第42話 以外と難しい
ミリーと[砂糖]のレシピを作り初めて早10日。
以外と難しい。
[キビー]をすり潰し、水分を飛ばして作った試作品は、黒っぽく苦味が感じられた。
甘いが雑味が気になり、お菓子作りには向かないだろう。
雑味と苦味の成分が解らず、試行錯誤が必要だった。
【分解】【鑑定】【検索】【調合】を繰り返し、白っぽくなるまでに10日間。
水分を飛ばし味見をすると、苦さは無くなったが後味が悪い甘さとなる。
更に遠心分離機や細かい濾過の方法が解らないままだった。
元の世界とこちらの世界では、技術の差があり【検索】を行なっても意味が解らない事がままある。
ミリーとアイデアを出し合って、四苦八苦している現状だよ。
「レンの考えてる[砂糖]は真っ白なのかい?」
「これでも白い方だけど、まだ変な甘さがあるんだよなぁ」
容器に入れて高速回転させても、内側に貼り付くだけ。
「多分最後の不純物を取り除ければ完成だと思うんダケど…」
「何かヒントがあれば良いんだケドね〜」
悩みながら四苦八苦していると、更に10日が過ぎた。
「このまま悩んでいても精神的にキツいから、明日は1日休みとしよう」
「そうだね、頭の切り替えも必要かな」
「よし、今日は解散!」
翌日、休みにしたは良いけど、中々[砂糖]が頭から離れない。
モヤモヤする中、気晴らしに魔道具店を覗いてみる。
(何か遠心分離機と似たような魔道具はないかな)
「何かお探しかな?」
魔道具を見ていると、年配の男性が声を掛けてくる。
「混ざった液体を綺麗にする魔道具が無いかなと」
「ふむ、数種類あるが、お眼鏡に叶う魔道具はあるかのぅ」
「見せて貰って良いかい?」
「案内しようかのぅ」
男性は店内を回り、5種類の魔道具を説明してくれる。
1つ目はゴミを取り除く魔道具じゃ。固形物を取り除く【選別】が付与されてるのぅ。
2つ目は水を綺麗にする魔道具じゃ。【浄化】が付与されてるのぅ。じゃが、汚すぎる水には数回必要じゃ。
3つ目は水分を取り除く魔道具じゃ。【脱水】が付与されてるのぅ。
4つ目は成分を分ける魔道具じゃ。【分離】が付与されてるのぅ。
5つ目は成分を固める魔道具じゃ。【結晶化】が付与されてるのぅ。
(成る程、付与された魔道具で、成分を分ける事も可能なのか)
「ありがとう、参考になった。4つ目と5つ目を買ってくよ」
「ありがとなぁ」
さすが魔道具!価格は高いが問題解決の糸口が見えた。
他にも面白そうな魔道具があったので買っておこう。
【撹拌】が付与されている魔道具を一緒に購入した。
早速試したくなり工房へ行くと、ミリーが部屋から出て来た。
「レン、今日は休みにしたんじゃないのかい?」
「ヒントになりそうな魔道具があったので、買ってきた!」
「それで、試してみたく工房に来たと」
「正解!興味あるだろ?ウズウズするだろ?」
「確かにw それでどんな魔道具だい?」
「【分離】と【結晶化】を付与した魔道具だよ」
「よし、早速試してみよう」
「今日は休みだよ、ミリーは休んでてw」
「そこまで教えといて非道いじゃないかい。私も参加するよ」
向こうでは、「皆さんはキチンと休みましょうね」と聞こえてきたが、2人して聞こえないふりをしたw
「やったね!成功だよ!!」
ミリーが歓喜の声をあげる。
「結構てこずったな。以外と工程が多いね」
「そうだね、魔道具を使うと、北の価格が高い理由も判るわ」
「魔道具のメンテナンスと付与し直しも必要だからね」
一般に付与された魔道具は、使えば使う程効果が弱くなる。
回復させるには、再度付与をかけ直す必要があり、結構値段が高い。
物や年数によって、買い替えた方が安上がりとなる。
「さて、最初から手順を確認しようか」
ミリーが手順を紙に記載して行く。
[キビー](原材料)→【粉砕】→一次加水→煮沸→【分解】→【分離】→一次濾過(原材料除去)→二次加水→煮沸→【分離】→二次濾過(不純物除去)→三次加水→煮沸→【結晶化】→【分離】→三次濾過(結晶取出し)→水分除去→【ブリーズ】(乾燥)
これでも【分離】の魔道具で不純物の取り除きが、【分解】より半分に減った。
しかも、遠心分離機を使わず精製出来たのは驚きだよ。
「この[砂糖]は、北のとは全然違うのね」
「どういった違い?」
「この白さと、しつこくない甘さかな」
「北の作り方は白っぽい時点の精製かもね」
「まだ課題はあるけど、レシピは作れるよ」
「魔道具を使うと価格は高いな」
「誰も【分離】と【結晶化】のスキルは持ってないのよね」
【粉砕】【分解】は錬金術の過程で覚えられる。
【ブリーズ】は生活魔法だから問題なし。
【分離】と【結晶化】は、新しく覚えて貰う必要があるな。
「とりあえずスキルを覚えるまでは、魔道具で進めて行こうか」
「本来スキルの習得は難しいんだけど……4人が【錬金術】を覚えるのも早かったか……」
ミリーが考え込んでいる間に、[クッキー]を作ってみる。
試食して見ると、領主邸で作った[クッキー]より甘さを感じた。
休憩がてら皆んなに[クッキー]を振る舞うと、あっと言う間に食べられたよ。
ミリーにレシピ作成をお願いして、オレは[砂糖]作りを行う。
「ミリー、作った[砂糖]を少し貰うよ」
「良いけど領主様に献上する分は残しといてね。何か作るのかい?」
「新しいお菓子を試したくてね」
「是非持ってってくれ!試食は任せろ!!」
「判ったよ、出来たら持って来るよw レシピはどのくらいで完成する?」
「2日後かなぁ、3日あれば間違いないかな」
「じゃあ、5日後に領主様への報告を予約しとくよ」
(領主邸に行ったら騎士団と魔道師団の確認もするか)
作った[砂糖]を貰って一度自宅に戻る。
「さて、[プリン]を作りますかな」
料理長を呼んで、一緒に[プリン]を作り、レシピ作成をお願いしよう。
料理長は[砂糖]にも驚いていたが、翌日[プリン]を食べると暫く目を閉じて固まっていたよ。
作った[プリン]をメイドにも食べて貰い、味の感想を聞くと、全員が喜んでいたのでOKだね。
「何個作れば良いんだ?」
領主様一家、ミリー工房、神様、ギルド、教会…
「全員に配るのは無理だな、神様も何柱いるかわからんし、100個くらい作って、足りんかったらシェアして貰おう」
容器が足りないので、ガディ商会で買い足しをする。
流石に同じ容器100個は無かったので、色んな種類を購入。
「また、何か作られたのですかな?」
「鼻がいいですねw お久しぶりです。丁度良かった、聞きたい事があるんだけど」
「何でしょうか?」
「こういった容器は受注生産可能?」
「可能ですが、結構高くつきますな」
場所を変えて詳しい話しを聞く。
「これらの容器は〔クラフリ〕から仕入れています」
「クラフトが盛んな街だね」
「そうです、〔サーエンド〕からは遠く、仕入量も限定されますね。更に割れ易いので割高になるのですよ」
「材質は陶器のみ?」
「陶器の他、木・ガラス・金属・石と色んな種類がありますな」
「そうか、行ってみた方が早いかな」
ガディさんの目が"キラン"と星が見える程輝く。
「それでしたら、一緒に〔クラフリ〕に行きませんか、案内しますよ!」
「根っからの商人だねwww」
「確実な儲け話を逃したら、商人とは言えませんからなw」
「了解、6日後でどう?」
「判りました、こちらでも仕入しますので、数日滞在をお願いしますね」
「その間、工房見学は可能?」
「契約している工房がありますから可能ですよ」
「では、6日後に宜しく!コレはお礼」
[プリン]を1個差し出す。
「レ、レンさん、こ、コレはなんですか?」
「新しいお菓子だよ、領主様扱いだから、今は内緒」
「容器は[プリン]とやらに必要なのですかな?」
「まぁ、それだけじゃないケドね」
「一枚噛むことは出来ますかな」
「どうだろう、領主様には伝えとくよ」
「お願いします!お願いしますね!お願いされて下さい!」
目を輝かせるガディさんを振り切り、自宅へ戻り[プリン]を作る。
料理長から[プリン]を作る許可をお願いされたので、自宅限定として今は情報を漏らさない事を約束させる。
「勿論、メイドや執事も同様だよ」
「ありがとうございます。メイド達からの圧が凄くて…」
「www まだ[砂糖]の量産は難しいから程々にね」
「かしこまりました」
余分に[プリン]を作り冷蔵庫へ保管する。
(確かに圧が凄いねw)
「冷さなきゃいけないから、食べれるのは明日だよ」
「「「「「かしこまりました!」」」」」
厨房の向こうで一糸乱れぬ声がする。
「ねっ、凄いでしょ 圧がw」
「www 料理長頑張ってねw」
「[砂糖]の在庫が無くなったら怖いですねぇ」
「今は我慢して貰うしかないな」
執事長とメイド長に〔クラフリ〕行きを伝え、次いでに情報漏洩は、解雇になると脅しておいて貰う。
「それは厳しいですなぁw」と両名が笑っていたよ。




