたので声を掛ける。
「凄いねキャロ、淀みない魔力循環だよ」
「レンさん、お久しぶりです。見てたんですか、恥ずかしい」
「全員【魔力操作】はクリア出来たんだってね」
「はい、数名は【身体強化】も覚えましたよ」
「流石、魔力の扱いは慣れた人達だね」
「お陰でミッションは楽勝ですねw」
「じゃあ、新しい魔法を教えるかな」
「本当ですか、ぜひぜひ! 今ここでですか? 何の魔法ですか? 直ぐ覚えれますか?」
グイグイと詰め寄り、圧が強いねw
一度落ち着かせて、魔法の説明を行う。
「教える魔法は【ダブル】だよ。とは言っても【魔力操作】の延長だね」
「詠唱では難しいとされていた魔法ですね」
「そう、【高速詠唱】と【詠唱短縮】が必要だけど、無詠唱では簡単だと思うよ」
「どうやるんですか?」
「イメージし易い両手から初めようか。両方の掌に魔力ボールを作れるかい?」
「こうですね」
「そう、それに属性を付与してご覧」
キャロは右手の次に左手に【火属性】の付与を行う。
「今、別々に付与したけど、同時に付与するのが【ダブル】だよ」
「多重魔法とは違うのですか?」
「魔法発動のタイムラグを無くすのが【ダブル】の長所さ。接近戦や混戦になると、タイムラグが致命的になる場合があるからね」
「成る程、魔法使いは後方からの戦術しか考えませんからね」
「最初は【火魔法】の同時付与。【ダブル】を覚えたら、【ファイヤーボール】と【ブリーズ】の別属性で練習してご覧」
「何か意味があるのですね」
「上手くいくと【並列思考】を覚えるかな」
「本当ですか!頑張ります……もしかして、それが2個目の報酬ですか?」
「違うから安心して、2個目の準備と思ってくれて良いよ」
「頑張ります!頑張ります!!頑張りまっす!!!」
「やる気満々だねぇw コツはゆっくりでも良いから、同時が大事だよ。後は練習あるのみ!」
「判りました、ありがとうございます」
それぞれにスキルと魔法を教え、次は厨房に向う。
「料理長、久し振り〜」
「レンさん、お久し振りです。[プリン]のレシピ受け取りましたよ」
「どう、作れそう?」
「工程は難しくありませんから大丈夫です。冷さなきゃいけないので、味の確認は明日ですね」
「そう思って、サンプル持って来たから味見するかい?」
「ありがとうございます。やはり、基準となる味は知っておきたいですからね」
「じゃあ、これを食べてみて」
【アイテムボックス】から[プリン]を1つ出すと、料理長の顔が青ざめた。
「レ、レンさん、私の気の所為ですかね?」
「多分、同じ感想だよw」
「凄い圧ですよね」
[プリン]を出した途端に、厨房の入口から視線の圧力を感じた。
料理長が入口を見て、「ひっ!」と声を出す。
そこには、複数の顔が覗いていた。
一言も喋らず、顔半分を出して、こちらを見ているだけなのに、物凄い圧を感じさせるね。
その中に見知った顔があったので、声を掛ける。
「領主夫人まで、何をしてるんですか。しかもお子様までw」
「だって、先程頂いた[プリン]が余りにも美味しくて…」
そう言うと、メイド達の視線が夫人に移る。
「えっ、奥様は食べられたのですか?」
「「美味しかったよ!」」
「おぼっちゃまやお嬢様まで……」
「「「…「「私達も食べたいです!」」…」」」
メイドの視線が、一斉にオレへ向く。
一糸乱れぬ行動に、騎士団ばりの連動と思ったのはオレだけじゃ無いと思いたいw
「全員分の数は無いので、分けて食べてね」
オレは、人数を聞いて[プリン]を出す。
夫人と料理長には1つづつ、子供達には2人で1つ、他は4人で1つ。
明日以後は料理長に頑張って貰おう。
歓声と感嘆の声が上がる中、夫人が話し掛けてきた。
「レンさん、以前の[クッキー]といい、ありがとうごさいます。お陰で、当家に有利な条件で、商談や契約が纏っていますのよ」
「本当ですか?たかがお菓子ですよw」
「されどお菓子なのです!侯爵家や王家に献上して喜ばれましたよ。しかも、当家を支持して頂ける貴族が1.5倍になりましたw」
「お役に立てて良かったです」
「はぁ、役に立つどころの話しでは無いのですけどね。料理長は手当の三倍出すと、引き抜きの話しもあったそうですよ」
「そうなんですねw レシピを公開しないで良かった。又、ギルドに恨まれる所でしたねw」
夫人は"じっ"とオレを見て、真剣な表情を見せる。
「レンさん、[プリン]もそうですが、本当にレシピ公開はしなくても宜しいのですか?」
「お礼は頂いていますよ。お金は使い切れなくなっているので、問題無いですね。領主様に協力して貰う方が面倒事が無くて有難いんです」
「それなら良いのですが、申し訳なくて」
「充分な利益が出たら、街の発展に使って下さい」
「それは勿論ですわ。改めて、今後も宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いしますね」
にこやかに挨拶を交わすと、領主様がやって来た。
「厨房に走って行くメイドが多いと思ったら、やはりレンが絡んでいたかw」
「料理長に質問あれば聞こうかなとね」
「しかも、お前達までいるとはなw」
「父上、レンさんの[プリン]が余りにも美味しくて……」
「お父様、我慢しなければと思ったのですが……」
「良い良い、メイド達も我慢出来ないみたいだしなw」
「優しい領主様だねww」
「「「…「「はい!その通りです!!」」…」」」
「メイドさん達の教育もバッチシだねw」
「wwwよし料理長、レンと同じ味になる様に精進してくれ。その間の味見は、皆んなに任せたぞ」
盛大な歓声が上がり、料理長のやる気が上がった。
領主様は人を使うのが上手いね。
「あっ、領主様に伝え忘れがあったんだ」
「ん、何だ?」
「暫く〔クラフリ〕に行ってくるよ」
「期間は?」
「今の所不明。ガディさんと行く予定。何かあったらギルド経由で連絡して」
「了解した、目的を聞いても良いか?」
「これからは、器も必要になるから下見だね」
「今後の計画を見据えてなのだな」
「その通りだよ。計画はまだぼんやりだけどね」
「判った。明確になったら教えろ」
「了〜解!後悔しないでねw」
「その時はギルマスを巻き込むさw」
「あらら、ギルマス可哀想w」
「お二人方、お顔が悪くなっていますわよw」
夫人の指摘で我に返り、領主邸を後にした。
今回も、メイドさんの見送りは多かったねw
最後に自警団へ寄り、暫く不在を連絡。
ザッハには、必要ならば人数を増やしても良い指示と、近々領主様からキビー畑の人材相談があると伝えておく。
貧民街の働き口が増える事を喜んでいたよ。
それと、生産職を希望する10人を、新たに育てて貰う様にお願いした。
勿論、正式な依頼として報酬は用意している。




